三十四話 孝介の過去
真鳥兄弟とATOの契約が成立した後、龍助達はTPBに戻ってきていた。
契約したは良いが、まだ真鳥兄弟が安全とは言いきれないので、とりあえずTPBでしばらく保護することとなる
「しばらくは、TPBで暮らしてもらうから、それだけ分かっといて」
「はい、よろしくお願いします」
京と叶夜達の間に入って歩いている孝介がお礼を言う。
彼らの部屋はもう用意しているらしく、そこで兄弟一緒に寝泊まりしてもらうらしい。
「そういえば、孝介はどういう経緯で力者になったんだ?」
真鳥兄弟の隣を歩いている龍助がずっと気になっていた質問を口にする。
一瞬孝介は記憶を探った様子だったが、すぐに思い出したようで話し出す。
「俺は、交通事故に遭ったことがあるんですけど、その後から変な感覚に襲われるようになりました」
孝介は昔、路頭を迷っていた時に、空腹でふらついて車道へ出てしまい、運悪く車と接触事故に遭ったらしい。
目覚めた時には既にいつもとは違う違和感を感じるようになり、謎の体調不良になったりしていたとのこと。
「その後、どこか忘れましたが、組織に捕まって魔法を無理やり身につけさせられました」
捨てられ、路頭に迷い、交通事故に遭った挙句に組織で無理やり魔法を使えるように仕向けられた。
孝介の歴史を聞いた龍助は自分たちと似たようで違うような中途半端な気持ちになる。
「で? そこから盗みをするようになったんだね?」
「ちょ、ちょっと京さん!」
「はい、その通りです」
京の言い方に叶夜が注意しようとしたが、孝介が肯定した。
「駄目だと分かっていても、盗んだ時の快楽が抜けず、先輩の時も力が欲しくて盗もうとしてました」
「脅されただけではなく、自分の意思でも動いていたと?」
「はい、先輩達の力が手に入れば達成感は凄いですし、何より弟を守れましたから」
つらつらと並べられる孝介の弁明に龍助はかける言葉もなかった。
確かに自分の意思でも動いた部分はあったかもしれないが、それも結局弟のために行ったことだと龍助は感じている。
(まあ、それでも人のものを取るのは良くないよな……)
龍助はそんなことを考えていると、いつの間にかTPBの本部に到着した。
中へ入り、早速孝介たちは手続きのために春永の所へ行くことになっているので、ここで一度お別れだ。
「じゃあ俺たちも帰……」
「待て。龍助だけちょっと来てくれ」
龍助も帰ろうとしたが、京に連れられて一つの空き部屋に来るように言われてしまう。
穂春は叶夜と颯斗にそのまま送ってもらうことになり、龍助だけ京と共に移動した。
話があるとかなんとか言っていたが、この状況で話す内容は一つしかないだろうなと誰もが密かに予想出来る。
二人がやってきたのは一つの空き部屋、龍助達が以前授業で使った場所だ。
「龍助、あいつ、一ノ宮清はどんな感じだった?」
「どう、とは?」
「……元気そうだったか?」
「え? ま、まあ元気だったんじゃないですか。その後は分かりませんが……」
「……そうか」
予想通り、やはり清の話題だ。
昔の知り合いに会ったのだから、気になるのは無理もない。
龍助の回答に京は少し悲しげな表情をしていた。
このような顔は初めて見たのと同時に、あれだけ敵意剥き出しにしていた相手にそのような顔ができるのだなと龍助は驚く。
一体、京と清の間には何があったのか気になる龍助だが、場の雰囲気的に聞くことが出来ず、謎は迷宮入りへと至ってしまう。




