三十三話 真鳥兄弟とATO
前回から孝介が引き起こした事件、TBBの幹部である一ノ宮清の襲撃、と大変な日常を送っている龍助達は今現在、ATOの会議室にいる。
「龍助、顔は大丈夫か?」
「うん。穂春と千聖さんのおかげでだいぶ楽になった」
京に心配された龍助が顔の調子を確認しながら答える。
先ほど清に思いっきり膝蹴りを食らわされていたのだが、穂春の魔法と千聖の治癒のおかげでもう痛みはほとんどなくなっていた。
清によってさらわれていた龍助と穂春は千聖によって助けられ、後から来た京達に保護される形となった。
煙を対処したは良かったが、その後捕らえていたはずの清の姿がなくなっていたのだ。
おそらくTBBの人間が連れ戻したのだろうと予測される。
「しかし、千聖に気配を察知されないのはかなり厄介なやつがいるみたいだな」
「気配を消すのが僕と同等異常なんでしょうね」
千聖より気配を消すのが上手い力者がいるとなると、これからの捜索が困難に違いない。
事実気配を悟られるずに清を連れ去っている。
「まあその話は置いといて、今は彼らのことだ」
「そうですね。孝介くんと洋介くんの手続きですね」
そう言って京達は真鳥兄弟の方へと目を向ける。
終始そうだったが、清の話をしていた京の表情は今までにないくらい険しい表情をしていた。
(多分、あまり良い思い出はないんだろうな)
龍助がそんなことを思いながら、視線を京から真鳥兄弟へと移す。
彼らはまだまだ緊張している様子が体の震えで読み取れる。
真鳥兄弟に視線が集まる中、ATOの責任者であるいづみが会議室へと入ってきた。
「お待たせしました。こちらが契約書です」
「あ、ありがとうございます」
いづみに出された書類を孝介が読んでいく。
保証人はTPBのトップである春永となっている。
「でも、良いんですか? 俺、犯罪者なのに」
「それを償うために、ここで働くのですよ」
孝介の言葉を聞いた千聖が笑顔でそう言い、京も隣でうんうんと頷いている。
「それで、俺の仕事っていうのは?」
「まだ確定してませんが、予定しているのは力を持っている子を見つけ出していくことよ」
孝介の質問にいづみが答えてくれる。
聞けば、孝介は龍助の時のように、取りたい対象の情報を伝えれば、それを見つけ出すことが出来るらしい。
その魔法の名は「ヘルメス」。
主に調査など情報収集に使われる反面、何かを盗みとるという魔法でもある。
「すごい魔法を持ってるんだな」
「いや、僕は力が弱いので、使えるヘルメスは限られてるんです」
龍助が関心するが、孝介曰く力量が少ないがため、使える範囲も狭いとのこと。
それは京達も同じことを言っており、力者が使う魔法の規模などは自身が持っている力量に左右されるという。
「ちなみに、俺の力量はどれくらい?」
「力量は数値化されていないんだ。強いか強くない、または大きいと小さいというくらいだね」
力量の話に、自身がどれくらいなのか聞いてみるが、詳しくは京達にも分からないという。
だが、今まで戦ってきた敵から感じた力がその力者の力量だったのだということは分かった。
「さて、それで、君はこの仕事を引き受けてくれる?」
「……もちろんです」
「ちなみに洋介くんは、まだ中学生だから高校生になったら、うちの事務として働いてもらうわね」
「は、はい!」
いづみに言われた洋介はいい返事を返した。
これから二人がちゃんとまともに生きていける道を進み始めたと思うと、龍助はとても嬉しく感じた。




