【1572】宴
祝宴は想像以上に騒がしかった。
「今日の主役は草間兄弟で決まりじゃな!」
「いやぁ、策略といい、人望といい、そして何よりあの強さ!見ていても気持ちが良かった…これからの島津家を担う存在じゃあ!」
「いやぁ、それほどでも…」
「まぁ、そう言わずに、飲め飲め!」
無理やり酒を注がれ、一応未成年なので飲むふりだけしておいた。ここで評価を下げるのは面倒だ。だが、それとお構いなしにめちゃくちゃに飲んでいる人がいた…めっちゃたべるなーあにk…ちょっと待てよ、兄貴はリア充への嫉妬か、合戦の力みの疲れかわからないがすぐに寝てしまった。とすると考えられるのはただ一人…
「めっちゃうまい…ガツガツガツ…ゲホッゲホッ」
俺の彼女であった。聞いたところだと落武者に追いかけられたり、猪に追いかけられたりと大変だったそう。それに加えて2日3日何も口に入れていなかったらしい。にしてもすごい食べっぷりである。
「あの女、すごい勢いじゃな…」
酔っているはずの家臣たちもびっくりしすぎて冷める勢いであった。まぁ、それがかわいいんだが。
俺は酔い潰れた家臣を避け、同じく酔い潰れた幸を背負い、兄の寝ている自室へと向かった。
兄は珍しく自慢のいびきをかいていなかった。だいぶ疲れていたんだろう。
俺は床についた。二人の大切な人に囲まれながら…
-翌日-
昨日飲みすぎたせいか、みんな二日酔いの顔をしていた。今日は評定である。
昨日の合戦の功績を述べられる場である。それはこの戦いの大将であった義弘が発表する。
二日酔いといえども、この空気は合戦とはまた違う空気感であった。武将にとって褒賞は命であり、地位を表すものでもあるため、当然だろう。俺は一番最後列で名前が呼ばれるのを待った。
「草間一樹、そなたは第一線で、伊東家滅亡に貢献した。」
伊東家は島津家の本部隊が裏で動いて全ての城を落城させ、滅亡させた。
「それ故そなたには小林城一帯を与える。」
どよめきが起きた。無論、合戦に一度出ただけでどれほど功績が良かったとしても一国一城の主になるのは珍しいからである。
「草間智樹、そなたも弟と共に戦い、第一級の首を取った。そなたには臼杵郡一帯を与える」
さらにどよめきが起きる。臼杵郡は日向国北部の大部分であり、大友との境界でもある。そんな場所を任せる器が認められたと言うことだ。
「まぁ、それくらいじゃろ」
「さすがじゃ…」
と感嘆する声もあったが
「養子故の贔屓じゃろ」
「くっ、調子に乗るなよ」
と言う声まで聞こえてきた。まぁ、賛否両論になるのは仕方あるまい。
評定が終わってから大忙しだった。片付けをし、すぐに向かわなければならなかったからだ。
「ついに離れ離れだな」
「あぁ、お互い現代に戻るまでは絶対に死なないようにな」
「おう」
最後にグータッチをして一旦草間兄弟は解散となった。これからは1人で頑張っていかなければならない。責任を持って行動しなければ、
「何寂しそうにしてるの?私もいるじゃない!私に任せなさい!」
そうだ、これから俺と幸は夫婦として生きていく。お互いに支え合っていく。それが一番だ。
とにかく、3人にとって新しい日が始まろうとしていた。