【1572】家族会議
「一樹、起きろー。忠智様から呼び出しだぞ。」
「うーん、わかった。」
朝、昨日かなり歩いたせいか、夜は疲れてしまい、風呂にも入らず、すぐに寝てしまった。
行って見ると、忠智と忠堅、そして忠堅よりも若い少年が座っていた。
一樹と智樹は礼儀正しく、一礼をし、部屋に入った。そして、真っ先に少年が襖を閉める。兄が少年を怪しんでいると、
「大丈夫じゃ、こいつは我が息子の忠忠兄じゃ。」
と紹介されると、少年はすぐに
「忠兄でございます。これからよろしくお願い致す」
と丁重な声で自己紹介した。
そして、ゆっくりと川上家の当主は話し始めた。
「さて、これからのことについて話していこう。」
「「はっ」」
「とその前に、そなたらの名前を伺おう」
先に智樹が話し始める。
「私は草間智樹でございます。」
俺も続く
「その弟の一樹です。」
「うむ、話は忠智から聞いている。まさか未来人とは…なかなかのものじゃ。智樹と一樹よ。もしかしたら受け入れられないかもしれないが…そなたらは当家、川上家の養子になってもらう。」
「はっ承知しました…は?」
すぐに俺の気持ちを兄が代弁してくれた。
「なぜ養子に?」
「それを聞くなら殿に聞いてくれ。わしは知らん」
忠智は布巾で汗を拭った。
一方忠堅は嬉しそうにこっちを向いて
「私は義久様の案がいいと思いますよ、ねぇ一樹殿」
「ま、まぁ?」
「とにかく、一樹と智樹は私たちのことを家族と思ってくれればいいですよ」
「はい、ありがとうございます。」
忠智は後に続くように言った。
「そうじゃ、義久様から伝えておけと言われていたことがあるんじゃ。」
「と言いますと?」
「まず一つ目、未来人ということは口外しないこと。二つ目に戦い抜けば内城に来て義久様に面会に来ること、最後に、次の戦いでは絶対に勝利せよ、とのことじゃ」
「はい、川上家に養子に入れてもらった御恩、我ら兄弟一生忘れず死ぬまで島津家に忠義を尽くします。」
川上家が全員笑みを浮かべたところで今日は解散。30分後に家臣団との会議もあるのだが。とりあえず、俺たちは草間智樹から川上智樹、草間一樹から川上一樹になった。
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ピーンポーンピーンポーン
「はーい」
「山崎です」
「あ、ちょっと待ってね」
遅い、許さん、遅い、許さん。いつもは学年一可愛いと言われている幸でも鬼の形相であった。いや、彼氏の前ではたまにするか。しばらくして、彼氏の母が出てくると幸はすぐに笑顔に戻った。
「ごめんねー、幸ちゃん。一樹お腹壊しちゃったみたいで。トイレはいってるわ」
「はい、こちらこそ家まで押しかけてきてしまってすみません」
「いいのよ。あ、せっかくだからうちに上がって私特製の野菜ジュース飲んでいかない?」
「あ…は、はいわかりました」
失礼ではあるがとても飲める気にはなれなかった。無論、草間家の野菜ジュースは超がつくほど健康的かつ自然的であるからである。
山崎家と草間家は昔からの繋がりなのでよく飲むが、体にいい味といいうか、とにかく幸の口には合わなかった。
「大丈夫よ。今日はかなり甘めだから」
「はい、ありがとうございます」
それを聞いて、甘かった記憶がない。
息を吸って一気にゴクリと飲んだ。
甘い。甘い!めちゃくちゃ美味しい!
「どう?美味しい?」
「はい!とても美味しいです!」
「それはよかった。じゃあおやすみ」
「え?なんでです…か…」
その瞬間一気に眠気がきて、倒れてしまった。
一樹、どこにいるの?助けて…
「すまないわね、あなたにも行ってもらいましょう」
最後まで読んでいただきありがとうございました。
尚、史実については諸説あり。