【1572】加久藤城へ
「なるほど、そういうことでしたか。では、この合戦の結果もご存知で?」
「はい。結果的には勝つのですが、どちらも軍勢の8割ほど失ってしまう痛手を負います」
彼は神妙な面持ちで笑みを浮かべた。
「なるほど、では私たちは負けますね。」
俺は目が点になった。味方が負ける、と言う人はなかなかいない。現代でもそうだが。
「なぜわかるのですか?合戦が始まったわけでもないのに」
「ふふ、わからないですか?あなたのお兄さんは私たちの兵を50人倒しましたよね?となると残りの兵は250、300人から250人はかなり痛いです。あなたの推測では大軍が来るというのに」
確かに250人と3000人じゃさすがに歯が立たない。
「ですが、勝算はあります。」
「は?」
ないだろう。誰が考えてもない。確実に負ける。兄がいたら別だが。
「では、その勝算を教えていただきましょう。」
「はい、あなたの兄を呼ぶのです」
「えぇぇぇぇぇぇ!」
こいつは頭がおかしいのか、あ、もしかしてこの世界にもヤクが?もう死んだはずの兄が生き返るわけがない。
「ふふ、この反応を待っていました。さぁ城に着きましたよ。すみません。夜までかかってしまいましたね。ここからはご自分の目でお確かめください」
「はぁ、あ、ちなみにお名前は忠堅殿でよろしいですか?」
「はい、でも少し堅苦しいので、忠堅でいいですよ。あなたのお名前は?」
「私は草間一樹です。じゃあ、私も一樹でいいですよ」
「じゃあ一樹よろしく」
「こちらこそよろしく忠堅」
俺と忠堅は強く握手をした。
城門を抜けて、しばらく奥まで歩いた。
「こちらが、我が父です。」
忠堅は襖を開けた。その時、
「おぉ、久しぶりだなと言っても20時間ぶりぐらいか」
聞き覚えのある声にゴリラのような顔。
「兄ちゃん…」
俺は知らぬ間に涙を流し、兄に抱きついていた。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
尚、史実については諸説あり。