【⁇】拘束
目が覚めるとそこは病院…ではなく地面と剣とガン飛ばした兄がいた。
「オラァやんのか?」
「南蛮人共、我が島津軍の通行を妨げるとは、何事か!」
「え、えぇぇ!」
島津軍?状況把握が全くできない。これは時代劇か何か?でも日本刀は本物だし…もしかしてタイムリープした?
なんで?もしかしてお母さんの“アレ“か?
「何言っとんじゃオラァ?」
「どけ!さもなくば斬る!」
このままだと兄が死にそうなので間に入ろう。俺はとりあえず兄を無理やり土下座させて、
「この度は私共のご無礼申し訳ございませぬ。」
「ふん、わかってくれればいいのじゃ。」
なんとかわかってくれたらしい。兄以外は。
「は?この状況何?なんで俺は謝んなくちゃいけないんだよ!」
「ちょ、落ち着いて兄ちゃん。」
「落ち着いてられるかよ!オラァ!」
やばい。兄がここまで暴走したらもう誰も止められない。案の定足軽を10人ほど蹴散らしている。
その10人のうち二人が骨折、二人が酸欠、六人が死亡という内容である。
「あの大男、なかなかやりおる」
流石の兵らしき人たちも一旦引いている。
あの人たちが、現代のエキストラと信じる…あ、でもそれだと兄ちゃん殺人罪…やっぱ昔のままで!
「南蛮人め、皆の者ぉ殺せ!」
唐突にそんな声がかけられた。兄も相当疲弊していた。助けなければ。
「貴様は眠れ。」
「え?」
俺は後ろを振り返った瞬間、固い何かで頭を殴られ、意識を失った。
俺が意識を取り戻した時には城下町にいた。手を縛られ、台車に乗せられて運ばれていた。
兄は?意識を失って、何も覚えていない。周りを見渡したが、周りからは民衆の懺悔の声と哀れみの目しかなかった。思わず俺は運ばれていた兵に聞いた。
「兄は?兄はどこへ?」
「あ?死んだぞ」
そう、兄は死んだらしい。兄は50人を道連れにし、消えた。遺言もなく。俺はなぜか何にも思わなかったのだ。それは自分でもわからない。
もちろん、俺も捕えられて、国主島津義久の居城、内城まで連れて行かれた。
-内城にて-
「こいつは?」
「道の途中で無礼を行ったものです。もう一人いましたが暴れておりましたので、始末しました。」
「なるほど、そなた名は?」
この時義久が少し笑ったかのように見えた。
「私は草間と申します。」
「草間、か。」
「義久様。どうなさるおつもりで?」
「まぁ。いいだろう。許そう」
「ありがたき幸せ!」
家臣が慌てて言う
「殿!許してよろしかったのですか?反逆者の仲間ですぞ」
「言っても餓鬼じゃ何もできん」
小声で言っていたようだが、俺にはよく聞こえた。俺が痺れを切らしていると、義久は咳払いをして、
「その代わり、試練がある。」
「試練?はぁ、なんでしょうか」
まさかじゃぁ、まさかじゃないけども…
「戦いに加わって欲しいのじゃ」
えぇ、戦いを何も知らない14歳にそんなことさせるのぉ?
普通だったら家臣団は“それはさすがに…“などというかもしれないが、というか期待していたが、
「我らも賛成でございます」
満場一致だった。期待していた俺がバカだった。やっぱりこういう時の家臣の団結力すごいな、と感心してしまう。
「承知しました。ただ、一つお願いがあります」
「もし生き残れば、私を家臣としてお受けしてくれませんでしょうか」
「ほう、なぜ?」
「な、何を無礼な!」
家臣は何か慌てふためいた様子だったが、義久と俺は至って冷静だった。
「私は家も金もなく、兄だけが頼りでした。しかし、兄が殺された今、私になす術がなく、とても困っております。ですので私を家臣に加えて頂き存じたいです。」
「わかった。ただ、生きて帰ってきたら、だがな。」
「は、それは承知の上にございます。で、私はどの部隊へ?」
「加久藤城の川上忠智のところに行け。忠堅、こいつの縄をほどいて連れて行け。」
「は」
俺は小柄な男に縄を解いてもらい、またどこかへと連れて行かれた。その男は無口で、道中も何も喋らなかった。
俺もそのとき、いつの戦いの話か考えていた。加久藤城か…うーん、ってことは木崎原ね。うーん。え?木崎原って確か…
「どうされましたか?」
初めて俺の対して忠堅が話しかけた。そして、忠堅はなぜ俺が顔を青ざめているか、見当もついていなかった。
「だ、大丈夫です」
本当は大丈夫ではないが。だが、この男は察しが良かった。良かったというか、俺があからさまだったといいうか…
「どうやら何か大丈夫ではない何かを隠しているようですね。私に話せることであれば、お話しください」
「はい、実は…」
俺はここまでの経緯を話した。
最後まで読んでいただきありがとうございました。毎日0時投稿目指します。
尚、史実については諸説あり。