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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

【コミカライズ化】とある悪い令嬢の復讐

作者: 有機野菜

誤字報告ありがとうございます。

書いてる時は気をつけているつもりなのに、投稿した後でボロボロ出てくるのって一種のホラーだと思うんですよ。

可憐な男爵令嬢を虐めた悪い令嬢は、王子殿下に婚約破棄されてしまいました。そして自分より遥かに年上のお爺ちゃんと結婚するよう王子殿下に命じられたのです。私のことなのですけれど。



そんな私はとても充実した生活を送っておりました。



「お金があるって大事なことよね?」

「真理だね」


とある公爵家の娘として生まれた私には、自由になるお金がそれなりに有りましたわ。私はそのお金を元手に投資をして資産を増やすことに成功したのです。公爵家は関係ない、私個人の資産ということですわね。


私が嫁ぐことになった伯爵家は莫大な借金を抱えておりました。公爵家と縁続きになれば借金を肩代わりして貰えるかもしれないと期待していたのに、私はお父様に勘当されていまして。公爵家からはビタ一文も出さないなんて宣言されていましたわ。その時の伯爵様といったら言葉に表せないほど面白…痛ましいお姿でした。


そこで『私個人の資産で借金を肩代わりしてもいいですよ』と提案してあげましたの。その見返りとして『従者や愛人を連れてくるのを容認してください』と言いましたけど。


「資産を増やしておいて良かったわあ。それも貴方のおかげよ」

「俺は貴方が見出してくれなかったら上手くいってないよ」


私の愛しい人は、随分と前から私が支援していた商会の子。とても賢くて抜け目がなく、いつも私をやり込めようとする可愛らしい方ですの。そのいじらしい姿が好きだったので彼のパトロンとなりましたわ。きっと上手くやるという確信があったもの。


私の期待通り、彼はメキメキと頭角を現した。私が投資をして彼が増やす。その繰り返し。気がつけば私はこの国でも有数の資産家になりましたの。そのお金で伯爵家での自由を買ったのですわ。


「殿下の婚約者であった時は叶わぬ恋と思っておりましたのに。諦めずに稼いでおいて良かったわ」

「そういうことにしておこうかな」


私達はそう笑い合いながらキスを交わしました。ああ、とても幸せだわ!



私が嫁いだ相手は現伯爵ではなく、もう引退なさった前伯爵。彼の介護をするように殿下に命じられましたの。私は愛人連れですけれども、ちゃんと夫に尽くしておりますのよ。私の雇った子達がね。


貧民街で死にかけていた親子ならば薄給でも文句は言わないだろうと思ったけれど正解でしたわ。食べ物にすら困っていた彼らは、雨風のしのげる屋敷で毎日食事ができるだけでも喜んで介護の仕事をしてくれますもの。


夫も私のよこした彼らを気に入ってるようですわ。彼らは全員が切りつけられたような傷のせいで、元の仕事を追われてしまったというのに。物好きなことよね。


「そういえば夫から相談されましたわ。彼の個人資産、全てあの親子に相続させたいのですって」

「現伯爵には全くお金を残さないつもりなのかい?」

「一人娘が病で苦しんでいる時に、愛人と子を作った入婿に?」


彼は「あはは」と楽しそうに笑っていましたわ。この少し性格の悪いところも素敵よね。現伯爵と後妻とその娘が、借金で破滅すると知っていて笑っているのですもの。


私が返済してあげたことなど忘れて、新たに借金を作る彼ら。それでいいのよ。そのままでいいわ。そうじゃないと意味がないもの。借金におびえて逃げ出してくれなくては。


「早く君に子供ができるよう祈らないとね」

「当然それは伯爵の子供ですもの、大事に育てなくてはね?」



私は子供ができる楽しい想像を膨らませながら、今朝に届いた手紙を読む。とても素敵な報告がつづられていて思わず歌いだしてしまいそうだわ!


「いい報告?」

「私の大事な友人達から」


一人はとある公爵様から隣国の状態を。もう一人はとある元男爵令嬢から王城の様子を。私がそれを読み上げると、愛しい人は大声をあげて笑い出したわ。私もはしたなく笑ってしまいましたの。嬉しくて仕方ないわ!


「凄いな君の父上と兄上は!今は勘当されているから、ただの戦友だっけ?」

「ええ。幼少期から共に戦った仲ですの。頼りになる方ですわ」

「そして君に虐められたはずの男爵令嬢か」

「まあ、人聞きの悪い。殿下が早とちりしてしまっただけで、私達は良いお友達だわ」


全てはこの時のために私達は戦ってきた、大事な戦友ですもの。




私の母はとても美しくて優しい人だった。愛情深くて思いやりのある母を、父はなによりも大切にしていた。私と兄も母が大好きだった。


そんな母を手籠にしようとした王を許した日はない。かろうじて王のお手つきにはならなかった、なぜなら薬の量を間違えたせいで母は亡き者になってしまったのだから。王は母が突然に倒れたので介抱したと言っていたが、そんな言葉を鵜呑みにできるほど私達もバカではなかった。


「お父様、私は王子殿下の婚約者になろうと思います」

「急に何を言い出すんだ!?あの男が何をしたか知っているだろう!?」

「だからこそです。私はあの男が憎くてたまらないのです。私は内側から彼らを引きずり落とす、そのためなら悪魔にも魂を売ります。どうか私を許してくださいませ」


父と兄も一緒に地獄へ落ちてくれると約束してくれた。



私達の標的は王だけだった。殿下にはなんの咎もないと、彼の婚約者としての務めはきちんと果たすつもりだった。王だけを追い落として惨めな最期にすることが私達の目標だった。


それが変わったのは、あの可憐な男爵令嬢に出会った時のこと。彼女は私の前で地に額をこすりつけて訴えてきた。


「どうか助けてくださいませ!殿下が領民を傷つけているのです!」


彼女の領地は王都からさほど遠くないところにある長閑な場所だった。そこで民は細々と暮らしていた。そこに突然やってきた王子は彼らをいたぶって遊び始めたのだ。剣の試し切りといって男達を傷つけ、女達の服を裂いた。老人と子供を蹴飛ばして嘲笑い、彼らの畑を踏み荒らしたのだ。


私は王子殿下に「あの辺りは流行病があるそうですよ」と嘘を吹き込むことで彼を遠ざけさせた。だけど、それで男爵令嬢の腹の虫が治まるわけもない。私は彼女に協力することにした。



復讐のため私が投資を始めた頃、夫となる伯爵と出会った。既に隠居したはずの伯爵は父に頭を下げた。


「あの男達に復讐するため力を貸してくれませんか。娘は病気で亡くなったのではありません、殺されたのです。公爵夫人の命をも奪った薬で!」


それは母と仲の良い方だった。母は彼女の葬儀で誰よりも泣いていた、それぐらい大切な人だったのだと思う。あんなに母と仲の良かった方が、実は殺されていたなんて。


入婿の男が栽培していた植物は、この国で禁忌とされた違法薬物だった。男はそれを王に売り捌き、巡り巡って母の命をも奪ったのだ。違法薬物を扱う者共を全員貶めてやると私達は決意した。



母を亡き者にした王

民をいたぶる王子

薬をばらまいた伯爵家の入婿

私達は彼らに復讐すべく動きだしたのだ。




「王子の婚約者となることで王城に侵入し、王子の仕事を代わりに引き受けることで国の機密をかすめ取るなんてね。君の執念深さには恐れ入るよ」

「私が執念深いのではないわ!彼らが敵を作りすぎたのよ!王妃様もさぞお喜びになるでしょう!」


王妃様も可哀想な方ですわ。隣国の姫である彼女は、王に見初められて半ば強引にこの国に嫁いできましたの。なのに王妃様の産んだ子達ではなく、側妃が産んだ子を王太子にするなどと言われて。王妃様はどれだけ悔しかったことでしょう。


王妃様は私の計画を聞くと快く受け入れてくださった。今や隣国は着々とこの国を攻める準備をしていますの。だけど余計な血を流さないために、王城への直行便を用意したのですわ。


「城の物資に紛れ込ませて兵士を送るなんて、君も大胆だね」

「貴方の商会の協力があればこそよ」


今頃、新たな婚約者である可憐な男爵令嬢がねだるままに、あの王子は大量の調度品を発注したことでしょう。それを運び込む馬車や荷物に隣国の兵士が紛れ込むなんて知らないまま。


まんまと敵を招き入れた愚かな者たちはすぐ制圧されるでしょうね。騎士たちは王と王子を守れないようなスケジュールを組まされているもの。誰もあの二人を守ってはくれない。二人は薄暗い牢屋に閉じ込められて、薬を飲まされながら試し切りをされて侘びしく最期を迎えるのかもしれないわ。


可憐な男爵令嬢は捕らえられる前に、私の兄に匿われる予定ですけれど。


「王と王子は隣国に違法薬物を流した罪に問われて破滅。その薬物の出どころは解らない。本当にいいの?現伯爵を違法薬物を栽培した罪に問わなくて?」

「伯爵家を残すためには仕方ないのよ」


現伯爵を罪人として処罰した場合、連座でこの伯爵家そのものを無くすという動きになるかもしれないわ。それだけは駄目よ。入婿達だけを追い払わなくてはならないの。私達の関係ないところで借金を作って、首が回らなくなった奴らでないと駄目なのよ。


伯爵の血はもう残っていないけれど、それでいいと夫は笑っていた。思い出が詰まったこの屋敷が守られるなら充分だと。そのためには私の産んだ子を次期伯爵として認めると。そのタネの出どころが誰であったとしても。本当の目的は現伯爵が戻ってこられる場所を奪うことなのだけれど。


「君のおかげで俺達も復讐が完遂できそうだ」


そう言って笑う愛しの彼、王妃様の第二子。王位を継ぐつもりはないからと商会を立ち上げた彼だけれど、母と兄をないがしろにする彼らへの復讐のため私に近づいた彼。

私たちは全員が共犯だった。



「今だからこそ俺は君に言いたいことがあるのだけれど」


彼はそう言って私にキスをした。とても楽しそうな表情だった。


「復讐はしたかったけれど、俺は君が欲しくて協力していたんだよ。ただの恋人では簡単に縁が切れてしまうかもしれないけれど、共犯者ならば秘密を漏らさないよう見張らなければならないから。

互いに逃げられないよう見張り合う、それって普通の恋より情熱的だと思わない?」


とても賢くて抜け目がなく、いつも私をやり込めようとする可愛らしい方。そのいじらしい姿が好きなのだと解ってくださるでしょう?こんな悪い殿方、私のような悪い令嬢には丁度いい。

私は彼と愛を育み、幸せになることで復讐を完遂する。

このたび、こちらの話はコミカライズして頂きました。本当に有難うございます。

「悪役令嬢ですが、幸せになってみせますわ! アンソロジーコミック 11巻 (ZERO-SUMコミックス)」という本です。良かったらお手にとって頂ければ幸いです。

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[良い点] コミック判もこちらも楽しませて頂きました。 華麗な復讐ではありますが、そこに到る理由がそりゃ復讐するよな、というものですからね。 こちらでは触れるだけですが、コミックでは王と王子が情け無い…
[良い点] 読み進めるごとに、グイグイのめり込んでしまいます。いろんな人達の復讐心が、王家破滅へと繋がっていく様は読みごたえがありました。「お金があるって大事なことよね。」まさしく真理ですね。 [気に…
[良い点] おもしろかったです。 最初復習対象は王だけのつもりで子だからと行って王子を対象にするつもりはなかった、 と、 八つ当り復讐はしまいと考えていたため、 誤解や逆恨みや調査間違いでは無いん…
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