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コメディー

「褒美に姫(問題あり)をやろう」と言われた邪竜殺しの英雄が第3王女を娶る話

作者: 紀伊章

 

 謁見の間で、邪竜を退治してきた俺に国王は言った。


「褒美に姫をやろう」


 人権侵害だなと思ったが、今世でも平民身分の俺が、国王一家並びに重鎮貴族が居並ぶ中で気軽にもの申す訳にもいかない。それに、邪竜に蹂躙され、領主を亡くした故郷を治めることになっているので、出来れば姫本人か血縁者が領地経営を手伝ってくれるといいな。すでに跪いているが、さらに畏まる。

「有り難き幸せ」


「わが娘は美人ぞろいじゃ。選ばせてやろう」


 え、ここで選ぶの。

 恐る恐る顔を上げ、しかし素早く【鑑定】を行う。


 適齢期の王女様は4人。身分の順に並んでいらっしゃる。


 正妃腹の第4王女。

 まだ16歳だが、金髪碧眼のゴージャス系美少女。

 現在の宰相で最も力のある公爵の娘である正妃の長女、同腹の兄が王太子。後ろ盾としてはほぼ最強である。

 特筆すべき鑑定結果、性格:傲慢。

 ……まぁ、しょうがないよね。

 

 第1側妃腹の第1王女。

 19歳。金髪碧眼だが第4王女よりも全体に色味が淡く儚げな印象の清楚系美少女。

 母親は侯爵家の出身。

 称号:ビッチ(戦果756)

 ……ノーコメント。関わらないよ!


 第2側妃腹の第2王女。

 18歳。黒目黒髪、妖艶系の美少女。

 母親は伯爵家出身。

 固有スキル:傾城(スキル説明:美貌で嫁ぎ先を滅亡させることができる。パッシブスキル)

 ……っちょ、国王陛下?!おたくの娘さん、持ってちゃいけないスキルをお持ちですよ?! 

 鑑定スキルもなんだかポジティブに表現してるけれども!!パッシブだと自動で発動されちゃうでしょ!!


 妾腹の第3王女。

 17歳。この世界では庶民の色とされる茶髪茶目。モブ系だが顔立ちは整っている地味系美少女。

 母親は、子爵家庶出のメイド。母は病没。母の実家は母とは仲の悪かった叔父が継いでおり、後ろ盾としてはゼロ。

 性格:善良、固有スキル:領地経営の才能。


「第3王女殿下でお願いします!!!」


***


 その後、俺が必死で頼み込んだのもあって、なんと無事、第3王女ゲット!!


 多少、国王のアドリブだったっぽいけど、上の人達の目論見としては、第1王女を娶って欲しかったみたい。逆に第2王女や第4王女には婚約の内定があって、どちらかを選んでいたら、裏で消される未来もあったっぽい。俺、セーフ。第3王女は地味なんで選ばれると思っていなかったらしいけど、婚約の話もなかったのでいいよとのこと。


 向こうの気が変わらないうちに、アリア姫を連れて帰りますよ。


***


 突然、邪竜退治の英雄様に嫁ぐことになってしまいました。


 いえ、決して嫌なわけではありません。

 英雄様は、金髪碧眼のきらきらしい美丈夫。

 剣技だけでも、魔法の腕だけでも、王宮に仕えるもので、敵うものはいないでしょう。


 釣り合わないのはむしろ私の方です。

 王女とは名ばかりの後ろ盾のない私は、王宮で密かに【貧乏王女】と言われています。

 実際のところ、異母姉妹である正式な王女たちの侍女のようなことをして、生活に必要なものを分けてもらっておりました。

 今回、私も謁見の間に並ぶことになったのは、みすぼらしい格好で、異母姉妹の当て馬になるためだったと思っています。


 でも、英雄様は、いえ、クリス様は、是非私を娶りたいと言ってくださって、何度も頭を下げてくれました。


「荒れた故郷を立て直さなきゃいけないんだ。手伝ってくれるかい?」

 はい、クリス様、いえ、旦那様。力の及ぶ限り、アリアは貴方をお助けします。 


***


 いや~、五年前の俺は、本当にアタリを引いたよね。

 可愛い俺の奥さんのアリア様様。

 復興から始まった領地経営も順調。

 可愛い子供もいます。

 今は、奥さんと昼寝中。 

 その間に、執務を進めておきます。なるべく二人と過ごしたいからね。


 うん、何々?

 手紙が届いた?大臣から?

 第4王女と結婚して、今回、大臣職に就くことになったと。

 俺宛に、お礼の手紙?

 奥さんが姉妹で、一応親戚だから、社交辞令かな。

『(省略)おかげさまで、毎日、愛しい妻に踏んでもらったり、鞭打ってもらったりして、幸せな日々を送っています』

 ……そっと暖炉にくべた。


 何?まだ手紙あるの?違う?チラシ?

『王家の辺境領にて、第1王女殿下の施術院がオープン!!早くも話題沸騰!!今なら1割引!!』

 差し出してきた執事が物欲しそうな顔をしているので、懐に突っ込んだ。


 今度は新聞?

『隣国でレジスタンスの勝利!!元第2王女殿下が嫁いでから、増税に次ぐ増税で、民衆の反発を招いていた隣国で、ついに王家が滅亡!!」

 えー!!ちょっとちょっと!!

 え?何?令状?王家から?

『元第2王女殿下とその子供の救出命令』!?

「……なんで、一番重要なものを最後に出すの?」


 起きてきた奥さんに説明して、ひとっ走り行ってきます。


 転移魔法と探索魔法を駆使して、どうにか元第2王女殿下と、生まれたばかりの赤ちゃんの保護に成功。出産のために、隣国の王都から離れていたので無事で済んだみたい。そのまま、護衛騎士ごと、うちの国の王宮に転移します。


 なんと、元第2王女殿下、【傾城】スキルがなくなって、【良妻賢母】になってたよ。出産で変わったみたいだけど、もっと早かったら、隣国、滅ばなかったのにねぇ。

 と思ったら、隣国は奴隷制度が酷くて、もともと近隣諸国で同盟を組んでどうにかしようとしてたらしい。

 娘を利用するのやめなさいよ。

 ちょっと威圧したら、本人納得の上?身分違いの護衛騎士と結ばれるため?

 だとしても、隣国は民衆に被害が出てるんだから、償いなさいよ。

 今度は本気の威圧をして、奥さんとこ帰る。


***


「「「い、生きた心地がしなかった……」」」


***


「ただいま」

「お帰りなさい、あなた。羊皮紙は燃えにくいから、暖炉にくべないでね」

「すんませんでした!!」




読んでくださってありがとうございます。

もしビックリされた方いらっしゃったら、ごめんなさい。

少しでも楽しんでいただけたら幸いです。


投稿した後で、チラシをどちらの懐に入れたか分からないな、と気づきました。

お好きな方でお読みください。

作者的には「自己責任でね!」でしたが、「行かせねえよ!」もありです。

主人公は奥さんLOVEなので行きません。


ブクマやポイント、いいねして下さった方、ありがとうございます。

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