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君なら裏でも表になる  作者: ナツメ
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覗いてたでしょ

「おは~」


 門の前で出迎えてくれていたのは幼馴染の池田いけだ英二えいじだった。良太とは小学校からの付き合いで小中校と同じだ。

 そんな英二は良太が歩き出すと良太の横をゆっくりと歩いて登校する。これは小学生からのお馴染みの光景だった。


「なんか今日の良太機嫌良いか?良いことでもあったんか?あったんだろ?」

 肩をトンットンッと叩きながらニコニコで話す英二。

 

 こいつは相変わらずテンションたけぇな‥‥


「別に?朝は割と普通だったけどな。強いて言えば妹とバカみたいな言い合いしたぐらいだな」

「あー、亜優ちゃんと?亜優ちゃんと言い合いって何について言い合うんだ?」

「言い合いは言い合いだよ」

「おっとり系のあの子がそんな言い合い何てするのか?」

 こいつはまだまだ亜優の事サッパリわかってないな。

 不思議そうに指の上に顎を乗せ考える英二だったが亜優と会ったことがあるのは数少ない。

 英二も亜優も良太の様に執筆に追われたりネットに入り浸って外にあまり出ないタイプではなく、暇さえあればどこかへ遊びに行ってしまう。何で英二が家に来ても亜優は居ないという事ばかりだった。

 基本的に亜優と英二が合うタイミングなどは新年の初詣の際に家族で会うぐらいだった。


「亜優だって言うときは言うんだからな?」

「亜優ちゃんってそんなイメージないわ~」

 カバンを体の前でフランフラン振りながら歩く英二。


「まぁなんだ?反抗期って奴かもなアイツも」

「いやー、俺は亜優ちゃんを信じる!」

 自身高々に腕を上げる英二。周りに聞こえるような大きな声だったので周りの人たちが何かと良太たちへ視線を集めていた。

 その異様な空気を感じ取った良太は少し歩く速度を上げ英二から距離を離していった。

 異様な空気を読み取ることが出来ない英二は何故良太が早歩きをしているのか分からないまま良太の背中を追いかけた。


「なんだよ急に早く歩いてさ!」

 色々こなせる英二の欠点に良太は小さく「はぁ」とため息をついた。


「別に~。ただお前が大声出すから周りに注目されてるのが嫌だっただけだよ~」

「良待ってって~」



――――――

 


「おい良あれ見ろよあれ、太田おおたさんだぜ太田さん」

 二人で登校し学校の正門へかかった頃だった。門の周りには人で賑わっている。まるで有名人が町中に現れたような感じだろう。

 英二は必死になって背伸びなどをして円の中心にいる人物、太田おおたしずくを見ようとしていた。

 その様子を見た良太は呆れた様子で英二へ言った。

 

「たかが一人の生徒じゃねぇか。何をそんな有名人を見る感じで必死に見てるんだよ」

 全く興味を示さない良太。興味を示さないだけならまだしも、ただの生徒と太田雫をバカにした様な発言に英二は言い返した。


「あのな、太田さんは特別なんだよ。特別」

「特別って何がだよ」

 英二はクラスの女子からも告白されるような人気者であった。ただ一度も付き合わないと言うのが英二だった。しかしそんな英二でも目で追ってしまうような存在が居たというらしい。


「だって見てみろよ。あのお嬢様気質。お上品な香りがプンプン飛んでるぜ?」

「別にわざわざ人混みで見なくてもクラス一緒なんだから教室でもいいだろ?」

 太田雫は良太と英二と同じ2年4組だ。


「いやいやいや、それは違うぞ良」

 人差し指をピンと立て、左右に振る英二。


「俺はお前と違うんだよ」

「何が違うんだよ?お前の方が女子の高感度高いじゃん」

「席だよ席」

「席?」

「お前は良いよな。太田さんと隣の席で」

 クラスでの良太の席は一番端の窓際。隣が太田雫と言う恵まれた席に座っている。

 良太からしたら太田雫の隣などはどうでも良く普段は隣と言っても全く話さない。


「まぁお前は太田の事堪能しとけ。俺は先に上がっとくから」

 良太は英二の事は放っておいて教室へと上がっていった。


***


 教室へ入り席へ座る良太。

 周りはいくつかのグループなどで別れていて皆が皆群れを作って話し合っている。

 その群れの中に入らない、いや入れない良太は一人で外の校庭をジッと覗く。

 

 「ん?」

 校庭を暇そうに見つめる良太の目に映ったのは不思議な女の子だった。

 周りが二人で話していたり大人数で話しながら登校していたり部活動の服を着ている生徒たちが大勢いる中で周りをキョロキョロとしている黒髪の女の子だった。

 

 なんであんなキョロキョロしてるんだアイツ?

 何かを盗んで居るような、誰かに追いかけられていたりしているかのような。明らかに登校中にするしぐさではない。

 

「おーい良くーん?」

 後ろで誰かの声がした。

 良太が後ろを振り返るとニッコニコの英二が居た。


「何ニヤついてんだよ?何か良いことでもあったのか?」

「まぁな~」

 英二の顔はトロトロのモッツァレラチーズのような風に溶けていた。

 そんな英二に良太は一発足に蹴りを入れる。


「って!何すんだよ急に!」

「お前が溶けそうだったから直しといた」

「溶けねぇよ!」

「案外溶けそうだったけど?」

「人間は溶けません」


「‥‥あの」

 良太と英二が二人で言い合っているところに後ろから声を掛けた人物。

 それは良太の隣の席の太田雫だった。

 少し困っている様子に英二は急いで横へ逸れる。


「あ!あ‥‥ごめん!ごめん。邪魔だったな!」

 太田の前だと調子狂うよなコイツ‥‥

 

 英二の焦り様を見ていた太田はクスっと笑みを浮かべた。

「池田君ってホント面白いよね」

「‥‥え?」


 太田が言った言葉を聞いて急に静止する英二。

「あ、ほら池田君。授業もうすぐで始まるよ?」


 太田に言われた英二は急いで自分の席へ戻っていった。

 ほんとに忙しいやつだな‥‥

 英二が良太の席から離れ授業が始まった。



―――――――



「‥‥さ、行くか」

 長い長い午前中の授業が終わって昼休み。

 良太はいつもの定位置へ行くためにすぐさま教室を後にする。


***

 

「うし、始めるかぁ」

 良太が訪れたのは校舎の屋上にある塔屋とうやの上だった。

 良太はここでいつもお昼を食べながら小説について考える。

 学校の屋上は柵以外整備されておらずなかなか汚いため生徒が全くもって上がってこない。そのような好都合な場所を見つけた良太はもし来たとしても大丈夫なように塔屋の上で過ごしている。



―ガッチャン


 良太が来て間もなく直ぐに誰かが屋上へ来た。

 ん?屋上に来るなんて物好きな奴だな‥‥

 人が来るのが珍しかったので良太はある程度バレないように上から覗く。


「え?」


 思わず良太が小さな声を漏らしてしまった。良太が上から見えた人物はまさかの太田雫だったのだ。

 

「‥‥何してんだ太田の奴。こんなところで‥‥」


 お弁当と少し大き目なタブレットだろうか?何か機械を持っている太田は入口の真裏側。つまり良太が居る塔屋の壁に隠れるようにして座った。

 そのような太田に良太は更に何をするのか気になってしまい上からタブレットを覗いた。


「あー、終わらないって~」


 太田が何か頭を抱えて唸っている。唸りながら絵を見ていた。


「あれ‥‥あの絵って」


 その太田のタブレットに写っていたのは今日良太が朝に見てきたメジロンの絵だった。


「とりあえず投稿できたのに~。ミスっちゃったなぁ~」


 屋上の裏で一人唸っているお嬢様。良太はもっとよく声を聴きたいが為に塔屋から前のめりになって覗いていた。

 

―その時だった。


 彼女が持っていたタブレットの反射で上から前のめりの良太が映ってしまっていた。そのことに気づいた頃にはもう遅く、太田が良太の存在に気付いた。


「だ、誰!?そこに居るの!」

 やっべ!

 咄嗟に体を隠して身を潜める良太。しかし太田からすると明らかに上から見下ろしていた人物が塔屋の上に居ることは確かだ。

 塔屋から降りる場所は一か所しかなくそこには太田が居る。そのことに観念した良太は素直に返事をすることにした。


「‥‥俺だ。磯崎良太。知ってるだろ太田」

「磯崎君!?」

 太田は必死にタブレットの画面を隠しながら梯子から降りてきた良太に焦った様子で質問をする。


「‥‥」

 耳を真っ赤に染めジッと良太を見つめる太田。


「ねぇ磯崎君、見たの?」

「え、えっと‥‥」

 普段のおっとりとしたお嬢様とは真逆の様子の太田に良太は驚いていた。


「タブレット。上から覗いてたでしょ」

「‥‥はい。覗いてました」

 太田の代わり栄えに驚いていた良太は素直に応じることしかできなかった。

 

「‥‥」

 タブレットを自分の胸にギュッと抱きしめている太田。耳が赤くなっていて良太は不味いことをしたと思いとっさに声を掛けてしまった。


「その絵‥‥メジロンさんの絵だよね?凄いよねその人の絵!俺今日も朝にさっきの絵見てきたんだよ」

「‥‥そうよ」

 良太が声を掛けると太田はゆっくりとタブレットの画面を良太へ見せた。


「私がそのメジロン‥‥なんだもん」

「‥‥え?」

 良太は太田が言った言葉を聞いた自分の耳を疑った。

 太田がメジロンさん?え?‥‥え?

 いつも気品が高く、お嬢様で自分とは逆の人間だと思っていた良太だったがまさかの同じネット民だと知ってそのギャップに戸惑っていた。しかし太田が見せているタブレットの画面では絵描きソフトで今日メジロンさんが朝に投稿していた絵だった。

 何も言わなくなった良太を見て恥ずかしそうに顔を赤めながら言った太田はそのまま即座にタブレットを消してしまった。

 

「ねぇ磯崎君?」

「‥‥」

 明らかに怒っている。先ほどは恥ずかしさを出してしまっていたが少し落ち着いた太田は良太へ怒りをあらわにしていた。


「太田すまん!つい出来心で‥‥なんでこんなとこに来たんだろって‥‥」

 必死になって太田に弁解する良太。しかし太田はその様子を見ても変わることはなかった。


「磯崎君‥‥今日の放課後用事は?」

 太田の目が死んでいた。

 いつもとは声のトーンが違い低く、その様子に恐怖さえ覚えた良太は急いで答えた。


「何もない!何も‥‥」

「それじゃあね磯崎君にお願いがあるの」

「はい!なんでも申し付けください!」

 恐怖に支配された良太は考えることをやめ今は太田に従うべきと心の中で決めていた。


「今日、私の家に来て」

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