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トリプタン戦役  作者: 国東
1/1

Chapter1-1


古の時代、鉄と魔道がそこにはあった。

そんな時代、東の大国であるトリプタン教国は国教であるトリプタン教を周辺国に布教していた。

しかしながら、実質的には改宗を強制化する侵略であった。

強い信仰心で結束された軍は恐るべき速度で周辺国家を飲み込み、地図を塗り替えていった。

5度目の布教の際には、すでに争いは起こらず喜んで改宗を行い、属国となる国家しかなかった。

しかし、最大の目的はまた別にあると噂されていた。


Chapter 1-1


「汝、その力を何のためにふるう?」

神官が訪ねる。

「教皇が望む秩序のために。」

私は定型化された解答で答える。トリプタン教国の士官学校の卒業に際してこの答え以外を言ったらどうなるか、昼間から酒を飲んでいる人間でもどうなるかを言えるだろう。

神官は続ける

「汝、この槍をもって信じるものを示せ。」

合図と共に下級神官が槍を差し出す。

私は跪き槍を受け取る。槍自体は特別なものではないが、この式典用の彩飾が施されている。

「汝の働きに期待する。騎士メルセデス・イェネリックよ」

「この槍に誓い必ずや」

私は立ち上がり、槍を天にかざした。


「お疲れ様、メルセデス」

声をかけてきたのは士官学校で鎬を削りあった仲の浅黒い肌青年だ。

「本来なら君があの式典の主役であるべきだった...すまないプロトン」

この国は多くの属国を従えている都合、さまざまな人種が生活しているが、宗主国に住む青の民と呼ばれる人種以外の差別が根強く残っている。プロトンは北の属国出身であったため成績最優秀だったが次点の私が式典の主役となったと言うことだ。

「俺には堅苦しいのは似合わないしな、逆に出てくれて助かったよ」

「しかし、指揮官まで君を差し置いて私になると言うのは...」

「上は部隊の指揮官は青の民でないとしめしがつかないと思ってるんだろうが、君にはその才能が十分にあるよ、俺は君の指揮であれば安心して戦えるよ」

プロトンは心からそう思ってるに違いない。そういう人物であることはこの4年間で十分に知っている。

「君の期待を裏切らないように頑張らねばな」

「頼むよ指揮官殿、早速この後も呼ばれてるんだろ?」

「ああ、行ってくる我々への指令が早速でるらしいからな」


「メルセデス・イェネリック参上しました」

衛兵に告げると部屋の中に通される。部屋の中には見慣れた人物である騎士団長と見知らぬ人物がもう一人いる。騎士団長が立っているところを見るにもう一人の方が偉いのであろう。

「よくきた、メルセデスよ。この方は...」

騎士団長が言いかけたのを制する低い声

「いい、自分で名乗る。私はカークランド・ドミニオンという。教皇の爪の部隊長をしている」

教皇の爪...噂に聞く教皇直轄の部隊、遠征の最中も指揮系統に入らず独自行動をしていると聞く。部隊長と名乗ったが、部隊長ですら正規の騎士団の団長より力があるということか。

「メルセデス、君には騎士団の指揮下を離れカークランド様の指揮下に入ること」

「拝命いたします」

そう答える以外にない。

「では私は退室いたします。カークランド様よろしくお願いします」

騎士団長はそう言って部屋を後にした。これ以上の情報を知ってはいけないのであろう。

「カークランド様、質問をよろしいでしょうか?」

「許そう、気になることは聞け。ただし知らなくていいことには答えない」

「なぜ、新兵で構成されている私の部隊をが選ばれたのでしょうか?」

「君のお父上とは面識があってね、というのは後付けであって本当はどの部隊でも構わなくてね。少しばかり変わった任務に当たってもらうため新しい視点の君たちが選ばれたというわけさ」

「...わかりました」

「お父上との関係は聞かないのか?」

「“知らなくていいこと”ですので」

その答えを聞いてカークランドは嬉しそうな顔をした。

「さてメルセデス、質問はもうないな?君たちへの指令を伝える」

本題だ...爪は遠征中に単独行動で何かをしている。ここまでは兵士であれば知っている。その何か、が伝えられるのであろう。

「君たちには極東への第6回の布教へ同行してもらい、指定地点の探索を命ずる」

第6回の布教は極東?教国の東には対して利のないとされる半島とその先には弧状列島しかないはずでは...第6回布教という大規模作戦の目標としては小すぎる気もするが...

「どうしたメルセデス?何か追加の情報が必要か?」

「発言させていただきます。探索の目的はなんでしょうか?」

「遺物の回収だ。お前も聞いたことがあるだろう、今の時代より遥か昔人間と悪鬼が戦い、神トリプタンの助力を得て勝利した。」

「はい、この国では誰もが知る建国神話です」

「その助力、神の遺物を探索するために、我々は遠征を行なっている」

「布教のためではなかったというのですか?」

「そうだ、8年前の第5回の際にも我々教皇の爪は遺物の回収に成功している。このことを知るのはごく一部のものだがな」

遺物の回収が主な目的であり、布教はついでであった...自分が知っている歴史とは大きく異なる事実に驚きが隠せなかった。

「この件に関してお前の副官や参謀には伝えても良い、あとこちらからお前の指揮下に1人戦力増強の為に人員を授ける、今日中にお前の元を訪れるように伝えてある」

不必要な人員には伝えるなということか、確かに宗教国家として軍をまとめてる関係、士気に関わるか...。追加の人員配置は有難いがおそらく監視も兼ねた配置だろう。

「こちらからは以上だ。出発日は約十日後詳しい日時は追って連絡する」

「拝命いたしました。」


部屋を出た後、私はこの国が私が知っている国ではないような気がしてしまった。不安を抱きながらこの件に関し部隊内にどう連絡するか考えながら帰路に着いた。

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