表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
人形の夢 ~幼馴染みから託された人形と、部活の後輩が入れ替わってるんだけど?~  作者: 暁明音


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

46/69

46 不意打ち

 難波駅の近くにある大型書店に、春平はいた。

 彼が、本棚を見上げる夏美を見つけて、彼女の(そば)へと近寄った。

 彼女はすでに何かの本を見ていたらしく、閉じられた本を手に持っている。


「なんかあったか?」

「シュンちゃんは何見てたの?」


 夏美が本棚から視線を移しつつ言った。


「マンガ」

「たまには活字でも読んだら?」

「レポートで嫌ってほど見てるわ。そもそもお前、最初は週刊誌とか読んでたやんか」


「だって、どこに何が書いてあるかなんて知らないんだもん」

「ほな、読んでみてどうやった? 面白(おもろ)かったか?」

「こっちと、どっこいどっこいだった」


 そう言って、夏美が持っていた本を棚へ戻す。

 春平が自然と、夏美の戻した本の背表紙へ目を向けていた。


「道徳の系譜…… こんなモン、読んで面白(おもろ)いか?」

「人間は何も欲しなくなるよりは…… ()()()何も欲しなくなるよりは、いっそのこと()()を欲する……!」


 夏美がわざとらしく誇張しながら、演劇風に言うから、


「西洋は何かにつけて大層やなぁ」と、春平が苦笑って言った。

「それになんか、暴露本って感じだよね。具体的にどうすべきか何も書いてないし」


「何か案を書いても暴露返しされるさけ、書く気ぃ無いんとちゃうか? ――それより、もうええやろ? そろそろ行かんか?」

「そうね、小難しい本も見飽きちゃったし」


 夏美が本棚を見上げながら答えた。



 ――――――――――――



 二人が書店から出てくる。


「ねぇ、あれ何?」


 夏美が、目の前にある建物を指差していた。


「あれはお笑いを見るところ、かな?」

「お笑いって?」

「まぁ、なんというか…… 人を笑わせる仕事してる人たちやな」


「フ~ン。じゃあ、(となり)にある小屋っぽい場所は何?」

「小屋?」

「人が並んでるでしょ?」

「ああ、たこ焼き売ってるトコやね」

「タコヤキって?」


「秋恵の記憶、引っ張りだしたら分かるやろ?」

(ひき)(だし)じゃないんだから……」

「――食べ物屋さんやで、要するに」

「え? 食べるところなの?」

「食べたいんか?」


 夏美が目を輝かせていた。

 春平自身も食べたいと思っていたらしく、「まぁ、ええわ」と素直に言った。


小腹(こばら)すいたし、行こか」

「やったね!」


 夏美が指を鳴らした。



 

 二人がたこ焼きを買って、店の中へ移動し、あいている席に向かいあう形で座った。


「熱そうね」と、湯気を眺める夏美。

「気ぃ付けや? 息吹きながら食べるんやで」

「え? 何? どうやるの?」


 春平がたこ焼きを口に運び、ハフハフと食べ始める。

 夏美は春平を見ながら、たこ焼きをかじった。


「熱ッ!」

「気ぃ付けって言うたやん……」

「こ、こんなに熱いなんて思わなかったもん……! よく平気だね、シュンちゃん」


「まぁ、慣れてるさけな」と、もう一口たべた。

「シュンちゃん?」


 (となり)の席に座ろうとしている女性が言った。


「シュンちゃんやん! 久しぶりやね!」


 ――マユだった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ