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人形の夢  作者: 暁明音


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21 廃墟の島と捜索と その1

 約二〇分後、友ヶ島の桟橋(さんばし)がある場所──()()(うら)に到着した。


 高速船から続々と人々が降りていく。春平は列の中で周囲を見渡していた。

 桟橋の向こうは開けていて、桟橋の手前で人々がたむろしていた。格好から釣り人だと分かる。他にも調理機材なんかを持ちこんでいる人たちがいた。


 『国立公園』という(ふだ)があるから、こんな汚い場所が国立公園なのかと驚きつつ、広場の中央へと向かった。

 すぐ近くに記念碑のように備え付けられた大砲(たいほう)の弾が見えたから、その前まで近寄ってみる。


 砲弾の(となり)に立っている石碑には『明治三二年』とあり、他の側面には『陸軍省』と書いてあった。そこからすぐ近くの段差の上には案内板らしきものが立っていて、遠方にはトーテムポールなどの、なぜ設置してあるのか分からない妙な物が置いてあった。


 ──なるほど。


 友ヶ島(ともがしま)要塞とは言うけれど、別におどろおどろしいところ、というわけでは無く、田舎(いなか)によくある『由緒(ゆいしょ)正しき何か』を前面に押しだした観光地、といったところなのだろう。

 つまり無人島とは言っても、四六時中、無人というわけでは無い。島で生活する人間がいない、というだけなのだ。


「尋ねた方が早いかなぁ……」


 ポケットから着信音が鳴った。


「はい?」

『ああ春平君、僕や。今どんな状態なん?』

「無人島とは思えやんくらいの充実っぷりですよ。自販機までありますし、電話もつながります」

『もう着いてるんか?』

「ついさっきです」


『こっちは一一時半の船に乗るわ。春平君が今着いたってことは、大体二〇分前後で着くってことやな』

「結構、人が多い島なんですね」

『夏場やさけな。それより今、パンフレット開けるか?』

「ええ」


 広げたパンフレットには地図が載っていた。


「あれ? これ逆やんか……」


 桟橋と地図の方角関係が逆になっていたから、春平は面倒くさそうな顔でパンフレットをひっくり返して、再び眺めはじめた。


『大丈夫か?』

「あ、はい。続けてください」

『春平君は今、野奈浦(のなうら)っちゅう場所におるんよな?』

「そうです。トーテンポールとかクジャクが歩いてたりとか、よう分からん変なのがいっぱいあります」

『地図には左と右、それぞれに行ける道があるんやけど、他にも道あるんかな?』


 春平が周囲を見渡しつつ、「いえ、無いと思います。ちょっと向こうの方に廃虚っぽい建物が見えるくらいですかね……」


『とりあえず、廃虚以外の場所を捜そら。幸い人も多いみたいやから、簡単に入ったりは出来んやろうし』

「そうですかね? 入れそうな場所みつければ、(すき)ついて入りそうですけど、あいつ……」

『そうであったとしても、危ないさけ合流したときに捜そら。それよりも、春平君は右の道と左の道、どっち行くの?』

「え~っと……」


 パッと見た感じ、左の道は山登りが多そうだったから、


「右の海岸沿いを捜してみます」と答える。

『ほな、僕は左の道を行くわ。小展望台の方向は距離ありすぎるさけ、お互い一三番のトコ、目指して歩こか』

「一三番、一三番…… あっ、ここですね?」


『三角形の記号があるやろ? そこ、多分この島で一番たかい場所や。そこに航空アンテナあると思うから、そこの前で落ち合おら』

「分かりました。この、三角形の記号の場所ですね」

『ほな、右側は頼んどか』


 了解した春平が、通話を切って携帯端末をポケットへ突っ込んだ。

 そうして改めて地図を見下ろして、苦々しい表情を浮かべていた。


 三角の記号の場所が合流地点なら、左の道は急な坂道を歩くが、距離は短い。一方、右の道は海岸沿いだが、左の道の倍は距離がありそうだった。しかも、色々と建物か廃墟がありそうでもあった。


「まぁええか。観光と思って回ろ……」


 決意を固めたというよりも、むしろ諦めたというべき心境で(つぶや)いた春平は、観光案内センターと呼ばれる建物の脇から伸びている砂利(じゃり)道を歩いた。




 青空の下、デコボコな野道をしばらく歩くと、木造のペンションらしき建物や廃虚群が見えてきた。


 ペンションらしき建物はまだまだ現役の様子だったが、他の建物は廃虚と化している。

 きっと、海水浴場の成れの果てだろうと考えつつ、この廃虚に秋恵が入りこんでいないかと考えた。


 長考していると、(にぎ)やかな声が聞こえてくる。

 数人の観光客が話しながら歩いていた。

 全員、長袖(そで)に長ズボンだから、山登りの人たちだと思ったが、パンフレットにある島の全景写真を見るに、山の標高は決して高くない。


 そう考えると、(はい)(きよ)が目当ての観光客かもしれない。世の中には、そんな物好きが割合いるものだ……

 こう思った()(たん)、春平の脳裏に一つの思い付きが浮かんだ。


「あの、すみません」


 観光客が足を止めた。


「急に申し訳ありません。ちょっとお()きしたいことが……」

「なんです?」

「知人とハグれてしもたんです。この子なんですけど、見てませんかね?」


 春平が携帯端末の画面を見せた。


「う~ん」と、首をかしげる観光客。


 やはり、そうそう見つかるわけが無い。春平は後悔し始めた。


「あっ」(となり)の男性が言った。「見たわ、その子」

「えっ……!」

「確か、灯台のところにおった気ぃします」

「と、灯台ですか?」

「ええ。この道を真っすぐ行ってから、左に折れた場所にありますよ。(かん)(ばん)、見ていけば迷わんと思います」


「ホンマですか! おおきに、ありがとうございます!」


 春平は何度もお辞儀し、心持ち早歩きで土道(つちみち)を進んでいった。

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