98 南部災害復興軍祝福隊①
お楽しみいただければ幸いです。
よろしくお願いします。
おはようございます。いつもより早く起こされました、プリンセスヴァイオレットでございます。
とうとう来てしまった、旅立ちの日。
お父様、お母様、アーサー、香澄様、ダスティン、コーデリア先生が見送りに来てくれた。
淑女教育の成果は……ぼちぼちと言ったところ。正直言えば、合格には至らなかった。というか、アーテルと並ぶと悪目立ちするの。余計私の不恰好さが際立つのさ。
先生にはよく頑張った方と言われたけど、慰めになりません。ちょっとは王女に忖度してよ!アーテル!
というわけで、既にメリディエスの領都、ベガに来ております。現在、ベガの領主館、つまりスカーレットのおうちにいるのですが、緊急事態発生で初っ端から予定を押しております。
「びんちゃん!どうしてついてったんだ!」
通信室の水鏡から響くお父様の声。先程感動の別れを済ませたばかりのお父様でございます。
「今すぐ戻ってこい!」
「ぴぃっ!」
水鏡に向かってそっぽを向く迦陵頻伽。反抗期ですか?
「陛下、こちらには転移の余力がありません。数日お時間を……。」
メリディエス公イヴ伯母様がお父様を宥めている。
「ぴっ!ぴっ!」
「カルラ……。」
お分かりになりまして?そうなんです。ついて来ちゃったんです、雛。
お見送りに雛たちとパル、アルテも来ていたんだけど、転移陣が起動するとカルラが私がいなくなることを理解したのかぴいぴい鳴き出す→パルとアルテ、それを察知する→アルテ、足元のカルラを咥えて放り投げるとパルが口でキャッチ→パル、カルラを咥えて転移陣へ乱入、オースティン伯父様を体当たりして追い出す→迦陵頻伽、何故かパルの尻尾を咥えてくっついてきて一緒に転移←今ココ。
りんごといちごはアーサーが抱っこしてたから大丈夫だったけど……。フェリクス伯父様が今被災地に行っていて不在、私たちは魔力温存の為使えず、すぐに転移のための魔力を貯められなくて、とりあえず連れて来たわけですが。
いや、このやりとり、ターミナルの水鏡でもやったんだけどね。お父様は執務室にすぐ戻らなくちゃいけなくて、一回通信切ったのよ。んで、また連絡が来たワケです。
あ、オースティン伯父様は速攻で追いついて来たよ。お見送りメンバーですぐに魔力を補充したらしい。わあお。
本当なら、会議の時間なんだけど……。今水鏡を移動してきて、会議室でおみやげに持ってきた私たちの作ったみかんをみんなでムシャムシャしてます。雛たちもご機嫌で食べてるよ。びんちゃん、もうお父様なんてガン無視だよ。
スカーレットも親子感動の再会もそこそこになってしまった。イヴ伯母様、お父様を説得するの大変そう。
「パル、なんでいっしょにきたの?」
「にゃん!」
「なんて言ったの?」
「わかんない。」
いや、そんな顔されても!わかんないよ!
「カルラはともかく、びんがはなぜついてきたのかしら?」
オリヴィアが迦陵頻伽のほほを撫でながら不思議そうな顔をして言った。
「なんでだろう、ノリ?」
三人とも、あー、ありそう、という表情になった。執務室での迦陵頻伽はさながら女王様で、しかもいつも率先していたずらをする。楽しいことが大好きな女の子。
アルテの言うことは聞くんだけどね。お父様は確実に下に見られている。まあ、しょっちゅうくっついてるから好きは好きなんだと思うよ、お父様のこと。
あ、話終わったみたい。
「とりあえず、鳳凰鳥たちは南部にいる間は貴女たちと行動してもらうわ。戻ってくるまでに転移陣に魔力を入れておくから。」
「ごめいわくおかけしてもうしわけありません。」
「いいのよ。この子たちが鳳凰鳥なのね。見事な赤。模様も小さいけれど、ちゃんと雛の頃からあるのね。」
「おばねはせいちょうすればのびてくるとおもいますわ。オスだけでしょうけど。」
「伝説も、絵に描かれているのもオスだと言われているから、メスの鳳凰鳥なんて初めてだわ。でも、とてもかわいい。」
「メリディエスこうもせいじょのちからをこのこたちにわけていただけますか?」
お近づきのしるしにね!
「まあ、わたくしのことはイヴとお呼びになって。ふふ、本当に綺麗ね。わたくしの魔力はおいしいかしら?」
びんちゃんとカルラはツンツンとイヴ伯母様の手のひらをつついて喜んでる。
「よかったわね、カルラ、びんちゃん。」
「ぴっ!」
「ぴぴっ!」
「恐れ入ります、公爵。そろそろよろしいでしょうか?」
「あら、ごめんなさい。会議を始めましょうか。」
「改めまして、南部災害復興軍祝福隊の皆様、メリディエスまでお越し頂き有難う御座います。私はメリディエス公爵の補佐を務めておりますハーマン・アルタイルと申します。スカーレットお嬢様も、無事にお帰りになられ安心致しました。お配りした資料は、復興作業の進捗で御座います。家屋の撤去は済んでおりまして、現在は農地の片付けと整備を行なっております。承認されました河川工事にあたり、国から派遣された工部の者が設計に沿っての測量を行なっております。」
色以外の苗字の人、初めてだな。王都に住む貴族は、王家のアウルムは金、ルーフスは赤と、まあ、色の英語の元になったような言葉が苗字になっている。
地方の領は星の名前がついているみたい。東が春、南が夏の星、西が秋の星、北に限っては冬の星が爵位になっている。セプテントリオとかね。
地方領主の一族は中央と違って領地の名前がそのまま苗字になってるらしい。差別化されてるのかな?
それに、設計図ね。見た見た。ぶっちゃけその辺の計算は全然分かんないけど、前みたいな暴れ川よりはマシだと思う。甲斐の虎には近付けたはず!
「皆様には瓦礫の撤去が済み、再び農地として使用する部分の祝福をお願い致します。農地は現状、水が乾いておりませんが、祝福ですぐに使えるようになると伺っております。お間違いないですか?」
「えっ、きいてません。」
「いつも枯れた土地にしか祝福しませんわ。」
「どうしましょう、ほんとうにできるかしら。」
「まりょくでみずをじょうはつさせる?」
「それだ!じょうはつさせるか、あとむえいしょうのぐけんかとおなじほうほうでつちからみずをあつめる!しゅくふくはそのあと!」
「集めた水はどうするの?」
「かわにもどすのがてっとりばやいかな。さすがにすいいはさがってるんだろうし。あとはせいかつようすいにしてもらうくらい?」
「騎士のための生活用水に致します。残りは川に流して頂くように願います。」
「わかったわ。」
時間になったので慰問会の会場へ向かった。
「姫様だ!」
「姫様がお戻りなされた!」
「このお歳で聖女の御技を極められたとは!南部の誇りじゃあ!」
こちらにいる皆様は、南部最大の都市、ベガに働きに出ている親族を頼って上京?してきた被災者の方々。大都市にきてるから働き口を見つけやすい若い人が多いと勝手に思ってたんだけど、案外お年寄りが多い。
なんかお祭り騒ぎになってるよ。スカーレット、めっちゃ照れてる。
「静粛に。姫様方からお言葉がある。」
ハーマンさんの一言で、はしゃぎ過ぎたご老人たちはシュンとしてしまった。
気を取り直して、一人ずつご挨拶。最初はメリディエス公の娘であるスカーレットから。
「ひさいしゃのみなさま。このたびはたいへんなおもいをされましたね。だいじにそだてたさくもつが、ただいなひがいをうけたとききおよんでおります。このばをかりて、おみまいもうしあげます。そして、わたくしはみなさまにあやまらなければなりません。あなたがたがくるしいじかんをすごすあいだ、わたくしはなんぶにももどらず、おうとでみわざしゅぎょうをしておりました。わたくしのわがままから、みぞううのさいがいのときに、ながくなんぶをはなれましたこと、おわびもうしあげます。あすからはわたくしもびりょくながら、ふっこうのおてつだいをいたします。みなさまがいちにちもはやく、ふだんのせいかつにもどれるよう、じんりょくしてまいりますので、どうかもうしばらくこちらでおまちくださいませ。」
うんうん、立派立派。事前に挨拶はこれでいいか、わざわざ私に確認しに来たんだよね。やっぱり、こんな災害の時に領を離れる罪悪感はあったみたいで、被災者にどうしても謝りたいって。
そういう時は、自分の言葉で話した方がいいよって言ったんだけど。
みんな感動で咽び泣いている。大丈夫かな、このご老人たち。感情の振れ幅がすごい。
オリヴィア、アーテルは無難に済ましていた。オリヴィアは南部と関わりが深いからか、親身になって語りかけるようなスピーチ。ご老人たちは大喜び。
騎士団でも思ったけど、アジテーションとか上手いよね?あの時はロボットアニメのGみたいだったよ。
さてさて。最後は私の番。さすがに王女様だからね!トリよトリ!
隠し玉持ってるからね。トリだけに、鳥だけど。鳳凰鳥の出現は被災者の希望になるだろうと思って、カルラと迦陵頻伽を紹介することにしたんだけど、ご老人たちのテンションを見てると極まり過ぎて気絶する人が続出しそうで怖い。
「みなさま、はじめまして。アウルムこくおうジョージごせいのむすめ、ヴァイオレットともうします。ちちにかわりまして、みなさまにおみまいもうしあげます。このたびはボオーテスがわのはんらんにより、ただいなひがいをうけたとうかがっております。へいおんなせいかつをうばわれ、すみなれたとちをはなれ、さぞふあんなひびをおすごしでしょう。こんかい、わたくしたちがなんぶをほうもんしましたのは、みなさまにおみまいをもうしあげるとともに、さいがいふっこうのおやくにたちたいとかんがえたからでございます。わたくしたち4にんは、そぼであるせいじょカスミさまにまなび、このいっかげつ、たがいにけんさんしあい、みわざをえるためにしょうじんしてまいりました。あすからげんばにおもむき、いちにちもはやく、みなさまがふつうのせいかつがおくれるよう、ちからをつくすしょぞんです。また、まだせいしきにはっぴょうはございませんが、おうこくにきっちょうがあらわれたこと、みなさまにさきだっておしらせいたします。わたくしのだいているひなたちは、ほうおうどりのひなでございます。ずいちょうであるほうおうどりは、わたくしたちのまりょくをたべてせいちょうしております。このこたちがおおきくなるころには、みなさまにもへいおんなまいにちがおとずれていることでしょう。どうぞ、こころやすらかに、こちらでそのひをおまちいただければとぞんじます。」
あっ、よかった。気絶者は出なかった。みんなポカンとしてるけど。よく見えるように雛たちを抱き直す。ぴ?とびんちゃんが顔を出して首を傾げるような仕草をした。
ちなみにカルラはたくさんの人が怖いのか、腕に潜ろうとしてる。人見知りさんめ。
「おお、鳳凰鳥!」
「伝説ではなかったのか!」
「この目で見ることが出来るとは、神々の庭も近いのかもしれんのう。」
いやいや、頑張って生きてほしくてこっちに来てんのに、神々の庭に行こうとしないでよ!
まあ、喜んでくれたみたいで良かった。
その後はひとりひとり握手して、少しだけお話を聞いて周った。カルラは完全にビビっちゃって私の腕の中に潜り込んでるけど、びんちゃんはおじいさんの手をつついたり、名前を呼んでもらってぴっ!と鳴いたり、慰問活動を積極的にこなしていた。
ご老人たちは孫の顔を見るかのように微笑ましく見守ってくれた。びんちゃんのつつきもありがたがって、後日、鳳凰鳥につつかれるといい事があるというジンクスが生まれたのだった。
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