86 聖女特訓11
お楽しみいただければ幸いです。
よろしくお願いします。
さあーて、ま、ず、は、広域祝福ね!昨日はちょっと怒られちゃったけど、今日の私には広角シャワーがある!香澄様に見て頂けないのは残念だけど、ぶぁーっとかけちゃうぞ!
「あれ?アーテルはやらないの?」
「おばあさまからヴィオラの変な御技をよく指導するようにって言われてるから。」
「わたくしだけ!?」
「まあ、三人でこれくらいなら余裕でしょ。御技の訓練も、もうほとんど終わってるようなものよ。広域祝福が出来れば広域浄化も同じだわ。」
「そう、なのかな?」
「私たちもみんなのお陰でスキルアップ出来たし、むしろ大成功なんじゃない?」
「ならいいんだけど。」
「果樹は低めに仕立ててあるけど私たちからしたらまだまだ高いから、それだけ気をつけてね。上の方まで行き届くように。脚立に乗ればいいんだけど、とりあえず訓練としてどこにいても御技を届けられるようにってことらしいから。樹高は変えずに、花が咲いて実を結ぶ時のイメージで。みかんの時と同じよ。」
みんなで散らばって、祝福をかけ始める。
ふんふんふーん。広角シャワー、ラクチーン。あ、でも、正門前広場とかでかけるなら、もっと勢いよく出して広げた方がいいかな?マジックとか?イリュージョン!みたいな!
ド派手にいくぜッッ!
ハイ、イリュージョーーン!ブワーーーーン!!!
「うおあ!」
祝福がすごいキラキラ光ってる!祝福って感じ!なんだこれ!
アーテルにガッと肩をつかまれた。
「あんた何してんの!出し過ぎよ!」
「ほえ?」
果樹は一気に花を咲かせ、落ち、実が成った。えええー!こんなのアリぃ!?
「なんじゃ、これは!」
「うわ!実がなってる!つぼみもなかったのに!」
アワアワアワアワワ、やっちまったぁ!
「おんじ、ペーター、ごめんなさい。」
ぺこりと謝る。二人は唖然としていた。
「あ、ああ、ヴィオラ様、すごい祝福ですね。」
「あきのしゅうかくさいでこういきしゅくふくをするので、それならはでにやろうとおもったら、こんなことに……。」
「こりゃ、土ダメになってんじゃない?じいさん。」
「あ、ああ、そうだな。実も収穫しちまわないと……。」
「あと、姫さん。俺の名前、ペーターじゃなくてピーターですから。」
「あ、ごめんなさい、つい。」
スペルは同じだと思うけどね!読み方の問題だね!
「魔力、結構使ったでしょ。」
「うーん、さんぶんのいちくらい?」
「それだけ?かなり増えてそうね。」
「ほんとう!?」
うわー、そうだといいな!私だけ5000台だったんだもん、ちょっと気にしてたんだよね!気にしてないって言った?そんなのはウソさ!ただの強がりさ!増えたら普通に嬉しいさ!
「みかんの木はそこそこにしなさいよ。」
「はあーい。」
「みかんの植え付けは終わってますから、ちょっとワシらはこっちをやらねばなりませんので、みなさまだけでいかれますかな?」
「道は覚えてるから大丈夫よ。土のなじませはヴィオラにやらせるから、作業お願い出来る?」
「今日中は難しいんで、明日か明後日の朝でもよろしいですかな?」
「いつでもどうぞ。分かったわね?」
「あ、はい、スミマセン、アーテルセンパイ。」
「二人の様子も見てくるわ。あんたは収穫の手伝いでもしてれば。」
「そうします、そうします。」
ドロシーにも手伝ってもらって、結実した果実を収穫していく。お、いちご!他の木で隠れてて気付かなかった!ちゃんとハウスのいちご狩りみたいになってる。ハウス作った聖女様は農家のご出身なのかな?
いちごちゃんにいちごあげたら、アーサーよろこぶんじゃない?あー、ショートケーキ食べたい。ここのお菓子、焼き菓子が多くて、飽きて来たんだよ。
「ヴィオラ殿下、いちごがお好きで?」
「あ、ううん、いや、いちごだいすきよ。ただ、きのうアーサーのひなにいちごというなまえをつけたから、いちごちゃんにたべさせたいなとおもったの。」
「王子殿下はお帰りになりましたから、後で届けさせましょう。」
「ありがとう。わたくしもひるのきゅうじはするから、そのときまでにおねがいするわ。」
いちじくー、ブルーベリー、ラズベリー、ブラックベリー、あー、フルーツタルト食べたい。ちゃんとカスタード入ってるヤツ。フルーツモッリモリのやつ。
どんだけとっても終わらない。ピーターが人を呼びに行った。園芸課の手の空いてる人と王族と官僚それぞれの厨房の人を連れて来るって。
「あ、おんじ。これ、ドロシーにおみやげにあげてもいい?ちいさなおこさんがいるのよ。」
「かまいませんよ。どうせ食べ切れません。」
「ウッ、ほんとうにごめんなさい。」
「ああ、失礼しました。そういう意味じゃあないんです。みな食べ頃になっとりますから、直ぐにでも食べちまわないとダメなんですよ。幸い、加工出来るものの多い区画でしたけどね。」
「ちゅうぼうはイヤになるほどジャムづくりをしなければならないわね。しゃざいにいかないと……。」
「儂が言うのもなんですが、王族の方はかんたんに謝罪してはなりませんよ。つけ込む輩がないとは言い切れませんからね。」
「そうね、わかってはいるのだけど。」
「たくさん食べたかったから、でいいんです。お姫さまは少しくらい我儘な方がかわいいものですよ。」
「おひめさまってガラでもないのよねぇ。」
「否定はしませんがね。姫様たちは良い子どもを演じるよう強いられていると、昨日のカスミ様のお話と皆様のご様子から感じました。そのお歳で苦労の多いことですが、身を守るためにもその方がよろしいかと。」
「ありがとう。あらためてきをつけるわ。」
「こちらにいらしてる時は、考えるまま思うままに振る舞っていただいて結構です。陛下もそうなさってましたからね。」
「おとうさまとおなじにはなりたくないわ。」
「お早い反抗期で。」
「このままいくとえいえんにはんこうきかも。」
「娘を持つ男親はツライもんです。儂には子も孫も男しかおりませんから分かりませんが。オリヴィア様も、父君と仲直りできるとよろしいですな。」
「そうねえ。」
アーテルが二人を連れて戻って来た。二人も合格らしい。
「さー、気を取り直してピクニックだ!」
収穫したての果物もつめこんで、みかんの木までレッツゴー!
ドロシーがお弁当、ナンシーが飲み物とシートを持ってテクテク歩いてく。オリエンスの侍女って必要以上に喋らないんだよね。ナンシーは一番若くて、デイジーと同じくらいなのに出来る侍女って感じ。デイジー、がんばれ。
みかんの木にもサクッと祝福して、ごはんごはーん!
少し開けた場所に広げたシートに座って、みんなでピクニックだ。侍女の二人も、少し離れたところで早めの昼食を摂ってもらっている。私たちもかなり早めだけどね!
でも、おかげで久しぶりにぶっちゃけた前世話も出来そうだ。
「さわやかなかぜ。」
「気持ちいいわね。」
「でも、もうすぐうきがやってくるわ。」
「……そうね。」
雨季が来たら、また洪水が起きるかもしれない。スカーレットは少し俯いて、グラスの中の水面を見ている。
治水工事の話はほとんど私の手から離れて、報告くらいしか受けてない。被災者には遊水池と河川工事についての説明会が開かれて、概ね好意的に受け入れられたらしい。
一部、現在の農地を手放してもらわねばならない人たちの反対にあったが、土地の代金と代替地の提供や遊水池が空の時期の使用権の優先権を与えて、何とか説得が済んだようだ。
工事、私がメリディエスにいる間に魔法でやれることがあればやっときたいんだけど。
「あ、ねえ、オリヴィア。ちょっとききたいんだけど。」
「きのうのはなし?」
「それとはちがうの。こうげきまほうでどぼくこうじにもゆうようなものって、なにかかんがえられないかしら?」
「ダイナマイトてきな?ばくはつをおこさせるとか。」
「ああ、たしかに。ダムにはつかえそうね。」
「でも、ダムはむずかしいのでしょう?おとうさまがいっていたわ。」
「ああ、そうなのよ。ボオーテスがわのげんりゅうがたこくだから。ゆうすいちをまずつくることになってるの。あと、かせんのながれをかえるのよ。ていぼうのきょうかもするけどね。」
「じならしはつちのませきかしら。いしをきったりはみずカッターなんかもいいわよね。」
「ていぼうはじかためしなきゃだからね。」
「まつりでひとをあるかせてじがためするのはゆうめいよね。」
「有名かしら?」
「たけだしんげんとか、すみだがわのていぼうとか。」
「すみだがわはさくらをうえて、はなみきゃくがくるようにしたのよね。あばれんぼうなしょうぐんが。」
「へえ。」
「へえって、トコちゃんパピーがドラマでえんじてたじゃない。」
「あんな単発ドラマ、よく覚えてるわね。」
「おかあさんがねー、ファンだったんだって。わたしもトコちゃんのファンだけどね!」
「シュガー派のくせに。」
「うぐぅ、それはいわないおやくそく!」
「あのはいゆうがおとうさんだったんだ。さいほうそうでみたことある。」
「私が今くらいの時に離婚したけどね。」
「でも、みっちゃくドキュメンタリーだとなかよさそうだったよね!」
「良くはないわ。悪くもないけど。乗馬のやつでしょ?」
「そう。」
「時代劇によく出るからか馬が好きで、趣味が乗馬だったのよ。二人で会う時は毎回乗馬クラブ。別に私に会いたいわけじゃなくて、イメージを落とさないためのパフォーマンスね、あれは。乗馬なら、私と話さなくても済むし。私に会うのはついでなのよ。」
「そんなもん?」
「そんなもんよ。話がズレてるわよ。」
「ああ、そうだった。ちすいこうじのはなしだ。」
「でも、いっしゅうかんでどこまでできるかしら?」
「むずかしいわよね。」
「まりょくりょうしょうぶで、かせんこうじだけしたいな。かんがいせつびはうきがおわってからだし、ゆうすいちはそんなにじかんかからなさそうだし。ていうか、もうはじまってる。」
「そうなの!?」
「スカーレットしらなかった?」
「しらなかった。あっちからは、そういうはなしはきかないから。」
「れんらくとってる?」
「たまに、みずかがみで。」
「うきにまにあわせるためのとっかんこうじだけど、ないよりマシだから、いまきしだんにほってもらってる。」
「そうだったんだ……ありがとう、ヴィオラ。」
「なんでわたし?」
「ヴィオラのおかげで、メリディエスのひとたちがあんぜんにくらせるわ。だから。」
「じっさいにこうじしてるのはきしやぎじゅつしゃだよ。たいしたことしてないもん。」
「でも、いつもたすけてもらって。わたし、おちこぼれだから。」
「ええー!そんなことないよ!それいったら、まりょくりょうがいちばんすくないわたしこそおちこぼれじゃん!」
「ヴィオラはちしきとはっそうりょくでいつもじぶんのやりかたをみつけるじゃない。わたし、それにたよってばかりでおんぶにだっこでなさけない。ジョエルには、あんなにえらそうにいったのに、わたし、なんにもできてない。」
「そんなのたまたまだよ!そりゃ、ひとよりしってることおおいかもしれないけどさぁ、いまだってオリヴィアのちしきにたよろうとしてたし、スカーレットだっていりょうかんけいはだいかつやくしたじゃん!あそこまでしってるとおもわなかったから、かんしんしたんだよ!」
「わたし、ほんとうは、いしゃになりたかったの。でも、ダメで。へんさちぜんぜんたりなくて。おやにも、がっこうのせんせいにも、よびこうのせんせいにも、だいはんたいされて。ヴィオラくらいあたまがよかったら、いしゃになれたのかなって、うらやましくて。わたし、いやなこだな。ずるいなっておもっちゃったの。ヴィオラだって、ぜんせでたくさんどりょくしたはずなのに、わたしとはあたまのできがちがうからだって。わたしだって、ヴィオラみたいになりたかったのにって。ごめんなさい。」
「わわわ、あやまらないでよ!いつもでしゃばってかきみだして、めいわくかけてんなって、こっちこそあやまんなきゃいけないくらいなのに!」
えー、全然気付かなかった!そんなこと考えてたなんて!
だからなんかいつも私にはちょっと一歩引いた感じだったのかなぁ!?ただのジェネレーションギャップだと思ってたよ!
「確かに謝った方がいいわね。」
「はグゥッ!トコちゃんヒドイ!」
「スカーレットはいい子よ。いつも一番努力してる。治癒の講義のときも、一生懸命昔の記憶を掘り起こして、遅くまで準備して、頑張ってたじゃない。ちゃんと貴女も誰かの役に立ってるわよ。性格は少し、真っ直ぐすぎるところはあるけど、そんなところも素直でかわいいと思うわ。落ち込むことないわよ。この人はちょっと特殊なの。頭の良さに能力が振り切ってて、うっかりでやらかしまくってるじゃない。羨ましがるような人間じゃないわよ。」
前半はいい話だったのに、後半は見事に私ディス!ボンテージトコちゃんに罵られてると思えばご褒美……にはならんわ!普通に傷付く!
「ホラ、見て?またおかしなこと考えてる顔してるわよ。こんなのになったらダメよ。むしろ反面教師になさい。」
「ホントしお!むしろ、さん!りゅうさん!わたしのこころはきずついてる!ちのなみだをながしてる!」
「真実じゃない。」
「しんじつでもひとをきずつけることがある!いしゃりょうをようきゅうする!なんかうたって!」
「宴会じゃあるまいし、バカなの?」
「バカじゃないですぅー、あたまいいですぅー!」
「バカ丸出しね。」
「いいからうたって!なんでもいいから!あ!シュガソルのやつがいい!ふりつきで!」
「嫌よ!」
「わたしもみたい!みたことない!」
「わたしも。」
「ホラァ、ふたりもみたいっていってんじゃん!ハイ、マイク!」
「これはマイクじゃなくておしぼりというのよ。」
「しってるよ!えんかいといえばおしぼりマイクじゃん!」
「いつの時代よ。まったくもう。」
そう言って、トコちゃんは、あ、アーテルは、シュガー&ソルトのバラードナンバーを振りつきで歌ってくれた。もっと激しく踊るダンスナンバーが聴きたいのに!そう言ったら、絶対に一生やらないって言われた!なんだよケチ!
お読みいただきありがとうございました!
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