83 命名会議②
お楽しみいただければ幸いです。
よろしくお願いします。
お父様はオリヴィアからガルーダのことを詳しく聞き出すと背景にパァッ!という効果音とともに花でも飛んでるんじゃないかと思うくらい
「で、結局どちらにするんだ?」
「その2たくいがいのせんたくしは?」
「金色の鳥の神で口から火を吹き、策謀に嵌められて奴隷に落ちた母を救うために強き神々にも立ち向かい、母を救出する手助けをしてくれた偉大な神に仕え、主人に呼ばれればいつでもどこへでも馳せ参じる忠義者の神なのだろう?王族の使役する霊鳥として最高じゃないか!クソッ!私の雛がその子であったなら……!」
わー、オリヴィアに今教わったこと復唱できるくらい気に入ったんですねー。大層気に入ったということですねー。
「そんなにおきにめしたのなら、おとうさまがきめてくださいませ。」
「だが、ヴィオの雛だろう?」
散々口出ししといてどの口が言う!?
「わたくしはパルとアルテにもなまえをつけたばかりですから、ひなのめいめいけんはおとうさまにおゆずりします。」
「本当にいいのか!?うわあ、悩むな!確かにガルーダの方が呼び易いし響きが良いが、カルラは漢字を使えるという強みがある!くっ!決められん!」
あなたのお名前、まだ決められないんですってよ、金色ちゃん。
「さきにアーサーさまのひなたちのおなまえのきぼうをうかがったほうがよいのではありませんか?なまえのひびきがちかかったりすると、よびまちがえやすいですから。」
見兼ねたスカーレットがお父様に提案してくれた。ウチの父親がすんません。
「アーサー、とりさんの名前は決めた?」
「んっとね、おとこのこならぴおで、おんなのこならぴよ!」
ぴいとぴいよりは進化しているが、スカーレットの言う通り呼び間違えそうだ。
「男の子と女の子の名前が似ていると、とりさんは自分が呼ばれているのかどうか、分かりにくいのではないかしら?」
おっと、お母様、策士ですな!人間側の事情ではなく、あくまでとりさん側の事情である、と言いたいのですね!?
「じゃーねー、アーサーとゔぃお!おとこのことおんなのこだよ!」
「それでは人間の方を呼んでいるのか、とりさんの方を呼んでいるのかが分からないわ。」
「そっかぁ。」
シュンとしてショーンって感じのアーサーもかわいいぜ!やはりここはうさ耳だな!
「おなまえ、むずかしいね……。」
ええ、まったく。激しく同意。
お父様は堪え切れなくなったのか、貧乏ゆすりしている。王様が貧乏ゆすりって。
「アーサーの雛たちはゆっくり考えよう!出来れば全員漢字の名でそろえたいが……アーサーの雛はアーサーの希望を優先する。私は早速、母上にどの様に書くのか聞いてくる!」
お父様が勢いよく立ち上がったもんだから椅子が倒れた。待ち切れない子どもか!
てか、あっ、マズイ!香澄様があの漢字を知ってるか分からない!バッとオリヴィアの方へ振り返り、声を出さずに口の形でか、ん、じ、と伝えるけれど、首を傾げられた!
「筆と墨を持て!母上に書を認めてもらう!命名書を額装するための額縁も用意しろ!」
ヤバイヤバイ、本格的になってきた!
スカーレットの方が気付いてくれてオリヴィアに耳打ちすると、オリヴィアは真っ青になった。
「へいか!おばあさまにはわたくしがきいてまいります!しょをしたためるにはじかんがかかりますから!さきにおしりになりたいでしょう!?」
「そうですわ、おとうさま!アーサーのとりさんだけなまえがないのはかわいそうですわ!」
「む……そうだな。では、オリヴィア、頼むぞ。」
「ええ、いってまいります。」
「ナンシー、ついてってあげて。」
「かしこまりました。」
よし、これでいい。はぁ、疲れる。オリヴィアが出て行くのと同時に、執務室の方からライナスとブライアンの声が聞こえて来た。誰か来たのかな?止めてるみたい。
「これはこれは、皆様お揃いで、何をしておられるのかな?」
「ダ、ダスティン!」
あちゃー、ダスティン来ちゃったよ。これはもう今日はこれでお開きかもしれない。
「遊んでないで執務をして下さい。」
「あ、遊んでなどない!雛たちの名前を決めていただけだ!」
「それは学者が相応わしい名前を調べていると申し上げたではありませんか。」
「私の雛なのにどうして学者が名前を決めるのだ!もう私の雛とヴィオの雛の名は決まった!私の雛がかりょうびんがでヴィオの雛がカルラだ!異界の神の名で漢字で書けるんだぞ、すごいだろう!」
「漢字、異界の文字ですな。」
「そうだ!良き名だろう!?」
「分かりました。その名で宜しいでしょう。さっさと残りの雛たちの名前をお決めになって執務にお戻り下さい。」
「グゥッ、そのつもりだ!」
ダスティンも席に座っちゃった。自分も参加するんじゃん。
お父様、異国情緒ならぬ異世界情緒に抗えなかったのね。カルラで決まっちゃってたよ。
「漢字をお使いになられるなら、残りの二羽も揃えた方が良いでしょうな。」
「ダスティンもそう思うか!?」
「陛下が好みそうなことですので。」
「くっ!見抜かれている!」
いや、みんな同じこと思ってます。
「ほかになにかあるかしら。」
「とりあえずこうほをあげてみて、そのなかからアーサーでんかにえらんでいただいては?」
まあ、普通の二歳児の命名センスなんてひよこだからヒヨちゃん的なモノだもんね。
「そうするか。しかし、他の霊鳥は漢字で書けるのか?」
「すざくくらいですわ。」
「むう。すくないな。」
「視点を変えてみたら?火の魔石の名の由来なのですから、火に関する神や物から取るとか。」
おおー、お母様、グッジョブ!それなら候補が増える。
「ヴィオ、異界の火の神の名は分かるか?」
「おばあさまのこきょうのかみなら、カグツチかしら。」
「漢字で書けるんだな!?」
大事なのはそこかよ!でも、カグツチを産んだせいでイザナミは命を落とすから、産褥熱で亡くなったアーサーのお母様の事を考えるとちょっと付けたくない。
「はい。」
「では、まずカグツチは候補に入れよう。他には?」
「不動明王は?」
「カルラのひをまとってるしね。でも、よびにくくない?」
「そうね。」
「ふどうみょうおう、だな。あとは?」
「あとはわかりません。」
「少ないな。」
「そうおっしゃられましても……。」
「いや、済まない。そうだよな、ヴィオに言っても仕方のないことだった。他に何か由来がはっきりしている言葉はないだろうか、漢字で。」
漢字漢字しつこいな。
「色の名前とか?」
「あかのわめいかぁ、あかいろ、しゅいろ、あかねいろ、ひいろ、くれない、えんじ、からくれない、ぎんしゅ、ぐれん、しんく、しょうじょうひ、べにひ、んー、あとはでてこない。」
「記憶力だけはいいわね。」
「だけとはひどくない?」
「あかねならおんなのこよね。」
お、スカーレットさんも参加します?
「ひいろちゃんって子もいそうだわ。」
「ひいろっておとこのこじゃないの?」
「女の子でしょ?」
「あかね、か。威厳のある響きではないが、女の子の名前と考えれば可愛らしいな。ひいろは男女共に使える、と。」
「この子たち、結構色が濃いわよね。血赤珊瑚みたい。」
「さんごちゃんならアリね。」
「ひいろ、ちあかさんご、だな。」
いや、血赤珊瑚はちょっと……おばあちゃんが帯留めと指輪持ってたけどさ。好きだったけど。
あ、火の魔石が赤いんだから……
「あかいこうせきやほうせきのわめいなんてどうかしら?」
「ルビーで紅玉とか、そういうの?」
「そうそう。ざくろいしとか。あとシンシャ?」
「シンシャはすいぎんではないの?」
「そうだね。どくぶつだった。」
「ざくろいしのざくろとは、果実の柘榴のことか?」
「はい。」
「漢字で書けたのか!?」
「は、はい。」
「とりさんあかちゃん、ねちゃった。」
こんなに(お父様が)騒がしいのに寝るのか。大物だな。伝説の鳥だから最初から大物だった。
「まんまるねー?りんごみたい。」
お世辞にも林檎には見えない。子どもの感性はすごい。アーサーはかわいい。
「そっちはメスだな。」
「りんごちゃん、ねんねねー。おやすみいいこ〜。」
「アーサー、そのこのおなまえはりんごちゃんなの?」
「うん!りんごちゃん、かわいいでしょ?」
「かわいいわ!」
アーサーがね!
「ダメだダメだ!果物の名前など、国鳥に定めようというのに威厳が足らん!」
「りんごちゃん、メ?」
「ダメだッ!」
「う、う、りんごちゃん、かわいいも、りんごちゃ、あ、うあ、うあーーーん!!あーーーーん!!」
お父様が怒鳴るのでアーサーが泣き出してしまった。最近、泣くことそんなになかったのに。バカお父様め!
「ジョージ!」
「おとうさま!」
「し、しかしだな、国鳥はもっと、こう、」
「りんごも漢字で書けますわ。」
「よし、りんごにしよう。アーサー、すまなかった!りんごちゃん、かわいいじゃないか!この子にぴったりだ!」
「うっ、うっ、りんごちゃ、かわい?」
「かわいいよ!アーサーがつけた名だ、かわいいに決まってる!」
それは同意します。アーサーもりんごちゃんもかわいい!お父様の動機は不純だけど。
「もういちわもくだものがいいかしら?」
「紅玉でもいいんじゃない?林檎の品種だし。」
「りんごかぶり?」
「さっきのざくろでもいいのではないかしら。
「よびにくくない?」
「いちごちゃん、おいでー。」
「え、いちご?」
「つぶつぶある。いちごちゃん。」
「アーサー、その子はオスだぞ?いちごちゃんでは女の子みたいじゃないか?」
「いちごちゃんおとこのこだも!」
「アーサーが気に入っているのだから良いじゃない。大人気ないわよ。」
「シ、シンシア……!」
「陛下、いちごも漢字で書けますわ。」
「そうなのか?」
「一文字ですけれど。」
「……仕方ない。いちごにしよう。」
「では、陛下の雛はメスでかりょうびんが、アーサー殿下の雛はオスがいちごでメスがりんご、ヴィオラ様の雛がオスでカルラということで、発表の準備をして参ります。陛下は執務はお戻りを。」
「ま、待て!まだ漢字が……!」
「後でで良いでしょう。何か不都合でも?」
「兄上より先に知りたい!」
「すぐにきいてまいります!おとうさまはこちらでおまちくださいませ!」
「だそうですよ。さあ、お戻り下さい。」
あー、もうッ!めんどくさいオヤジだよ!
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