80 聖女特訓⑨
今日はあと二話更新できるかな?
定時更新の方がいいのでしょうが、書いてしまうとすぐ上げたくなってしまいます。
今回もお楽しみいただければ幸いです。
朝だー!今日で騎士団の戦闘訓練が終わる!地獄の行軍だった!
朝食の後、アーサーはウッキウキで果樹林に向かった。私がアーサーを送り出すのは滅多にない。なんだか初めてのおつかい感が強い。成長にうるっと来る。
雛はアルテが親鳥よろしくつきっきりで面倒を見ている、とお父様の朝イチ交換日記で来た。昨日返却する時に、交換日記は一日一回って頼んだの、分かってるよね?
昨夜は仮眠室で雛たちとアルテと共に寝たそうだ。何でか高いところに行きたがるのでベッドの上にアルテの箱ごと置いて、一緒に寝たと自慢気に書いてあった。うらやましすぎる!!
雛たちはアルテが動くとちょこちょことついて回り、お父様が近づくとお父様の雛だけ自分の方に寄ってくるのが愛おしくてたまらないらしい。
なんか趣旨変わってない?王家の威光を高めるための飼育だよね?
まあ、執務室に癒しが訪れたのはいいことなんじゃない?アニマルセラピーということで。鳴き声はうるさくないのかな?
転移棟に着くと、興奮した様子のアイザックさんが出迎えてくれた。
「ヴィオラ様!聞きましたよ!あのたまごは鳳凰鳥のたまごだったのですね!」
「あら、もう公表されたの?」
「王宮の職員にだけですが。今後、自由に王宮内を活動するだろうと言うことで、先に周知となったそうです。今のところ家族へも教えないように守秘義務が課せられています。」
「そうだったのですね。」
「ヴィオラ様は親代わりになられたと仰っておられましたね。いやぁ、うらやましい!鳳凰を使役するのは全世界の男の子の憧れですよ!」
あ、伯父様だけじゃないのね。男の子だけじゃなくて大きいお友達もなのね。
「けれど、わたくし、もうすこししたらたびへいくでしょう?るすのあいだにかおをわすれられてしまうのではないかとしんぱいなのよ。」
「そうなのですか。ヴィオラ様なら鳳凰をお使いになられているところを見せて頂けるのではないかと思っていたのですが……。」
「あまりきたいせずにまっていて。ひなたちのおかあさまはアルテですから、みるきかいはあるとおもいますわ。」
「アルテが?」
「ははおややくをかってでてくれています。おとうさまのしつむしつで、アルテのうしろをひなたちがついてあるいているそうよ。」
「なんと!それならば、いずれこちらにも散歩にやってくるでしょうね!楽しみだなぁ!」
アイザックはキラキラと少年のように瞳を輝かせている。男の人はいつまでも少年の心を持っているんだなぁ。他の職員の方々からも、鳳凰鳥の誕生を寿ぐ言葉をいただいた。
騎士団に着くと、待ち構えていた第六師団の面々が沸き立っていて、師団長が代表して騎士団からの祝辞と、万歳三唄が行われた。誰だ、この世界に万歳三唱を持ち込んだのは!団長室の書を書いた聖女様だな!間違いない!
お母様は鳳凰鳥の育児が優先になったので、戦闘訓練には来られなかった。仕方ない。雛は生まれて初めて目にしたのが人間だからか、人を怖がる気配がない。野生には返せなさそうだなぁ。
「お願いします!」
うおっ、今日も伯父様は絶好調だ!続々と怪我人がやってくる。
親子喧嘩はまだ続いているようだけど、伯父様はこの訓練が終わったら鳳凰鳥を見ていいと言われたらしくて張り切っている。昨日のアドバイス、覚えてます?
誰かが第一師団の騎士に話を聞いたのだろう。治療を受けながらオリヴィアに策を授けてもらっている。
完膚なきまでに叩きのめす!と言い出した時には、第六師団のみなさんもちょっと引いてたよ。スカーレットはうんざりした様子で嘆息する。
「オリヴィア。おじさまをゆるせとはいわないけど、いつまでいじをはるき?」
「おとうさまがほんとうにはんせいして、どげざしてゆるしをこうまでよ。」
おおう、激しいな。怒りが鎮まるどころか、ますます燃え盛っている。
「永遠に来ないんじゃないかしら。」
「来るはずがありません。」
アーテルとドロシー、冷たいっ!
「オリヴィア、おじさまもほんとうはわかってらっしゃるのよ。わたくしたちにとって、せんとうくんれんはさけられないということを。それでもおもわずくちにでてしまうほど、しんぱいなさってるんだわ。だって、あなたがこちらにくるときにおまもりといって、つちのませきをもたせてくれたのはおじさまでしょう?」
「それは……わかってるわ。だいじにおもってくれていることくらい。」
「せいかくは……はらぐろというか、うらがあるというか、ずるがしこいというか……そういうところがあるけれど、ふだんはおやさしいじゃない。」
「おとうさまはおやさしくなんかないわ。わたくしをいつまでもこどもあつかいして、まともにうけあってくれないのだもの。」
「そうはいっても、わたくしたち、まだ2さいじゃない。」
「それでもへいかはちゃんとはなしをきいてくださったじゃない!おとうさまはそれすらもしてくれない!ずるいわ!」
ずるいかー。これ、伯父様のことだけじゃなくて、私のことも入ってるんだろうな。
まあ、伯父様のやってることは、子どもがヒーローとかに憧れて戦いごっこをしたがっても真剣を与える親がいないのと同じだ。正しいと言えば正しい。
私たちはねー、戦闘訓練しとかなきゃいけない理由があるからねー。万が一の時を考えて、自分のことは自分で守れるようにしとかないといけないし。伯父様のこと擁護してあげられないんだよなー。
私もお父様にかなり無理を言ってると思ってるよ。自覚あるもん。それでもダスティンまで巻き込んでゴリ押ししてきたのは、自分たちの安全を確保するためだ。
あー、これもいけなかったのかなぁ。オリヴィアは、守られてる感が嫌なのかも。思春期がまだ続いてるんだな。いや、訪れてもないんだけどさ。
反抗期だね。自立心の芽生えだ。成長期のホルモンに感情が引き摺られてるのかな。大人になるためには必要なことだけど、自己肯定感を育てるためには成功体験もなければいけない。
ああーッ!難しい!こういうときこそアーテルの出番なんじゃないの?
喪女のままこっちに来た私には難解すぎるよ!
あっ、そうだ!伯父様との関わりはどうにも出来なくても、成功体験の機会をあげることは出来る!昨日チラッと考えてたこと、お願いしてみよう!
「ねえ、オリヴィア。けさね、ひょうぶきょうからぐんぶのうんようについてのしつもんをうけたのだけど、あなた、なにかわからない?わたくし、そちらはまったくわからないから。」
「え……そういうのはわりとすきだけど、わたくしでやくにたてるかしら?」
「やくにたつかどうかはあちらしだいよ!ゆうえきなじょうほうをひろえないほうがむのうなんだわ!わるいのだけど、あとでそうだんにのってくれない?」
「わかったわ。」
「ちゅうしょくのあとはおとうさまのところへひなたちをみにいくでしょう?そのあとに、こどもべやへきてくれる?」
「ええ。」
「よろしくね。」
とりあえず、承認欲求を満たすとこから始める。何にも変わらないかもしれないけど、せめて少しでも気が紛れればいいかな。だいぶハードル下げたな、私。
はー、治癒かけながらでも雑談が出来るようになったのは成長だね。私はまだ簡単な怪我しか治してないけど!
戦闘訓練のあとは、果樹林に向かった。別に果物狩りに来たわけではない。雛たちのご飯はアーサーのお仕事なので、それでもない。
明日も好天に恵まれそうなのでみかんの木を植え替える予定なんだけど、今日のうちに木を植える場所に祝福を与えることになった。
「ああー、どうも、果樹林の世話を任せられとりますオーウェンと申します。平民の出なんで、ご無礼があるかもしれませんがご容赦ください。コイツは孫のピーターです。明日の植え替えの手伝いもさせていただきます。よろしく願います。」
脱帽して挨拶してくれたおじいさんは、どっかの山小屋に住んでそうなグレーの髪と髭で青い目のおじいさんだった。髪は孫もグレーの髪なので加齢によるものではなく元々の髪色なのかもしれない。
背後にはヤギ。土から生えてる草を食んでいる。雑草処理班だな。スイスの山々が見えるようである。
「いやあ、一日で王子殿下と姫殿下方と会うことになろうとは、人生何があるかわかりませんな。」
「あら、おうきゅうではたらいているのに、おうぞくとはかかわらないの?」
「我々のような下男下女は、本来姫様方と話してはならないことになっておりますよ。失礼があれば首が飛びますからね。予防措置のようなものです。果樹林は季節に一度、王妃殿下が祝福をかけてくださいますが、その時も我々は場を整えるだけで、ずっと低頭する決まりになっておりますんで、お顔もしっかり拝見したことはございません。」
「まあ、そうなの。そういうの、なんだかさみしいわね。きょうはふつうにせっしていいのかしら?」
「陛下から許可をいただきましたんで。陛下は……おっと、やめておきましょう。」
「きっと、しつむをぬけだしてふらっとやってきて、きしのふりでもしながらはたけしごとをてつだったりしていたのでしょう?」
「よくおわかりになりましたな。」
「おとうさまがやりそうなことよ。」
「成人されてから城に入られたもんですから、遠目からも拝見したことがございませんで、全く気付かなかったのです。若い騎士の方々が甘いもの欲しさに手伝いを買って出てくれることは度々あるのですが、気軽にオーウェンじいさんと呼んで下さるし、農作業にも手慣れてらっしゃるもんだから、いやあ、すっかり騙されました。」
「そうでしょうね。」
「そういうわけで、お顔を存じ上げているのは陛下くらいのものでございます。今日のことは末代まで語り継がねばならぬ大変な栄誉でございます。」
「おおげさねえ。」
「はいはい、ジョージの話はもう終わりにして。後でしっかり締め上げますからね。」
ちょっと待ってください、香澄様。締め上げてはダメです。
「偉大なる聖女カスミ様。大変失礼を致しまして……。」
「気にしなくて良いのです。さあ、早速植え替えの場所に案内してちょうだい。」
「おばあさま、くるまいすでかじゅえんをまわれるのですか?」
スカーレットが心配して香澄様に寄り添った。あー、土の上は車椅子つらいよね。乗ってる方も押す方も。
「歩けますから大丈夫ですよ。階段だって上り下りしているでしょう?」
まあ、そうなんだけどさ。左足首が悪いみたいで、小さい一歩で少しずつなら普段も歩いてるんだよね。カミラさんがすぐ座らせようとするんだけど。
「わたくしはゆっくり行きますから、貴女たちは先にお行きなさい。」
「ピーター、カスミ様をご案内しろ。姫様方は儂がお連れするから。」
「うん、じゃなかった、はい。」
「孫は見習いで入ったばかりなので、失礼があるかもしれませんが……。」
「大丈夫よ。ピーター、歩くときに少しつかまってもいいかしら?」
「はい!どうぞ!ご遠慮なく!」
ピーターはどこぞで見聞きしたのか、カスミ様の横にビシッと並んで右腕を出した。緊張の面持ちは初々しく、眩い限りである。純朴な少年、よき。
「たくさん木があるのね。何種類あるのかしら。」
「季節ごとに五種前後の種類を揃えております。」
「さくらんぼがとてもあまかったわ。」
「姫様に喜んでいただけて嬉しゅうございます。」
「ねえ、ひめさまってやめてくれる?じぶんのことじゃないみたいではずかしいのよ。」
アーテルがふき出した。失礼しちゃう!
「ですが、さすがに不敬が過ぎましょう。」
「なら、わたくしもオーウェンのことをあだなでよぶわ!なにがいいかしら。」
「おんじいったくで。」
オリヴィアが即答した。確かに私も思ったよ。でも、口には出来なかったんだ。
「いちおうきくけど、どこからとった?」
「へいかの、オーウェンじいさんをりゃくしてみたの。」
「いいわけもかんぺき!」
「本人の許可はいらないの?」
「なんとお呼びいただいても構いませんよ。しかし、この年であだなをつけられるとは思っても見ませんです。」
「じんせいにはつねにあたらしいことがあるほうがはりあいがでるわよ。」
「お小さい姫様に諭されるとは。」
「ひめさまじゃなくてヴィオラよ。まわりをきにしてよびにくいならめいれいしてあげる。」
「命令とは!ヴィオラ殿下は変わった方ですね。いや、陛下に似ておられるのか?」
「えっ、それはちょっと……。」
とうとうみんな笑い出した。ホント、みんな失礼じゃない!?それこそ不敬よ不敬!
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