76 新たなる瑞鳥
いつもよりちょっぴり長めです。
よろしくお願いします。
「ぴい!ぴい!ぴい!」
お父様の頭がまた鳥の巣になっている。文字通りの鳥の巣である。そこそこの大きさのたまごから生まれたので、そこそこの大きさのある雛だが、辛うじて二羽一緒にお父様の頭の上で寛いでいる。
コレ、お母様がお父様のためにもう一羽孵化させる必要あるの?
ちなみにアーサーは肩車堪能中。雛を置いたのはアーサーの仕業か。
「すっかりなつかれましたね。」
「何でかな?」
「おとうさまとアーサーのかおがにているからかしら?」
「そんなに似てる?」
「にてるとおもいますけど。」
そうかなぁ〜子どもの頃の顔ってこんなだったかなぁ〜と軽く首を傾げている。いや、似てるよ。どう見ても親子だよ。
子供部屋の扉が開いて、マーガレットから香澄様がいらしたことが伝えられた。さっきの今で、若干気まずい。
「遅くなってごめんなさいね。ちょっと来客があったものだから。」
「あら?おじさまは?」
「お留守番よ。悪い子にはお仕置きしないとね。来たがっていたけれど、鳳凰鳥はおあずけよ。」
オホホじゃないよ。まあ、伯父様は自業自得だけど。
「兄上は子どもの頃、鳳凰鳥を躾けて使役したいとよく言っていた。さぞ悔しかろう。」
オリヴィアの厨二と被るけど、伯父様の場合は小学生男子の発想っぽいな。私の鷹匠と似たようなもんだ。
「私がこの子たちを使役する姿を見れば、更に悔しがるだろうな!たまごが孵るのが楽しみだ!」
仲が良いのか悪いのか分からない兄弟だね。四兄弟の下二人だからライバル心があるのかもしれない。しかも、この子たちって、その子たちの親はアーサーだよ。
それぞれで色々雑談をして結構長居していたんだけど、お父様とセプテントリオは緊急会議をすると言って帰って行った。残り二つのたまごが孵るまでは、雛も部屋から出してはいけないらしい。誘拐されても困るからって。
国民に周知したあとは、誘拐すれば逆に目立つから(実際メチャ目立つ色してる)攫われる恐れは減るって言われた。外に出る頃には大きくなってるしね。
「とりさん、とりさん。おなまえは?」
「ぴい!」
「ぴい!」
「このこがピイ!このこがピイ!」
どっちもピイやんけ!かわいい!
「アーサー、たまごが全部孵ったら、それぞれに合ったお名前をつけてあげましょうね。」
「はい、ははうえ!」
お母様と香澄様は今、湯たんぽを入れた小さな籠にたまごを入れて魔力を注いでいる。お母様がアルテに少し代わりましょうと言ったら、あとはよろしくとばかりにバルコニーから外へ出て行った。
さすがの猫でも三階から降りるのは普通じゃないと思うんだけど、この子たちは普通の猫じゃないから考えないことにした。
「なんにも反応がない気がするのだけれど、本当に大丈夫なのかしら?」
香澄様のたまごは育ちがイマイチなようだ。もしかして、育ってなかったりする?
「殻を割って確認するわけにはいきませんものね。」
「にわとりのたまごくらいなら、ひかりをあてればすけてみえるのですが……。」
「大きいですからねぇ。」
「ちゆのスキャニングのようりょうで、しんおんのかくにんしたらどうかしら?」
香澄様が優しくたまごを包み込んで、魔力で中を探る。
「微かだけどあるわ。そちらのたまごもちょっといいかしら?……やはり、わたくしの方が弱々しいわね。育ってないと言うよりも弱ってきているような。」
「やはり、すべてのたまごをかえすのはむずかしいのでしょうか。」
「いのちの限りというのは、聖女の御技でもどうにもならないからねえ。」
「ですよね……。」
「とりさんあかちゃん、げんきないの?」
「アーサー。貴方分かるの?」
「うん!」
「なんでですかね?」
「アーサーのむくなこころがかんじとってるのよ!」
「意味が分からないわ。」
「おむね、いたいいたい。」
「確かに、心臓が弱っているみたいだけど……。」
「ちゆ、かけてみます?」
「胎児に治癒をかけたという記録は残っているけれど、動物の、しかもたまごの中にいる雛なんて初めてだわ。」
「そもそも動物には治癒をかけませんものね。」
「あるとしたら、行軍中の馬くらいね。」
「鳥でも心臓の作りは同じでしょ?やれるのではない?試してみて、ダメだったら仕方ないけど。」
「ハツかぁ……しおだね。」
雛には申し訳ないけど、つい焼き鳥を思い出してしまった。
「あんたね……。」
「そうね。物は試しだわ。治癒をかけてみましょう。」
香澄様は再びそっとたまごを持ち上げて、雛にむけて治癒を施した。小さな小さな、か弱い心臓めがけて、細く細く、慎重に、探るように、魔力を注いでいく。アーサーはそれをじいっと見つめていた。
「とりさん、げんき?」
「……元気になったわ。さっきより心音がしっかりしている。」
「よかった!」
「無事に生まれるといいですね。」
「ええ、本当に。」
「とりさん、がんばれー。」
「アーサーはとても良い子ね。とりさん、がんばって。」
香澄様がアーサーの頭を撫でると、へにょっとした顔になった。褒められて嬉しいんだね。優しい子に育ってくれて、お姉ちゃんも嬉しいよ。
次の日の朝。
起きてすぐにデイジーから、たまごが二つとも孵りそうだと告げられた。二つともかぁ、案外早かったな。アルテのお世話がかなり効いてたのかも。元々、あとちょっとだったのかもね。
朝食も食べずにお父様の執務室に集まった。伯父様はまたお留守番だって。アーテルたちは香澄様と一緒に先に執務室へ行っている。セプテントリオの面々も集まっているらしく、私たちも入れば部屋はぎゅうぎゅうだろう。
アンが持つ箱の中からぴいぴいと声がする。昨日産まれた雛だ。夕方には立派な鳥籠が届けられて、親代わりのアーサーと共に籠ごと行動を共にすることになった。
心配だった食べ物は、潰したり、すりおろした果物を好んで食べている。伝承通り、肉食ではないようだ。食べられるものが見つかってホッとした。水は、王宮北の神殿に湧いている泉の水を汲んでもらっている。伝承によると、初代聖女の鳳凰鳥もここの泉の水を好んだらしい。
今のところ弱りもせず、元気に過ごしているので、非常に安心した。
アーサーは初めて入る執務室に落ち着かない様子でキョロキョロしていたけれど、会議室に通されると一目散に香澄様の元へ駆け寄った。
「とりさん、こんこんしてる!おいで!おいで!」
「アーサー、まずはごあいさつよ!」
私があわてて追いかけたけど、香澄様に制された。
「よろしいのよ。アーサーはとりさんが大好きだもの。気になるわよね。」
「とりさんのちちうえだもの!」
「昨日生まれた雛は元気?」
「げんき!かあいいよ!ぶどうたべた!アーサーがあげたのよ!」
「まあ、ちゃんとお父様の仕事をしているのね。偉いわ。」
しばらく見守っていたが、変化がなくなった。微かにしていた殻をつつく音も止んでいる。
「おばあさま、とりさん、こんこん、つかれた。」
「あら、そうなの?」
「げんきあげて。」
「元気……祝福はまだかけているのだけど……。」
「なにがいいですかね。」
「アーサー。こちらのとりさんは元気なのかしら?」
「ははうえのとりさんげんきだよ。」
「こちらはしっかりとヒビも入っているし、音もしている。大丈夫だろう。」
お父様は瞬きすらも惜しいとでもいうように、かぶりつきでお母様の膝の上のたまごを見ている。
「アーサー、またおむねがいたいいたいになったのかしら?」
「うん。」
「また治癒をかけてみるわ。」
香澄様は左手で祝福をかけながら、右手で治癒をする。
御技を使う時に左右の手で違うことをするってこういうことかぁ。私には出来そうにない。自分、不器用なもんで。普通の魔力ならまだなんとかなるけど。
「うまくいくかしら。」
「どうかしらね。」
「おばあさまはすごいですね。しゅくふくとちゆをどうじになんて。」
「わたくしにはできそうにないわ。」
「わたくしもそうおもう。」
スカーレットとオリヴィアも難しいと感じたようだ。オリヴィアはセンスがあるから、出来そうな気もするんだけどな。
「くちばしが出てきた!」
お母様の方は殻を突き破ることが出来たんだ。あとは体力の限りに殻を壊すのを待つしかない。
「もどかしいな。人の手で割ってはいけないのか?」
「やめてくださいませ、おとうさま。ひなは、からのなかのえいようぶんをまだきゅうしゅうしています。それに、たまごのうちがわにはけっかんがあるのです。むりにひとのてでわってしまったら、おやどりがのこしてくれたえいようがいかず、よわいこたいになってしまうのですよ。そもそもじりきででてこられないひなはよわいのでながいきできません。あせるのはわかりますが、ドンとかまえておまちになっていてください。」
「そ、そうか。シンシアの出産を思い出すな。私は何も出来なかった。」
「せいめいのたんじょうとはそういうものです。」
お母様の苦笑して、お父様に声をかけた。
「大丈夫よ。この子がとてもがんばっているのが魔力を通じてよく分かるの。自分のお産の時は痛みで分からなかったけれど、子どもたちはこうして、自分の力を振り絞って産まれてくるのね。」
お母様が私を産んだ時の事を語った。その時のお父様も、こんな感じだったんだなと思うと、笑みがこぼれてくる。前世の父の顔がふと過ぎる。あの人は、私と妹が産まれてくる時、どんな風に感じていたんだろうか。
「とりさん、がんばれ!こんこん!こんこん!」
アーサーの声で、我に返った。ふふ、アーサーってば、立派なお父さんしてるわ。とてもかわいすぎる。
そういえば、妹も秋に出産を控えていたんだった。無事に産まれたかな。女の子の予定って言ってたな。姪っ子の顔、見てから死にたかったな。
「ヒビが広がったわね。」
「とりさん、おいで!ちちうえだよ!」
「割れた!」
お母様の方のたまごは中の様子が分かるくらい穴が空いて、首から下が見えている。鳳凰鳥はヒビが入ってからは結構早いな。雛の体格の割には殻が薄いのか、くちばしが硬いのか。
中の雛は頭の方の殻をグイグイと押して、出てこようとしている。お父様はお母様から箱を受け取り、部屋の隅でみんなに背を向けた。刷り込みをしなきゃいけないからね。
「出た!……けど、頭の殻が取れないな。被ったままだ。」
そういうキャラクターいたなぁ。
「それはてでとってあげてくださいな。」
「あ、ああ、分かった。」
お父様はこちらを見ずにそう答えると、おそるおそる、雛の殻を取ってあげる。
「ぴい。」
「鳴いた!」
「ぴい。ぴい。」
「こ、これでいいのか?」
「たぶん、だいじょうぶだとおもいます。しばらく、そうしててあげてくださいな。だれか、ひなのしょくじをよういして。」
「陛下、こちらに置きますね。」
デズモンドさんがワゴンをお父様の後ろに置いてすぐに離れた。白い皿の上には皮を剥いた巨峰のような葡萄の粒が三つ。
「うまれてすぐにあるけるひなは、しょくじもじぶんでたべられますから、さらをはこのなかにおくか、おとうさまのてのひらにのせて、たべさせてあげてくださいませ。むりにくちにおしこもうとしたりするのはいけませんよ。」
「手からあげてみよう。ありがとう、ヴィオ。」
お父様は箱をそっと床に置いて、ワゴンから葡萄の粒を取り、手に乗せる。しゃがんでしまったので、私の方からではお父様の様子が見えない。
「つ、つついてる!かわいいなぁ。」
懐かせる前にお父様の方がメロメロになってしまった。いずれ上下関係が逆転しそうな予感。
「おくちでた!」
こちらもくちばしが覗いた。少しだけ見える羽毛が、赤いようには見えない。違う鳥のたまごが混ざってたとか?托卵?鳳凰鳥の巣に?でも、殻の模様は同じものだと思うんだけどなぁ。
「がんばれ!がんばれ!」
香澄様は魔力を注ぐのをやめていた。あとは、自分の力だけで出てこなきゃならない。がんばれ。がんばれ。
「ぴい!ぴい!」
「ぴい!ぴい!」
「ぴい!ぴい!」
兄弟雛が一斉に騒ぎ出す。兄弟ががんばってるのが分かるのかな?必死にぴいぴいと叫んでる。昨日生まれた雛たちも箱から出されて、アーサーの足元で兄弟の元へ飛ぼうと一生懸命に飛び跳ねている。
「がんばれ!こっちおいで!こっちだよ!」
殻が二つに割れ、雛は姿を現した。
「きいろい!」
本当だ、黄色い!ていうか、金色?窓から差し込む光が当たって、まだ濡れた身体は金色に光っているように見えた。
殻を破るのに疲れてしまったのか、しおしおとへたりこんでしまう。ん?もしかして、寝てる?目が開かない。
「あら、身体が鶏冠の色と同じね。」
ぴいぴいと兄弟の誕生日を祝うように飛び跳ね続けている雛たちの鶏冠、鶏みたいなのじゃなくて羽毛なんだけど、赤に差し色で黄色の羽毛が生えている。それにクジャクのような尾羽の模様と、メッシュのように入っている羽は、色とりどりでとても綺麗だ。しかし、とにかく派手だな。
「この子、全身金色ね。」
「そうだね。しろじゃないけど、アルビノだったのかな。」
「かもしれないわね。身体も弱かったし。」
「アルビノだと、これからもゆだんできないのでは?」
スカーレットの言う通りだ。アルビノ個体は生命力が弱い場合がある。
「これからもちりょうがいるのかしら。」
「わたくしがついているのだもの。大丈夫よ。」
香澄様は任せなさいと仰ってくれた。頼もしい。
「あ、目が開いた。」
「ぴい!」
「あれ?わたくし?」
金色の雛は私の前によろよろと這いずって来て、ぴいぴいと鳴き始めた。
「ヴィオ、ははうえだね!アーサーとおそろい!」
おそろい!なんてかわいい!
「そ、そうね!アーサーとおそろいだわ!」
「お父様ともおそろいだぞ!」
あちらは食事が終わったらしく、真っ赤な雛がヨチヨチとお父様の後ろをついて歩いている。
「おお、本当に金色だな。」
「これは吉兆なのでしょうか。それとも凶兆?」
お父様のためのたまごにヒビが入った時点で部屋を出て待っていたセプテントリオたちが戻ってきた。アリオト侯爵は金色の鳳凰鳥を見て首を捻る。香澄様は不安を微塵も感じない口調で吉兆であると断じた。
「いいものよ。王国の色じゃない。」
オリヴィアが雛を覗き込みながら言った。
「ほうおうというより、きんしちょうみたい。」
「きんしちょう?」
聞き慣れない名前に、アリオト侯爵はますます悩んでいる。
「おばあさまのこきょうの、うみをへだてたおとなりのくにの、きっちょうをもたらすしんじゅうのことです。ほうおうもおなじくにからつたえられたいきものです。ああ、あと、きいろいずいちょうならえんすうというとりもいます。」
オリヴィアは、金翅鳥もよくゲームに出てくるしね、と大人には聞こえないように低くつぶやいた。私は一瞬、地名かと思ったよ。
「では、凶兆にはなり得ぬと?」
「そのあたりはでんせつなのでしんぎのほどはわかりませんが、わるいことではないかと。」
「なにより、こんなに苦労して生まれて来たんだもの。悪者扱いなんてしたら、可哀想だわ。」
「ほうおうは、しとさいせいをつかさどるといいますから、しのふちからよみがえったこのこは、ほうおうそのものともいえますね。」
「そもそもほうおうって、つがいではないの?」
「ほうがオスで、おうがメスですわ。」
「そうだったのですか?」
「初代聖女様は、その辺りの知識が曖昧な方だったのかもしれないわね。わたくしたちは、十五でこの世界に来たのだから、知らぬことがあっても道理というものよ。」
香澄様、この話題になるとちょいちょい嫌味っぽく、刺々しく感じるのは気のせいかな?
「カスミ様はよく色々な事をご存知でいらしたのですね。もっと早く知りたかった。」
「貴方がたは、ご自分の知りたいことだけを聞き、わたくしの話など耳を貸そうとしなかったではないの。」
その中で唯一話を聞いてくれたのがお祖父様のセオドア様だったんだもんね。レナードは師匠だからか信頼してるみたいだけど、他のセプテントリオに対しては好戦的だなぁ。レナードとグレゴリーは年上っぽいけど、他の五人は香澄様に歳が近いような印象。
何はともあれ、この不穏な空気を払拭しなければ!
「わたくしもひなにしょくじをあたえたいのですが!」
またデズモンドさんがサッとワゴンを置いて行った。私は別に雛の親にこだわらないから、そんなにパッパと離れていかなくてもいいのにな。ここにいたくないだけかな。
「はい、どうぞ。」
雛は、ヨタヨタと歩きながら私の手に近づいて来た。立ち上がることは出来たけど、かなりバテてるなぁ。回復魔法みたいなのを御技で出来ないのかな。食べる気力はあるみたいだから一安心。
ふふふ、私がすりこみの対象になるなんて、予期せぬ出来事だったわ!アーサーが喜んでるから、お父様の雛以外は全部アーサーにって思ってたから。
もしかして鷹匠ならぬ鳳凰匠になれちゃうかも?
「わたくしがあげても食べてくれるかしら?」
「わかりませんが、やってみましょう。」
歩く足取りは強くないのに、食欲だけは一人前で、目の前に差し出された香澄様の手からもあっという間に葡萄を平らげてしまった。
「食いしん坊さんねえ。」
空になった手のひらを必死につついている。何にもないんだけどね。
「魔力、食べるかしらね。」
「やってみましょうか。」
「また軽々しくそういうことを!」
「頭が堅いわねぇ。聖女の魔力で育ったのだから大丈夫よ。」
ダスティンの制止も聞かず、香澄様は雛に魔力を与え始めた。
「つついてるわね。」
「たべてますね。」
「なんでかしら?」
「瘴気に侵された生物が浄化されると、聖女の魔力を好むようになる?」
「どうしていままでわからなかったのかしらね。」
「ふつう、まものはとうばつされたあとにじょうかされるの。そのせいではないかしら。」
オリヴィアが疑問に答えてくれた。それなら分からなくても仕方ない。
「異界の乙女は広域浄化で魔物ごと浄化することもあります。」
アリオト侯爵はまだ思案中らしい。腕を組み、顎に手を添えて、雛から視線を逸らさない。
「ですが、そのあとじょうかしたまものをしいくするわけではないのですよね?いきのこったまものは、まものになるまえのせいかつにもどるだけかもしれません。」
「それはそうなのですが……。」
「聖女の魔力は嗜好品ってことかしらね。生きていくのに絶対必要ではないけれど、浄化を受けた生き物にとっては好ましいと感じるのではない?」
「グルメだね〜。たしかにパルとアルテもしょくじはふつうにしてるもんね。」
「では、ひながかえるのにしゅくふくはひつようなかったのでしょうか?」
「それはしらべてみないとわからないけど、アルテがしゅくふくをかけていたのだから、ふかがはじまるトリガーにはなるとおもうわ。たいおんでおんどと、なめてしつどと、てんらんもしていたみたいだし、ふかのためにふかけつなようそだったことはまちがいないんじゃないかしら。」
「鳳凰鳥のたまごはそう見つかりません。検証は難しいでしょうな。」
「初代聖女様以外の記録がないからな。発見されたという記録は既に成体であったし、このように懐いたわけではなく、ただの目撃情報だ。」
「では、このこたちのようにたまごからそだてることはしょだいせいじょさまいらいのことなのですね。」
「そうなります。」
「とにかくだ!無事に全ての雛が孵った!喜ばしいことだ!シンシアも母上も、寝ずに祝福を与え続けてくれて有難う。今日はもうゆっくり休んで欲しい。」
「あら、この子たちの訓練があるのよ。」
「母上が付き添わずとも、もう大丈夫でしょう。昨日など、自分たちで炯眼の理論を発見して、検証しておりましたよ。」
「なんですって!聞いてないわ!」
そういえば、あの時はまだ香澄様は子供部屋にいなかったんだった!アーテル報告しといてよ!勝手なことするなって怒られちゃうじゃん!
「さすがわたくしの孫娘たちね!天才だわ!」
あ、違った。喜ばれてしまった。
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