75 炯眼検証
ダスティン回です。
よろしくお願いします。
「ダスティン。お前、被験者になれ。」
「は?何故私なんだ。」
「いいだろう、いつもヴィオラ様に迷惑をかけているのだから、ちょっとは素直に協力しろ。」
チャールズいいこと言う!まあ、交換日記してるチャールズもチャールズだけど。大変なんだよ、チャールズの交換日記書くの。
渋々床に座ったダスティンは、アーテルと手をつないで魔力交換を始める。魔力交換はリラックス状態にならないといけないから、変化を見るには打ってつけだ。
側から見たら、おじいちゃんと孫がせっせっせしてるように見えるが。
「では、しつもんをはじめてください。」
「ダスティン、最近太ったな。」
「体重は変わっとらん。」
「奥方との記念日、今年も忘れたのか?」
「あれから一度もかかしてない。昔の話を掘り返すな。」
「昔の話の方がネタが多いんでね。」
仲良しさんだね。チャールズはダスティンの弱味も握ってそう。今度聞いてみようかしら。
「ヴィオラ様は大変優秀なお方だな。」
「そうだな。」
「お前は昔から優秀な者を構いたがる癖がある。本人に嫌がられてもな。」
目を閉じて魔力でダスティンを探っていたアーテルのまぶたがピクリと動いた。
「才ある者が力を振るわぬ道理はない。」
「利用するだけして、手柄を横取りするのだろう?」
「そんなことはしない。」
「そうかね。お前は女は政治に関わってはならぬと突っぱねていたではないか。ヴィオラ様の事も、本当は秘匿して功績を自分の物にしようとしただけでは?」
「何を言っている。そうであればお前をヴィオラ様に引き合わせたりはしない。」
「それはそうだな。」
「もっとマシな質問はないのか。」
「だが、動揺を誘わねばならないのだろ?とっておきを出すか。」
アーテルの眉間に皺が寄る。そしてダスティンの眉間にも。
「おい、やめろ。」
「お前、カスミ様にフラれた事をまだ根に持っているんだろう。」
「おい!やめろと言ったはずだぞ!」
わぁ〜、すごいこと聞いちゃった!ダスティンってば、香澄様にフラれてるんだぁ〜!
ていうか、手を離して立ちあがっちゃったよ。チャールズに詰め寄ってる。検証はどうなった。
「俺はフラれてない!」
「そもそも告白にも気付いてもらえなかったんだからな。」
「元々そんな気はなかった!」
「まさか!周囲の者も皆気付いていたぞ?なあ、お前たち。覚えているだろう?まあ、香澄様の炯眼が悪い方向に作用した結果だな。お前があの方に本心を隠して強がり続けるから不審がられたんだ。」
「あの……けんしょうは……?」
ダスティンは咳払いをして、失礼致しましたと呟いた。
「閣下の検証はもう結構ですわ。」
「あれ、アーテル、なにかわかった?」
「心拍と脳波らしきものを調べていたんだけど、幾度か、閣下にとっては無意識に、魔力が集まることがあったわ。そうね、言うなれば、頭に血が昇る?」
なーる。ダスティンはチャールズが出してくる質問を予想している節があった。それは絶対に知られたくないことだったんだな。だから、緊張で心拍が上がったり、質問を止めようとして脳みそフル回転させたりで魔力が動いたのか。
そしてその話は、香澄様にフラれた黒歴史だったってことだ!!
「お前、母上が好きだったのか。」
お父様、そこは触れてはなりません。それではオースティン伯父様と同じです。
お父様は、あぐらをかいて膝にアーサーと雛たちを乗せている。なんだコイツら、かわいいな。
「他の方で検証を続ける?」
「そうしたいところだけど……。」
セプテントリオは同年代の集まりである。お互いにお互いの黒歴史を知っているのだろう。皆、一様に横に首を振って拒絶している。
「チャールズ、ありがとうぞんじます。よくダスティンからどうようをひきだしてくれたわ。」
「お褒め頂き光栄です。」
ダスティンは遠くでクソッ!と悪態をついている。珍しい姿を見れたので、私は超満足です。苦手だったチャールズが好きになりそうだよ。
「いつもこの様に検証されているのですか?」
レナードと兵部卿がいつの間にか側に来ていた。
「そうね。りろんをかんがえて、じっせんし、けんしょうする。しっぱいすることもあるし、ぎじゅつがおいつかなくてうまくいかないときもあるけれど、おばあさまのごしどうのもと、よにんでちからをあわせてがんばっているわ。」
「良いことです。これからもお励みください。」
「ありがとうぞんじます、ミザールこうしゃく。」
「どうぞ、グレゴリーと。」
「ええ、グレゴリー。よろしくね。」
「殿下。お話よろしいですか。」
「メラクこうしゃく。どうなさったの?」
「私もアーネストと呼んでいただいて結構です。聖女学校について、開校時期の御相談を致したくお声をかけさせて頂きました。」
「あら、それはきょかがおりたということ?」
「聖女の教育に関しては神殿に一任されております。ただし十歳から十二歳の学院入学前の三年間ですが。」
「それまでのきょういくは?」
「聖女の血を継ぐ末裔は、母親から御技を学ぶしきたりとなっております。異界の乙女がおわす時代は、王族と公爵家に限り乙女より直接指導を行います。異界の乙女が不在の時代はやはり母親に学ぶことになりますな。」
「それは、わたくしたちがごさいになってからおこなわれるよていだったもの?」
「いえ、まずは魔力の扱いに慣れねばなりませんので、個人差が御座います。」
「がくいんにはいってからは?」
「学院入学前の訓練以上のことは御座いません。其々の得意とする御技の専門性を高めるよう指導はしております。」
日本の医者みたいだな。専門医ばっかりでオールラウンダーの医者が少ないんだよね。
「ドロシーのような、みわざをしゅうとくするのをあきらめてしまうようなかたはぜんたいのどれくらいなの?」
「三割ほど、でしょうか。六割がいずれかの御技を修得し、残りの一割が複数の御技をつかえます。全ての御技を同じように扱う聖女の末裔は記録に御座いません。」
「貴女方が史上初めての使い手になられるでしょうな。異界の乙女にも劣らぬような、素晴らしい使い手に。」
「ふふ。どうかしらね。」
私は別に得手不得手があってもいいと思っている。専門性を高める方針も悪くはない。だが、その専門性の天井が低過ぎる。なんとなく出来る状態では、子々孫々に御技を伝える事は出来ない。
「もしせいじょがっこうをひらくなら、セレンからかえってからにして。しょきせいはわたくしとアーテルでちょくせつしどうするわ。」
「はあ!?」
「だって、ほかのふたりはかえっちゃうじゃない。とっくんがなくなればアーテルはヒマでしょ?まいにちなにするのよ。」
「勉強があるでしょ!」
「それ、いそぐひつようある?ふつうはごさいからまなぶものなのよ?」
「くっ!」
「ははは、アーテル様の負けですな。お引き受け頂き感謝致します。」
「もうっ!お代は高くつくからね!」
「はいはーい。あ、ばしょはどこでおこなうの?」
「普段の教育は王宮北の神殿で行っておりますよ。」
「アストルムだいしんでんでおこなうのではないの?」
「アストルム大神殿は聖地で御座いますれば、出入り出来る者は限られております。」
「アーネストはいつもあちらにいるの?」
「いえ、交代制で管理しておりますので、月の半分はこちらにおります。」
「はじめてしったわ。」
「近いうちに、皆様方も訪れることになるでしょう。その時は私がご案内致します。」
「たのしみにしているわ。」
聖女降臨の地かぁ。私たちにとってはいわくつきだけどね!
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