71 聖女特訓⑧
女性騎士が登場。
よろしくお願いします。
ふんふんふーん。昨日は楽しい一日だったなぁ。トコちゃんの生歌も聞けたし、アルテにも会えたし、鳥の卵もゲットしたし、色々楽しかったー!
アルテは結局私の部屋に泊まって、そう泊まってくれたの!卵をあっためなきゃいけないから(アルテが)同じベッドでってわけにはいかなかったんだけど、おんなじ部屋で寝てたんだ〜。起きたら猫がいる幸せをかみしめる。くぅぅーッ!
私が寝た後、食事とはばかりに何回か部屋を出たらしいんだけど、すぐに戻ってきたんだって。不寝番の騎士の人が教えてくれた。前は侍女としか話さなかったけど、最近は騎士団と色々やってるから、騎士の人とも話すようになったの。産まれた時からずっと守っていてくれてたのにね。
レナードとの交換日記で知ってたんだけど、とうとう魔力増量訓練の話が騎士団内で発表されて、訓練が始まったそうで、日替わりでやってくる不寝番の近衛騎士に質問されたり、アドバイスを求められたり、寝る十分前くらい少しお話したり、魔力交換したりするんだ。
下の階のみんなの部屋でも同じことしてるらしくて、今、私たちの部屋の不寝番役が第一師団内で争奪戦らしい。
こちらには、こうやって日頃から恩を売っておけば、何かあった時に味方してくれるんじゃない?っていう下心もあるんだけど。
「おはようございます、って、アレ?パル?」
「ゆうべ、こちらへ泊まったのですよ。わたくしのベッドで休んだのよね、パル。」
「いっ、いいなぁ〜。」
心の声がもれた。ドロシーに咳払いをされてしもた。アルテもひとりでは寂しかろうと箱ごと連れてこうとしたら、ソウジャナイと顔をぐいーと脚で押されて拒否られた。ぐすん。
アーサーが鳥の卵に興味津々で、箱の前にべったり貼り付いて離れない。しっぽでアーサーの頭をペシペシしたり、爪を出さずにおててでアーサーの鼻をチョイチョイしたり、アルテは卵をあっためついでに子守りしてくれている。
なんてステキな乳母なの!とお母様は喜んでおられた。ついでに私も喜んだ。誰か私にカメラをくれ。
騎士団の訓練が始まってから魔力交換は省かれたので、まずは朝イチ転移棟へ。毎日欠かさずアイザックさんが来てくれてるけど、大丈夫なのかしら。
「アイザック、おやすみはとってる?わたくしたちにまいにちつきそわなくてもよろしいのよ。」
「皆様がいらして下さるのに、お出迎えしない訳には参りませんよ。」
「でも、ごかぞくがしんぱいなさるのでは?」
「ご心配有難う御座います。大丈夫ですよ。来月にまとめて休みを取ることになっているので。」
「それでも、はたらきづめはよくないわ。」
「毎日朝から晩まで働いてると記憶が曖昧になるのよね。季節感どころか曜日感覚もなくなるし。」
「それは働き過ぎでは……。」
アイドル時代の話かな?
「さすがに記憶が曖昧になるほど働いておりませんのでご安心を。」
転移陣への魔力供給をサクッと終わらせて外に出ると、パルは昨日帰らなかったからか貯蔵庫の方へ向かって行った。ねずみ獲りのお仕事があるんだもんね。がんばって!
「そういえば、卵ってどうしたの?」
「アルテがあっためてる。」
「今も?」
「たぶん。よなかもなんかいかへやをでてったけど、すぐもどってきてたってふしんばんのきしがいってたよ。」
「ふうん。母性本能なのかしら?」
「でも、ねこはたまごをうまないわよね。」
「生きてるのが分かるのかもね。不思議な猫だし。」
そんな話をしていたら、あっという間に騎士団に到着。今日は第一師団、つまり、近衛騎士の訓練だ。王宮警護と要人警護が主な仕事で、私にもそのうち専属騎士が付けられるそうな。そんでもって、見目麗しい騎士が多い。女性騎士は基本的に第一師団勤務になる。
女性王族の警護に回したいからなんだって。他の師団希望の人もいるんじゃないかなぁ。その辺の壁もなくしていければいいのに。まあ、こっちからしたら、女性の方が安心ってところもあるんだけどさ。
「お願いします!」
顔中土だらけの女性騎士がやって来た。今日の怪我人第一号だ。
「こちらへどうぞ。」
治療を終えると、聖女の御技を初めて見たのか、すごく感動されてしまった。
「有難う存じます!これでまた戦えます!」
「おきをつけていってらっしゃいませ。」
「はい!オースティン様をぶっ飛ばして来ます!」
え、そういう感じなの、やっぱり。ドロシーから溜息が聞こえる。
「あれはわたくしの母の妹の子のステファニーです。」
「つまりいとこ。」
「ええ。」
「ということは、かのじょもせいじょのまつえいってこと?」
「左様でございます。ですが、あの子はわたくし以上に出来が悪く、魔力量だけは多いので騎士になったそうです。」
「とってもいきいきしてたけれど。」
「そうでしょうね。強い方と戦うのが趣味という困った子なので。」
「ごれいじょうとしてはちめいてきだけど、きしとしてはつよさをもとめるのことはよいのではないの?」
「婚期を逃します。」
「ああ、そういう……。」
ステファニーは華奢で可憐な見た目にそぐわぬパワータイプのようで、猪でももうちょっと考えるよってくらい猪突猛進だ。攻撃パターンも少ない。
「ああもう!あの子ったら!」
あらあら、伯父様に吹っ飛ばされてるよ。女の子にも容赦ないね。同僚の騎士に支えられてまたやって来た。
「何度近付いても吹っ飛ばされてしまいます。」
「まっすぐつっこんでいってるのだからとうぜんでは?」
「戦闘が始まると標的以外目に入らなくなって他に気が回らなくなるのです。何とかオースティン様に一太刀入れたいのですが……。」
へちょっと垂れてしまった犬耳の幻覚が!美少女に犬耳!
「ぶつりこうげきでとばされるの?まほう?」
「どちらもです。」
「まずはしょげきをかわしてください。」
おん?オリヴィアが急に話に入ってきた。
「それが出来ないのですが……。」
「それはあなたがぜんりょくでつっこんでいくからです。スピードははんぶん、いえ、さんぶんのにくらいにおさえてください。しょげきをよける。それだけをかんがえてください。」
「それだけで良いのですか?」
「ええ。けんのこうげきのときは。そのあと、ほかのかたたちにこうげきをたたみかけるしじをしてください。きしにはしゅうだんのりがあるのです。すきがつくれないわけがない。だれかがひとたちいれればよろしい。まほうこうげきのときは、ゆびさきからこうげきをはなっています。あなたがけがをするかくごがおありなら、おとうさまのゆびをつかんでください。あなたはおとうさまののばしたうでのギリギリまでちかづくことができていました。ゆびをつかんだら、こちらからませきにまりょくをながしこんでおとうさまのてをつぶすのです。てぶくろはまりょくをつたえやすいようひょうめんかこうされていますが、しんとうもしにくい。そして、ねつによわい。ひのませきがよろしいかとおもいます。」
「初撃を避ける……指を掴む……。」
「それでダメならまたこちらにいらしてください。たいさくをかんがえましょう。」
オリヴィアは一度もステファニーを見ずに語り合えた。ずっと治癒をかけながら喋ってたよ。他の治療されてる騎士もドン引きだ。
「あなたがたのこうげきはおきれいすぎます。てきをこうげきするのはぶきであるひつようなどありません。そのへんのすなでもめにぶつけなさい。めいよではなく、しょうりにこだわりなさい。こうげきはどろくさくとも、かしこくたたかうのです。いしころひとつ、かぜのひとふきでもフェイントになります。さあ、おいきなさい。そして、わたくしにやくそくなさい。ぜったいにかつ、と!」
「「「「イエス、マム!」」」」
治療を受けていた騎士は訓練場に戻って行った。え、どうしたの。オリヴィアさん何があったの。
「昨日のアレ、まだ尾を引いてるのね。」
「え、どうしたの?なにかあったの?」
「いやだわ、ヴィオラさま。ただのおやこげんかですわ。」
おほほほほ、とお上品に笑ってるけれど、恐ろしいのですが。
「オリヴィアのいえではたまにあるの。おきになさらないで。」
スカーレットがそう言うなら、まあ、いいかな?
お、ステファニーがオリヴィアの指導に従って、スピードを落としてる。横なぎに払う剣をしゃがみこみすんでで避け、逆手に持ち替えた剣で伯父様の脇腹を狙う。でも、失敗。左脚で蹴っ飛ばされて転がってしまった。
その間にオリヴィアに治療されていた騎士が伯父様を取り囲む騎士に何かを伝えてるのが見えた。一気に畳み掛けるんだろうか。
ステファニーは立ち上がった。伯父様を取り囲む騎士の外周で跳躍。以前見学の時に見たように空を蹴り、伯父様から見て10時の方向から突進していく。さっきよりはスピードがある。主に魔法を使う左手側だ。伯父様は剣をどちらの手でも同じように振るえるので注意が必要だけど、他の騎士が伯父様の右手側に攻撃を集中させている。
気付かれた!魔法で攻撃を放とうと魔力を腕に巡らせる。攻撃を発射する直前で、ステファニーが振りかぶっていた剣から手を離し、振り下ろす勢いで伯父様の手を両手で掴み、自分の魔力を込めた。
ボン!という音がして、伯父様の左手から煙が上がる。多分手袋の布が焼けたんだろう。焼けたっていうか、溶けてる?化学繊維みたいだな。さぞ熱かろう。
ステファニーは伯父様に頭突きされて、脳震盪を起こして運ばれて来た。美少女に容赦なく頭突きする伯父様、強い。
乱戦はまだまだ続いてるけど、ステファニーは大事をとってここで戦線離脱することになった。伯父様と同じように焼けた手の治療をスカーレットが施している。
「や、やりました、オリヴィア様……一矢、報いましたよ……。」
「あっ、むりしないで!のうしんとうおこしたばかりなんだから!」
ステファニーが起き上がろうとするのをスカーレットが止める。
「ステファニー、よくやったわ。」
あ、名前ちゃんと聞いてたんだね。傍に立ち、火傷の治った手を握って武勇を誉める。
「オリヴィア様……!」
えっ、なにこれ?なに見させられてるのこれ?大丈夫これ?
よく分かんないけど、ま、いっか!!
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