6 悪役令嬢のお散歩
王宮は広大です。幼児はぐずらずに歩き回れるのでしょうか。
「みなさまはじめまして。わたくしはゔぁいおれっと・さら・えりざべす・ゔぃくとりあ。きょうはおあつまりいただきありがとうぞんじます。みなさまにおあいできてうれしいわ。たのしんでいってらしてくださいね。」
お母様のご挨拶から引用して、がんばりました!風を装う。隣のお母様をチラリと見上げると、ちょっと驚いてる。目が合うと笑ってくれた。王女故に謙った話し方はあんまりよくないかなと思ってさ〜、さじ加減が難しいね!
次は弟の番。心の中でいっぱい応援しなきゃ!
「わたしはあーさー。みなのもの、よろしく。」
うんうん、王子様はこれくらいでいいよね!ホッとした顔もかわいい!お母様もアーサーを見て安心した顔をした。教わった通りに出来てよかったね、アーサー!
まず主催のお母様がお菓子とお茶を召し上がり、お客様にも勧める。子どもも一先ずティータイムだ。フレッシュジュースだけど。一通りジュースとお菓子を堪能したくらいで、男の子たちはソワソワし始めた。おもちゃが気になるみたい。お母様も気付いて声をかけた。
「あちらで遊んでいらっしゃい。みんなで仲良くね?」
控えていた侍女に椅子から下ろしてもらって、子ども全員プレイスペースに移動した。男の子たちは各々好きなおもちゃを手にして遊んでいる。
貴族の子は普段歳の近い誰かと一緒に遊ぶことはしないので、みんなで何かして遊ぼうみたいな空気にはならない。そもそもまだ二歳だし。
お母様たちはママ友会よろしく、育児についての話を始めた。
特におもちゃであそびたいわけじゃないし、どうしようかな。
気付くと悪役令嬢四人で横一列に並んでいた。
左隣のオリヴィアちゃんは男の子たちにひとりずつ視線をやって、はわわ〜という感じに両手で口元を覆っているが、にやけ…ゆるんで…あれ?よだれ…いや、喜びを隠しきれずに笑っているって言っとこうかな……彼女の名誉のために……。
そのお隣のスカーレットちゃんはお行儀よく立ってるんだけど、目線はジョエルにロックオンされていて、ずっと動きを追っている。この素晴らしい光景を目に焼き付けよう!という意気込みを感じる。
私の右側に二人分くらいの間を空けて立っているアーテルちゃんはアーサーを見つめていた。いや、睨んでる!?なんで!?こんなに天使なのに!?
あ、もしかして、アーテルだけはもうアーサーの婚約者に内定してるのかな?なるべく聖女の血を濃く残したい王家にとって、彼女は絶対に逃したくない。いずれ聖女が召喚されても、アーサーを選ぶとは限らないもの。
ちなみに、基本的に王家と三公に囲い込みされる聖女なんですけれども、他家の人と結婚したこともあるそうで。条件がその子どもは全員王家と三公に嫁入り婿入りさせること!
爵位ある家の後継ぎが相手の場合は、親戚筋からその人が養子を取ってお家を存続させるらしい。徹底してるなぁ。
王家がその聖女を恋人と引き離して無理矢理王族と結婚させようとしたら、自然災害が多発したんだって。それで、聖女に無理強いすると神がお怒りがなるってことで、こういう妥協案というか折衷案が出来たらしい。
騒動のせいで国民からの求心力が落ちた王家は法律にきちんと盛り込み、実際にその後も何回かそういうことがあって、ちゃんと履行されたとのこと。
ってアニメで言ってた!多分合ってる!
アーテルちゃんはずっとアーサーを睨みつけていた。私もしばらくアーテルちゃんを観察していたんだけど、動かない私たちにお母様の侍女が声をかけてきた。
「みなさま、おもちゃで遊ばれないのでしたら、絵本をお待ちしましょうか?紙芝居もありますよ。」
「いえ、けっこうです。」
スカーレットちゃんが即答する。目線はジョエルから外さない。オリヴィアちゃんも頷いている。将来のお婿さん候補を観察したいのかな?
公式ではスカーレットちゃんのお相手がバーナード・ロセウス、オリヴィアちゃんのお相手がジョエル・ウィリディス、私のお相手がエドワード・カエルラだ。でも、私が希望を言えば変わるかもしれない。正直、相手が子ども過ぎて選べないけど。
「それでは、お庭をお散歩されてはいかがですか?薔薇が満開で美しいですよ。」
王宮の薔薇園は春と秋に一般開放される。一般と言っても貴族だけなんだけども。社交界の時期のデートスポットとして有名だ。そして、
「まあ!おしのびでーとのぶたいのばらえんですわね!ぜひはいけんしたくぞんじます!せいちですもの!!」
ありゃ、オリヴィアちゃんが食いついた。
「そうですわね、おうきゅうはせいちがたくさんありますもの。わたくしもまいります。」
スカーレットちゃんも薔薇園に行きたいらしい。
オリヴィアちゃんとスカーレットちゃんは元から知り合いなのかな?三公同士だからおかしくはないけど。あと、せいちってなんのことだろ?
「殿下はどうされますか?」
いつもなら名前で呼んでくれる侍女だが、人前だからか敬称呼びだ。
「わたくしもごいっしょするわ。アーテルさまもいかが?」
誘わないワケにはいかないよね。男の子たちとは一緒に遊べないけど、一応、女の子同士では交流しておきたい。ゲームやアニメでもこの四人は常に行動を共にしていた。
ずっと怖い顔をしていたアーテルちゃんはいつの間にか淑女の笑みに変わっていた。
「ええ、ぜひ。」
用意されていた帽子を被り、それぞれの侍女を伴って庭に出た。みなそれぞれ日傘を差してもらっている。淑女は日焼けしたらダメなのよ!
薔薇園は芳しい香りに包まれていた。私はたまにお母様とお散歩するので見慣れているけど、みんな一様にその美しさに感動している。あ、アーテルちゃんはずっとおすまし顔です。鉄壁の女アーテルと呼ばせてもらおう。
私たちは純白の薔薇が絡まるパーゴラへと着いた。この薔薇は王家の紋章のモチーフにもなっている。王家の紋章は獅子と薔薇なのです。聖女と英雄の象徴だそうです。
オリヴィアちゃんとスカーレットちゃんはコソコソと何やら盛り上がっている。会話はよく聞こえないけど、せいちについて熱く語り合っているようだ。
ここは迷宮庭園になっていて、中央のパーゴラはゲームにも出てくる。ヒロインと攻略対象の秘密の逢瀬、愛の告白、プロポーズは全てこのパーゴラで起こる。他にもいい場所があるのに、どうしてここばっかりなのかしら。背景使い回ししすぎじゃない?
「だから、ここでジョエルがヒロインを抱きしめて……」
「でも、エドワードの涙ながらの告白も……」
ん?あの二人、もしかして、ゲームの話してない?どちらもスチルで見た光景だ。アーテルちゃんも、驚いた顔をして二人の方を見ている。
あれ?もしかして、せいちって、聖地のこと?
じゃあ、二人とも、いや、アーテルちゃんも転生者?悪役令嬢、全員転生者!?
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