53 悪役令嬢の計画書
ダスティンと密談です。
午後は、スカーレットとオリヴィアの引っ越し?があるので、昼食が終わって解散となった。私はアーサーと遊びます。遊ぶったら遊ぶの!
「アーサー!」
はぁぁぁぁ、何も考えずにアーサーと一緒にいるの久しぶり過ぎる!ギュウと抱きつくと、何故か目が点になっていた。
「ヴィオ?」
「アーサー!」
ああん、もう、言葉が出てこないよ!ウチの弟は世界一かわいい!ハニーブロンドの髪を梳くように撫で愛でる。ヨシヨシ、いい子いい子。
「アーサー、なにしてあそぶ?」
「つみき、しよ!」
「そうしましょう!」
アーサーは積み木をひたすら高く積み上げ、倒して遊んでいる。何が楽しいのかサッパリだけど、楽しそうだから良し!積み上げの手伝いは拒否られてしまった。自立心があって良し!
私は何作ろう?ついでにダムの構造でも考える?いや、でも、アウルム国内に作ったんじゃ意味ないよなぁ。地図ないと分かんないんだけど。誰か地図プリーズ!って、後でダスティンに頼むか。現地調査とか行かされそうで怖い。
ホント、とんだパワハラ上司だよ。あれ?権力は私の方が上なんじゃないか?じゃあ、児童虐待だ!!
「アン、わるいけど、なにかかくものあるかしら?」
渡されたのは、お絵描き用の紙とクレヨンだった。蜜蝋クレヨンで小さな子でも安心だよ!
サラサラと、はいかないけど、この後ダスティンと話すことを書きつけて行く。うーん、クレヨンだと字が描きにくい。
「ヴィオラ様、字をお書きになれるのですか?」
そういや、この世界に来て字を書くのは初めてかも。少し変形してるアルファベットなだけで単語の綴りは変わらないから、普通に書けるんだけど。
「えほんをみておぼえたのよ。」
「絵本ではこのような言葉は出てこないと思うのですが……?」
いくつかの言葉が気になったようだ。口語は日本語だから、発音から綴りを推測するという言い訳は使えない。
「まあ、いいじゃない。わたくしはてんさいなのよ。これくらいできてとうぜんよ。」
「ふふ、今日もセプテントリオの方々に言われておりましたものね。」
冗談だったんだけど……まあ、いっか。
「こんなものでいいかしら。」
いつの間にか昼寝の時間になったようで、アーサーと一緒に昼寝をし、あっという間にダスティンと会う時間。さっき書いた走り書きを(デイジーの)片手に、当然の如く抱っこ移動です。
何気に宰相の執務室って初めて。場所はお父様の執務室のお隣だった。お隣と言っても、部屋が馬鹿デカいから、この前連れ込まれた会議室とは反対の仮眠室側、になるのかな。
お父様の執務室と余り変わりのない作りで、補佐官用の机はあるけど、ダスティン以外誰もいなかった。気を利かせてくれたのか、たまたまなのかは分からない。
「お待ちしておりましたぞ。」
「いそがしいところじかんとってもらってわるいわね。」
ダスティンと話す時は猫いらずだから正直楽だわぁ。お風呂は先に入ってきたから、夕食までの時間は話し合いだ。何から話そうかな。
「いえ、こちらもご報告したいことがありましたので。」
「なにかしら?」
「専属侍女の人選が進んでおりません。しばらくお時間をいただいても宜しいですか?」
「ああ、それね。はやいほうがもちろんいいのだけど、それについてはこちらからはなしがあるの。これみて。」
「王宮託児所の計画書、で御座いますか?」
「そう、たくじしょをつくりたいの。こどものめんどうをみてくれるひとをやとえなくて、たいしょくをえらばざるをえないじじょがおおいときいたのよ。でも、けっきょく5さいからのべんきょうはかていきょうしをやとったりするのでしょう?それなら、おうきゅうでひとをやとって、きょういくをほどこすというのをウリにしたら、いちどたいしょくしたじじょをやとえるんじゃないかとおもって。にっきんだけになってしまうけど。どうかしら?」
「予算はどこから持ってくるおつもりですか?」
「なんまいめかにかいてあるけど、たくじしょのしようりょうきんをふくしょくしたじじょのきゅうりょうからてんびきでよいのではないかしら?がっこうのようにおとなひとりでふくすうをみることになるから、きょうしのかずはこどものかずよりすくなくてだいじょうぶよ。ひようも、かていきょうしだいをなんにんかでわるから、ふつうにじたくでかていきょうしをやとうよりはおとくだわ。」
「まあまあですな。」
「ていうか、このくにのきょういくってきぞくですらかていまかせなわけ?おばあさまのこきょうではぎむきょういくといって、ななさいからしゅうだんでがっこうへかよわせてまなばせるのよ。ほぼむりょうでね。」
「左様で御座いますか。教育に力を入れておられる国なのですね。」
「ちがうわよ!けいざいてきによほどひんこんなくにいがいは、あちらのせかいぜんたいそうなのよ。へいみんだってあたりまえにきそきょういくをうけるの。それをうけるのはこくみんのぎむであり、きょういくのきかいをあたえるのはこっかのぎむなのよ。」
「平民も?」
「へいみんも。きょういくは、みぶんのきせんなく、すべてのひとにうけさせるべきよ。こくりょくをきょうかするのにがくもんはひっすだわ。」
「壮大なお話ですな。」
「すぐにはできないのもわかってる。とりあえず、そっちのはなしはいいの。たくじしょのはなしよ。おかあさまのじじょだってたりてないのだから、しんらいできるじじょをそだてるのってたいへんだとおもうのよ。さいこようならきょういくもひつようないし、いいとおもわない?」
「一理ありますな。」
「なんだかはんのうがうすいわね。もんだいでもあるの?」
「王宮内に、身元がはっきりしているとはいえ、子どもを入れるのがどうも。」
「きぞくがいにつくるのはダメなの?べつにおうきゅうのなかにつくらなければならないわけではないわ。」
「貴族街もそこそこ広いですぞ?」
「うーん、いえがとおいひとはそうげいばしゃをよういする?りっぱなばしゃでなくていいの、のりあいばしゃみたいなもので。」
「後は教師の当ては?」
「ぜんぜんないわ!あるわけないじゃない!でも、フリーランスでおしえるよりはくいっぱぐれなくていいんじゃないかしら。」
「まあ、考えてみましょう。退職した元王妃付きの者が何人かおります。そちらから当たって、人数が揃えば話を進めましょう。」
「ほんとう!?」
「施設そのものや必要な人員は?」
「ええと、さんまいめをみて。たてものは、きょうしつとしょくいんしつがあればいいの。にんずうがおおければねんれいごとにクラスをくぎりたいところだけど、すくなければおなじきょうしつで。あ、でも、おひるごはんもだしてあげたいから、ちょうりばはひつようね。うんどうするためににわがあるとなおいいわ。きょうしは、あつまるこどものねんれいとにんずうにもよるけど、こども30にきょうし1でいいんじゃないかしら。まりょくくんれんもやるなら、きょうしひとりがみるこどものかずをへらしたほうがいいかもしれないけど。あとはきゅうしょくのちょうりをするひとと、そうげいばしゃのぎょしゃ?ざつようもいっしょにやってくれるといいわね。」
「なるほど。他は?」
「ごまいめのちゅういてん。こどもはびょうどうにあつかいます。しょくばのじょうげかんけいをこどものしゃかいにもちこまない!したのみぶんのこがいしゅくして、のうりょくをのばしてあげられなかったら、きょういくをほどこすいみがないわ。けんかとかもあるだろうから、そのへんをりかいしてくれるおやでないといけないわね。ただ、たくじしょのうんえいじょうのふびでけがをしたばあいは、こちらがわでせきにんをもってほしょうする。ここはだいじね。」
「怪我をした場合の治療費を負担すると?」
「そう。そういえば、このくににはほけんせいどはないわよね?じぜんにつみたててもらって、じっさいにけがやびょうきになったときに、いりょうひはこちらでふたんするってせいどがいかいにはあるのよ。」
「それは運営する側の不利にはなりませんか?」
「ほけんにはいったとたん、いっきにたくさんのひとがびょうきやけがになったりするとそうなるわね。でも、めったにそんなことにはならないわ。あ、そういえば、かぶもないわよね。こくさいははっこうしてないのかしら?」
「かぶ?こくさい?」
「あら、だっせんしすぎたわね。いまはいいわ。」
「そちらの方が気になるのですが。」
「またこんどね。わたくし、このくにのぎょうせいのことをなにもわかっていないのだもの。どれがつかえて、なにがあわないのか、はんだんがつかないわ。」
「そろそろ教師を付けましょうか。」
「ちょっと!これいじょういそがしくしないでよ!これからせいじょくんれんもはじまるんだから!」
「では、一ヶ月後までに人選を済ませておきましょう。」
うぉい!結局やるんかい!いやでも、なし崩しでも関わるって決めたのは自分だからなぁ。二歳児にこんな働かせるなんて、アウルム王国、超絶ブラック国家じゃん!
「どんだけはたらかせるきよ……。」
「貴女が仰ったのでしょう?教育を与えるのは国の義務だと。」
「まだ2さいなのよ!?あちらのぎむきょういくは7さいから!たいりょくもたないわよ!」
「午前と午後で二時間ずつ。講義を行いましょう。基礎教育は必要ありませんな?」
拒否権なしか!チクショー!
「こくごじてんはよういして。たんごのつづりがわからないものもすこしあるから。」
「かしこまりました。こちらはお預かりしても?」
「いいわよ。どうするの?」
「清書して審議にかけます。侍女長から再雇用に適した人材に声をかけてもらいます。」
「よろしくね。あ!そうだ!おかあさまつきのじじょのほじゅうができるなら、デイジーをわたくしのせんぞくにまわしてほしいの!」
「ええっ!?……と、申し訳ございません。」
デイジーが両手で口を押さえた。こういうところがアンに教育が足りないと言われてしまう所以だけど、そこがデイジーのかわいいところでもある。
「彼女を……ですか?」
「プライベートでもねこをかぶらないでいられるじかんがほしいのよ。」
「猫は野良猫か他の飼い主が出来たのではなかったのですか?」
「うぐぅ、これからはまたちゃんとするわよ。あさのアレでこんきがとおのいたきがするんだから。」
「殿下の婚約者も決めねばなりませんな。」
「しょうじき、のりきがしないのよねぇ。だって、みんな、こどもじゃない。」
デイジーが笑いを堪えるのが分かった。アンに言いつけちゃうぞ!知らないだろうけど、中身はデイジーより大人なんだからね!
ダスティンも呆れ顔だ。私とデイジーのどちらに呆れているのかは分からないけど。
「それでもいずれは決めねばなりませんよ。」
「せいじょのちをのこさなきゃならないからね。って、そんなかおしないでよ。ちゃんとわかってるの。いちおう。あたまではね。」
「どのような顔をしておりましたか?」
「なんか、ビミョウなかお。」
「失礼致しました。」
「わたくしはいつかはアーテルとこうたいでオリエンスこうにならねばならないのでしょう?」
「その予定ですな。……王位をお望みですか?」
「まさか!わたくしのじんせいのもくひょうはアーサーをりっぱなおうさまにすることよ!」
「欲のない事だ。」
「そもそもおんなはおうになれないのでしょ。」
「厳密に法で決まっているわけではありません。」
「えっ、そうなの?」
「ただの慣習です。聖女の末裔は御技の行使などの負担が多いので。」
「えいゆうたるしそさまがおとこだから、ではなかったの?」
「そのように言い伝えられておりますがね。三公の政務も、配偶者と分担して行っております。王妃は聖女と、聖女の末裔の象徴ですからね。我々が守るべきものの象徴でもあります。年に一度の祭事でも、聖女の役割は異界の乙女がいない場合、王妃の仕事ですから。今年はカスミ様にご臨席はいただきますが、お身体の具合がよろしくないので、国民に祝福を授けるのは王妃殿下に行っていただきます。」
「だからおばあさまはおうとにのこられたの?」
「左様です。あとは、治療のためですが。」
「ちりょう?あしのこと?おばあさまのあしをなおせるせいじょのまつえいはいないの?」
「聖女のみがかかる病があります。身体の自由が徐々に利かなくなるのです。聖女は皆、七十の齢で人生を終えます。カスミ様の発症はいささか早い。十年ほどで、ゆっくりと、身体の自由を奪われていくはずなのですが……。」
「そうだったの……。」
「これはカスミ様には悟られないようにしてください。異界の乙女本人には伝えられないことですので。」
「わかったわ。」
寿命が分かってるって、どうなんだろう?普通は嫌、なのかな?70歳だなんて、日本人の平均寿命より短い。受け入れられないかもしれないよね。でも、こちらの世界の人はみんな知ってるみたいだから。
ゲーム通りなら、次代の聖女がやってくるまではカスミ様はご存命のはず。聖女に御技を教える役目だから。途中で亡くなるなんて描写もなかったと思うけどなぁ?
聖女だけがかかる病、ねぇ。聖女の御技を分析したら、なんか分かるかな?まずは治癒を使えるようにならなきゃだけど。道のりは遠いな!
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