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悪役同盟!〜同じ事故が原因で転生した4人の悪役令嬢は同盟を組んで断罪を回避したい!〜  作者: 里和ささみ


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49 魔力操作試験②

具現化です。

 セプテントリオの面々が来ていることを鑑みて、導き出した結論がある。これ、すぐにでも聖女の御技の訓練を行うのは既定路線なんじゃない?


 御技を使える者はセプテントリオにもいる。というか、王国の長い歴史から考えて、聖女の末裔は普通の貴族の中にもそこそこいるんだと思う。流石に平民には流れてないと思うけど。


 ただ、御技を使える遺伝子を持っているのと、実際に御技を使えるかは別だ。最大の壁は知識だろう。聖女のメインのお仕事は浄化と治癒だ。香澄様は、治癒は繊細な魔力操作が必要だと言った。

 そして、最大の壁は知識。医学知識がなければ、治癒は出来ないと見た。いや、人体の構造を分かっていないと、と言い換えた方がいいかな?臓器の場所、臓器の役割、骨格と筋肉の造り、これらは日本では義務教育中に学ぶ基本的な知識だ。朧げでも、その知識があるとないとでは、イメージの仕方が違うだろう。


 浄化に関しては、見たことがないので分からない。炯眼も謎と言えば謎だけど、嘘発見器みたいなモノかなって思ってる。嘘をついてる時と、正直に話している時の脳波の違いみたいなものを感じ取るのかもしれない。

 豊穣祈念も、理科の範囲内と言える。植物が育つ必須要素である窒素とリンとカリウムのことを理解していなくても、肥料の作り方とかは分かると思う。


 異界の知識を15歳で召喚される少女が詳細に説明するのは困難だろう。魔力の扱い方に関しても、当時理解してもらえなかったということは、他の知識も同様と見ていい。


 その点、私たちは元々異界の住人。召喚聖女と同等の知識と、イメージがある。そして、ダスティンはそれを知っている。純粋な召喚聖女まではいかないかもしれないが、今までの聖女の末裔以上の働きが期待出来ると思っているだろう。


 セプテントリオを呼んだのは、恐らくダスティンだ。どう考えても、私たちの魔力操作は普通の大人以上。魔力量も豊富。その上、本人たちも訓練を希望している。ならば、わざわざ先に進もうとするのを止める必要はない。

 セプテントリオは、お父様とオッキデンス公を説得するために連れて来たんだな。全員が重要な役職に就いてるし、政治は合議制で行われていると聞いた。いくら国王と三公でも、彼らの意見は無視出来ないだろう。


 なるほどね。よくやったわ、ダスティン!


 目が合ったので、レナードよろしくバチン!とウインクを決めたら、眉間に山脈を築かれてしまった。調子に乗ってスミマセン。


「では、これからは訓練を通して出来るようになったことを披露して貰おう。」


「その前に、わたくしからよろしいかしら?」


 香澄様が微笑んでおられる。あの、鬼気迫る微笑みだ。やってやるぞ感がすごい。何を言う気だろう。


「訓練の一環として、この子たちに純魔石へ魔力注入をしてもらいました。その数、千個。アーテルも入れてですけどね。こちらを王宮に贈呈致します。魔力を限界までぎっしり詰めてありますから、普通の純魔石よりも長持ちするはずよ。そうね、照明なら一個で一年は持つんじゃないかしら。」


 そうなのだ。昨日の朝、最初に魔石に関しては全員が合格を貰ったのだ。移動中も護衛の騎士にいくつか持っててもらって、道中は魔力を魔石に詰め詰めしていたのだ。時間を無駄にしてはならないという香澄様の信念のもとに指示を出されていた。スパルタ教育、ここに極まれり。

 アーテルもやってたってことは、ひとり250個かぁ。よく頑張ったなぁ。限界まで詰めたってことは、普通の人は限界まで詰められないのかな?それなら私の、身体に魔力の飽和量がある説と魔力分子が小さくなれば大人でも魔力増える説の信憑性が高まるなぁ。

 あのサイズの魔石、普通ならどれくらい持つんだっけ。セプテントリオの騒めきからすれば、かなり持つんだろうけど。不合格石も混ざってるから、実際はそんなに持たないと思うけどね。


「分かった。有難く受け取ろう。」


「それでは、これから魔力球をみなさまにご覧入れましょう。」


 二歳の子供が魔力球?と本日初対面のセプテントリオたちは訝しんでいる。ダスティンは普通、レナードは何故かドヤってる。

 なんでレナードがドヤ顔するんだ。でも、それくらいなら出来て当然、みたいに思ってくれてるのは嬉しいかも。香澄様の師匠だもの、賛成派の急先鋒になってくれるはず!


「さあ、始めなさい。」


 私たちはそれぞれ魔力球を作り出した。合格を頂けなかった課題だけど、二歳児が作れること自体がおかしいんだから、インパクトは大きいはず。お父様は知っているから(私が教えちゃったんだけど)驚いてはいないけど、難しい顔をしてる。余りしない表情に、不安を覚える。

 終わったら、よく頑張ったねって褒めて欲しいな。子どもらしくいて欲しいというお父様の想いを無碍にすることとは分かっているけど、認めて欲しい。為政者としての判断じゃなくて、ただの父親として。


「もう結構よ。」


 香澄様は(どよ)めきに満足したらしい。近衛の騎士までが声を漏らしている。

 多分、御技の訓練でも魔力球はやると思うんだよね。これが完成して初めて、御技を正しく使えるようになるんだと思う。カスミズブートキャンプは騎士の訓練がベースだけど、求められるレベルが違う。それは全ては聖女の御技のため。


 御技訓練は既に始まっていたのだ。


「ふむ。なかなかの熟練度ですな。合格とまではいかないが。」


「いや、充分だろう。確かにバランスは悪いが、魔力球自体は新人の騎士ですらここまでの完成度には至らない。」


 うーん、軍務関係の二人には見抜かれたか。私とスカーレットは両手の魔力量が違うからね。両利きにするための訓練とするならば、私なんか絶対に不合格だ。試験官のみなさんは、私たちが二歳児であることを念頭に置いて欲しいよ。

 その辺はオリヴィアが本当に上手い。これで運動神経も良かったら、そこらの騎士には絶対に負けないと思うな。


「母上。次は何を?」


「では、無詠唱の具現化を。」


「なんだって!?」


「無詠唱!?」


「媒介はなしよ。」


「そんな、不可能です!」


「それこそ、異界の乙女にしか使えない技ではないですか!」


「聖女の末裔では出来ないはずです!」


「理論さえ解れば貴方方にも出来ます。後でお試しになってご覧なさい。」


「その理論を、二歳の子どもが理解していると?」


「そうよ。貴女たち、頭の堅い大人を黙らせて差し上げて。」


「は、はい。」


「かしこまりました。」


 スカーレットとオリヴィアは香澄様の戦闘モードに戸惑っている。叩きのめしてやんよ!って感じだもんなぁ。香澄様って、ほんっっっとうに見た目と違って武闘派だわ。

 召喚聖女は、聖女の御技と魔力だけで出来ることはやれる。何故か聖石以外の魔石との親和性がなく、魔法が使えない。


 ってことになっている。嘘くさいなぁ。ホントかなぁ。あれだけの魔力量を持ってるのに。ちょっと疑問。

 ちなみに聖石は聖女や聖女の末裔が魔力を込めると浄化作用があるとのこと。それ以外の者が込めた魔力はただ貯め込むだけで、純魔石とさして変わらないらしい。謎だ。


 あ、そだ。二人は水の具現化だけど、私だけ違うことやるから順番は最後にしてもらおっかな。インパクト勝負したいならその方がいいはずだ。


「おばあさま、わたくしはさいごにしたほうがよろしいですか?」


「ええ、そうしましょう。ド派手にかましておやりなさい。」


 優美な微笑なのに、お上品さが裸足で逃げ出している。


 ド派手にかますとか、聖女が言ったらアカンやつ!


「まずはスカーレットとオリヴィアの水の具現化からよ。始めなさい。」


 まずは手のひらを全員に見えるように掲げた。タネも仕掛けもありませんって、手品みたいだね。

 前に差し出した右手に、ポツポツと水滴が集まっていき、やがてひとつになった。昨日のティースプーン一杯から、スープスプーン一杯くらいに成長してる。こぼれそうになって、二人とも慌てて左手を添えた。控えている侍女が用意したティーカップに水を慎重に移す。

 試験官たちは絶句したままティーカップを回し見してるよ。驚き過ぎて最早言葉も出ないようね!って言ったら悪役令嬢っぽいかな?


 ダスティンとレナードは通常運転か。レナードは昨日見たから分かるけど、ダスティンは初見じゃない?もうちょっと反応してよ。


 一通り見終わって、セプテントリオのオジサマたちは考え込んでいる。まだ私の番が終わってないんだからね!


 ヴィオラ、と香澄様に声をかけられた。私は椅子から降りて、試験官によく見えるように近づいた。お父様とオッキデンス公を見据える。二人が何を考えているのかは分からない。ただ、その瞳は揺らいで見えた。


「ヴァイオレット。お前は何を具現化する?」


「ほのおを。」


「始めろ。」


「おおせのままに、へいか。」


 お父様は眉を顰めた。私たちは今日、子ども時代と決別する。

 これからは、貴族の、聖女の末裔の義務を背負わなければならない。聖女の御技を獲得するとは、そういうことだ。


 お父様、お母様、オッキデンス公、メリディエス公。


 私たちに、チャンスをくださってありがとう。


 本当の娘ではないのに、愛してくださってありがとう。


 運命を歪めてしまってごめんなさい。


 誰も口にはしないけれど、きっとみんなそう思ってる。

 私たちは、この人たちの、娘じゃない。


 ゲームの中の、あのキャラクターが、本当の娘だ。


 私たちは自我が出来る前に前世を思い出してしまった。


 本来のヴァイオレットを、スカーレットを、オリヴィアを、そしてアーテルを、すみれが、まどかが、ミルが、瞳子が奪ってしまった。


 私たちは罪悪感と戦っている。運命を歪めた罪を、既に背負っている。それに比べたら、聖女の末裔の義務など軽いものだ。


 私は考えながら、魔力球で綿花を包み込む。分かりやすいように、少し大きめに綿を千切っている。


 罪悪感など燃やし尽くしてしまおう。今、ここで。全てを割り切って、前へ進む。私たちは四人で決めたんだ。


 必ず、幸せになってみせる。それが、彼らと、本当の私たちへの贖罪だ。


 大切な人たちを絶対に、悲しませたりしない。


 失望させたりしない。


 約束するよ。


 私は力を込めて、魔力球を縮小する。大きな音を立てて、あっという間に綿花は炭になった。


 唖然とする大人たち。私たちも、今日から彼らの仲間入りだ。


 私が炭になった綿を処分して席に戻っても、会議室は静寂に包まれていた。



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