47 先生は二歳児③
今回は短めです。
順繰り回って一通り終えた頃には窓から西陽が差していた。二歳児の体力には堪える。オリヴィアも疲れたのか、ふう、と幾度か嘆息していた。
師団長さんたちはすっかり小学生男子のようになった。終わった人たちからお互いに魔力交換を行って、やれ私の方がサラサラだ、やれ早く訓練場で試してみようと言い合ったり、ひたすら魔力循環に勤しんだり、なんだか楽しそうでよろしいこと!
細かくした魔力を今までのようなスピードで扱えるかが当面の課題だね。魔力循環頑張ってね。
最後の課題を与えて、今日の発表会という名の講義は終わることにする。
「みなさま、ごせいしゅくに。みなさまはくうきちゅうにまりょくがかえるのはおわかりになりますね?みぢかなまりょくのなかで、もっともぶんしがこまかく、げんしのじょうたいでもそんざいしているのがくうきのなかです。さいしゅうてきには、くうきちゅうからまりょくをとりこめればとかんがえております。わたくしたちもそのようなくんれんをして、たいないのまりょくをよりこまかいつぶでにんしきできるようになりました。」
「魔力吸収ですか!」
「都市伝説のようなものだと思っておりました。」
「理論上は可能ということですが……本当ですか?」
「いや、先代オリエンス公は魔力吸収を使っていらしたと聞いたことがある。」
「れきだいのせいじょのかたがたもおつかいのわざですよ。ぜんしんからとりこむのですって。」
「そんなことが出来るとは!夢のようですな!」
「まりょくげんしじたいはくうきちゅうでは、ひきあったり、はんぱつしたりをしゅんかんてきにくりかえしています。わたくしたちもまだ、ききてのてのひらでしかそうさできないの。わたくしとオリヴィアとでは、じゃっかんやりかたがちがうので、おてほんをおみせします。みなさまもごじしんがやりやすいようにアレンジするのもよろしいかとおもいます。おちかくにきてごらんになってくださいね。オリヴィア、いいかしら?」
「ええ、いつでも。」
私たちは右手を出して机の上に置き、ジワジワと魔力吸収を行った。吸収っていうより吸着だもんなぁ。分かってもらえるだろうか。原子そのもので捉えることが出来なくても、手のひらに増えていく魔力がどんな増え方をしているか、よく観察してもらいたい。
「魔力が流れ出ていないのに魔力が増えておりますな。」
今までずっと黙って講義を聞いていたレナードに声をかけられた。
「そうですよ。てのひらにだしたじぶんのまりょくとひきあったげんしを、すかさずとらえるのです。」
「オリヴィア様は魔力の膜にぶつかったものだけを取り込んでおられるが、ヴァイオレット殿下は魔力の突起を作って自ら捕らえに行っておられる。これで正しいですか?」
「そうです。まりょくまくのじょうたいだと、げんしがどうしてもひきあってけつごうするまえに、はんぱつのちからにかわってとおくへいってしまいます。それもしゅんかんでまたひきあうちからにかわるので、すこしおいかければにげたげんしもけつごうしてくれるのではないかとおもったのです。」
「殿下は面白い考え方をなさる。まるであの方のようだ。」
「それは、せんだいオリエンスこうのこと?」
「そう、貴方のお祖父様ですよ。」
てことは、お父様はお祖父様のセオドア様似ってことなのかしら。
レナードは左手を顎にやって考え込み、ふむ、と呟くと右手を机の上に置いた。手のひらを魔力で包み込んで、吸収を始める。
「ほう。なにやら小さいものが己の魔力を掠って行きますな。捕らえるのはなかなかに難しい。」
「ええ、そうなの。レナードすごいわね!」
歓声に混じって、どっかから野性の勘ってつぶやき声が聞こえたけど、気付かなかったことにしよう。
みんなそれぞれ試し出した。これが出来れば更に魔力をサラサラに出来るから頑張って欲しい。
「セオドア様の魔力を参考にしました。私の知る限りで最も魔力操作が繊細でおられた。恐らく、殿下の仰るサラサラの度合いで言えば、カスミ様の方が優れているでしょう。しかし、カスミ様の魔力は、治療していただいたことが御座いますが、微細過ぎて動きを捉え難かった。セオドア様の魔力に至る道を長年模索して参りましたが、ここに来て光明が差すとは。」
「おじいさまはどんなかただったのですか?」
オリヴィアもセオドア様が気になるみたい。魔力操作は私たちの今後の課題だから、生きていてくれれば色々と聞くことが出来たのになぁ。
「強く優しく、身分の上下を感じさせない気安さもある、誰からも愛される人物でしたよ。素晴らしい方でした。発想力があって、魔力量も、魔力操作も、剣も弓も、誰よりも長け、この世で一番強い男でした。魔力量と才を買われ、騎士団に身を置いておりましたが、驕ることなく、ひたすら鍛錬に励む真面目な方でしたよ。私からすれば部下ではありましたが、こうありたいと思うような尊敬出来る騎士でした。オリエンス公爵となられてからはお会いする機会も減りましたが、まさかあのような亡くなられ方をするとは……。あの方がお亡くなりになられたことは王国にとっても多大な損失です。残念でなりません。」
「おじいさまはどのようになくなられたの?」
「ああ、いや、失言でしたな。そのうち、貴女方も知る機会があるでしょう。それまではじじいの戯言と思ってお忘れください。」
教えてもらえなかった。子どもには聞かせたくないような話なのかもね。
「それでは諸君。本日の講義はこれにて終了する。各自、訓練に励むように。ヴァイオレット殿下、オリヴィア嬢に敬礼!」
全員起立して敬礼を受けたので、笑顔で応えた。あー、疲れた!
さーて、帰ったらアーサーに癒されて、明日に備えて早めに休もうかね!
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