45 先生は二歳児①
幼女の長台詞回です。ひらがな回とも。
よろしくお付き合いくださいませ。
はーい!というわけで、オリヴィアと騎士団本部に来ていまーす!香澄様の部屋まで騎士団長のレナード直々のお迎えですよ!暇なのかな!レナードと呼んでくれと言われたので、これからはレナードでいくよ!
案内された会議室にはご丁寧に、『新魔術論に関する研究会』との貼り紙が。騎士のお歴々は、みなさんカラフルなのに威圧感があって、色々と違和感しかない。
私とオリヴィアはレナードを挟んで一番前に座っている。巨体のレナードと並ぶと、立ってても座ってても、私たちのちょこんと感がすごい。
発表の順番はオリヴィアから。追尾攻撃についてだ。説明というより、質疑応答だった。まずは赤紫の髪色の第二師団の副師団長からの質問。
「第二師団副師団長を拝命しておりますダニエル・プールプラと申します。先日の追尾攻撃、お見事でした。あれから第二師団内でも試したのですが、魔力のマーキングは出来ても、動き続ける対象に魔力を繋げたままというのが皆難しいようです。どのようにして魔力を繋げていらしたのですか?」
「まりょくのくだをつくり、そこからまりょくをマーキングしたぶぶんにながしこみつづけるようにしました。まりょくがたいしょうのまりょくとゆうわしてしまえば、マーキングしたまりょくはきえてしまいます。つねにじぶんのまりょくをかんちできるよう、まりょくをほそくながく、そそぎつづけました。くだじたいはだんせいがあって、たしょうのびちぢみしてもきれないようなせいしつであれば、つなげたまままりょくがとぎれることなくたもたれるとおもい、そうしました。」
「それは……維持が難しいですね。私には出来そうにありません。」
「第五師団師団長エイドリアン・スブカエルレウスと申します。弾性と仰いましたが、具体的にどのような物をご想像になられましたか?参考にしたいと思いますので、お教え下さい。」
「あ……。」
オリヴィアの目が泳いでる。あー、前世の知識がベースだな。樹脂のゴムか、シリコンゴム辺りがモデルだろう。説明し難いよね。助け舟を出した方がいいかな?また香澄様に怒られそうだなぁ。でも、この世界で目にしたものに、似たような物質がない。仕方ない。伝家の宝刀、いっちゃいますか!
「それは、いかいのちしきですわ。このせかいにあるぶっしつではございません。」
「なんと!」
騎士たちが騒ついた。我々にはどうしようもない、何か他の方法がないか、何故異界の知識をご存知なのか、それぞれが口々に言い合っている。
「諸君、静まり給え。」
レナードの一言で静まり返った。うーん、ここからどうするかな?オリヴィアを見ると、泣きそうな顔でこちらを縋るように見ている。仕方ない!お姉さんが矢面に立ってあげましょうかね!
「わたくしたちはげんざい、そぼのせいじょ、カスミさまより、ちょくせつまりょくのごしどうをたまわっております。そのかていで、そうぞうりょくをゆたかにするために、いかいのちしきについておそわりました。わたくしたちもけっして、じつぶつをめにしたわけではありません。ちかしいものでいうと……そうですね、いきもののけっかん、でしょうか?だんりょくがあって、ふしをうごかせばのびちぢみし、きれてしまうことはそうそうございません。とりなどをさばくとおわかりになりませんか?」
「なるほど、血管ですか。」
「確かに、弾性があって、鋭い刃物で切り裂かねば切れませんね。」
「それならば、魔力も自分から伸びる血管の延長として捉えやすい。」
納得してもらえたようだ。オリヴィアも胸を撫で下ろしている。そもそもこの発表会自体が無茶振りなんだから、答えられなくてもいいと思うけどね。
「しかし、我々にそのような精密な魔力操作が出来るだろうか。」
「そうだな。出来るとすれば陛下くらいのものだろう。」
そんなにお父様の魔力操作って上手いの?レナードを見上げると、陛下の魔力操作は国一番です、と言われた。へー、そうなんだ。やっぱり国王より騎士の方が向いてるんじゃないの?
「これからヴァイオレット殿下が聖女の魔力操作についてご教授下さる。まずは、それを伺おう。」
丸投げ感があるけど、香澄様の師匠だもの。予想はしてたよ!
「では、つぎはわたくしが。まりょくげんしについておはなしさせていただきます。」
堅苦しい言葉遣いだけど、説明するにはこっちの方が話しやすい。原子という聞き慣れない言葉に首を傾げつつも、みんな真剣な顔をしてこっちを向いてる。今まで秘匿されてきた(わけでもないけど)情報だ。興味津々みたい。
「まず、だいぜんていとして、これもいかいのちしきですが、このよのすべてはげんしというちいさなつぶでこうせいされております。このいすも、つくえも、わたくしたちのからだも、すべてはげんしのけつごうしたかたまりなのです。けつごうしたものはぶんしといいます。」
「それは、想像もつきませんな。全てが同じ物質で出来ていると?」
「げんそ、はおわかりになりますか?」
「四大元素ですね。純魔石以外はどの魔石もその四つに分類されますから。」
「そうなのですね。」
四大元素の考え方は化学で言う元素とは違う。うーん、説明に困るな。本当かどうか分からないことだから確信を持って説明出来ないけど、四大元素という考え方に親しみがあるなら、少し踏み込んで話してみよう。陽子とか中性子とか電子とかは細か過ぎて説明しづらいから無理!教科書欲しい!
「いかいでは、よんだいげんそというのはぶっしつのじょうたいのことをあらわしたことばらしいです。こだいのかんがえかただそうですが、つちはこたい、みずはえきたい、かぜはきたい、ひはきたいをさらにこうおんにしてへんかしたかみなりのようなじょうたいのことをさすそうです。けんきゅうがすすみ、げんしじたいにも、こうせいのちがうさまざまなしゅるいがあり、それをげんそとよぶことになったのです。せいじょのおわすいかいには、ゆうに、ひゃくをこえるげんそがあるそうです。おなじげんしがかぞえきれないくらいにたくさんあつまり、こたいやえきたいになることで、はじめてめにみえるぶっしつとなるのです。」
この説明で合ってるかな?完全に理解してもらわなくてもいいんだけど、とにかく万物は細かい粒子で出来ているってところを理解してもらわないと実践は難しいだろう。多分、昔の聖女の説明では、その理解の壁を乗り越えられなかったんだと思う。
「同じ原子が集まる、と仰いましたが、違う種類の原子は結合しないのですか?」
「します。げんしのしゅるいがげんそというのはおわかりになりましたか?いかいではそれぞれ、げんそになまえがつけられております。たとえば、みずは、すいそというげんそのげんしがふたつ、さんそというげんそのげんしひとつがけつごうして、はじめてみずになります。そうですね……たとえばですが、じゅんませきのことをひとつのげんそとかていしますね。ませきというげんそだとします。そのじゅんませきのませきというげんそに、つちならつち、ひならひのこうせいぶっしつであるげんそがけつごうして、それぞれのぞくせいのませきになるということです。もういちどいいますよ。じゅんませきというげんそに、ぞくせいのげんそがけつごうして、ぞくせいつきのませきというぶんしになるのです。けつごうするげんしのかず、つまりぶんしのこうせいのちがいによって、ぐげんかされるぶっしつやげんしょうがかわるのです。まりょくはこたいやえきたいのようなじょうたいがなく、めにみえませんが、おなじようなこうせいになっているのです。いま、みなさまのまりょくは、まりょくげんそではなく、まりょくぶんしのじょうたいになっています。まりょくこうかんをおこなってわかったのは、まりょくそうさがじょうずなかたほど、まりょくぶんしがちいさいのです。とくに、せいじょのみわざは、まりょくをげんしにちかいじょうたいでそうさし、よりふかくたいしょうにかんしょうするまじゅつといえるでしょう。」
ほう、と感心する声が方々から聞こえる。なんとなく分かってもらえたかな?まだまだ伝えなければならないことがあるので、よく聞いていて欲しい。
「わたくしがまりょくこうかんしたなかで、おとうさまであるこくおうへいかがいちばんまりょくがサラサラとしていました。おとうさまのまりょくそうさはくにいちばんだそうですね?こうかんあいてのサンプルはすくないですが、わたくしがまりょくこうかんをしたあいては、まりょくぶんしがおおきいかたほど、まりょくをそそがれたときにていこうりょくをかんじ、たいないにはいりこめばいぶつかんがあり、まざるまでのじかんがかかるようにおもいます。みなさまはむいしきに、じぶんがにんしきしやすいおおきさでまりょくをとらえています。まりょくはイメージにひっぱられてかたちをかえますから、まりょくこうかんにおいても、そそがれたまりょくが、たいないにあるまりょくぶんしのじょうたいにあんていすることで、おのれのまりょくとゆうわするのではないかとわたくしはかんがえました。」
「そのような考え方は初めてです。」
「魔力は皆同じもので、そこにそれぞれの性質が載っていると思っておりました。」
「さきほどもうしあげたように、このよのぶっしつはすべてげんしのけつごうによってなりたっているというのがいかいのかんがえかたです。あちらにはまほうがないので、かがくがはってんしています。なにしろじげんをこえているので、ほんとうにおなじようにせかいがこうせいされているかといえば、かくしょうはありません。ですが、じっさいに、わたくしたちがげんざいおこなっているくんれんでは、まりょくをひとつのげんしとしてとらえることで、さまざまなことがかのうになりました。」
「例えば、どの様な事ですか?」
「そうですね……。ほんじつおこなったくんれんで、ばいかいをつかわず、なにもないところからぶっしつやげんしょうをぐげんかする、というのがございます。たとえば、みずです。さきほど、みずはすいそげんしがふたつ、さんそげんしがひとつとせつめいしましたね?それが、きたいとなってくうきちゅうにそんざいしているのです。くうきちゅうにすいぶんがふくまれていることはおわかりですか?こおりをいれたつめたいのみもののいれもののまわりに、けつろがおきてすいてきがつきますよね?あれが、くうきちゅうにふかしのじょうたいで、きたいになったみずがあるというしょうこです。」
「では、空気の水分を集めて水にすることが出来るのですか?」
「はい。じっさいにおみせしましょう。オリヴィア、いいかしら?」
「かしこまりました。」
右の手のひらをみんなに見えるように差し出し、水を発生させた。スプーン一杯程度の量だけど、騎士たちには驚愕の出来事だったようだ。レナードなんか、顔をめっちゃ近づけて見てる。オリヴィアがドン引きするほど近い。
「無詠唱……。」
あ、そこね。驚きポイントはそこなのね。
「このように、ぶっしつやげんしょうのなりたちさえわかっていれば、むえいしょうでのぐげんかもかのうです。イメージさえできていれば、あとはまりょくのせいしつでげんそをあつめてぐげんかをおこなってくれます。みずそのものにまりょくはかんじませんから、やくめをおえたまりょくは、くうきちゅうにかえるともかんがえられますね。」
今話しながら思いついただけだけど。魔力に関してはよく分かんないことが多過ぎて、本当によく分かんないんだよ。とりあえず、そういうものだってことにして、操作してるだけだもん。
「いまはくうきちゅうからすいぶんをあつめましたが、わたくしはくんれんのしょにちに、じぶんのたいないにあるすいぶんをあつめてぐげんかしてしまって、かるいだっすいしょうじょうになりました。みなさまもおためしになるときにはおきをつけくださいね。にんげんのからだは、せいじんで6わりがすいぶんですから、たいないのすいぶんが2わりうしなわれたらいのちがあぶないですよ。」
ゴクリ、という息を呑む音が聞こえた。え、何?ただの注意事項なんだけど、脱水症状って息を呑むほど恐ろしいの?騎士みたいに身体を使う仕事なら、気をつけなきゃいけないことではあるけどさ。
「それは……敵の身体から二割の水分を奪えば、命も奪える、と言う事ですか?」
「ま、まあ、そうなりますわね……。」
うっわー、やっべー!またやらかしたかな!?いや、確かにそうだよね!攻撃らしい攻撃しなくても、相手の身体から水分さえ取っちゃえば活動停止どころか生命活動が停止だわ!!
そんな魔力操作を一瞬で出来ればの話だけどね!出来たら暗殺とかには向いてそう!恐ろしい技を産み出してしまったかもしれん!お願いだから、どうか実用化されませんように!!
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