44 魔力訓練⑧
魔力訓練は終わります。明日は本番です。
おっはよーございまーす!今日は魔力訓練四日目!昨日は自主練もそこそこに、早めに寝ました!
マジ、昼寝なしはキツイ!アーテルはもう昼寝しないんだって。オリヴィアもほとんど平気って言ってた。うーん、体力つけることも考えないとダメだな。
朝イチでアーサーに構い倒してから、すぐに訓練の時間になった。今日は無詠唱の具現化って言われたなぁ。思いついたアレ、インパクトはあるけど、ちょっと危ないんだよなぁ。
あ、媒介じゃないなら物は使っていいのかな?一応、起きてすぐにアンに言って用意しといてもらったけど。完全に何もないところから何か出すって、水以外思い浮かばないんだよね。
現在、魔力交換をしながら、アーテルと雑談中。
「具現化、何するか決めたの?」
「うん。まりょくだけでものをもやそうかなって。」
「媒介は使っちゃダメなのよ?」
「ばいかいはいらないよ。もやすものはひつようだけど。」
「……よく分からないわ。」
「まだためしてないから、うまくいかなかったらふつうにみずをだすよ。」
「普通に、ね。」
はぁ、と溜息をつかれた。まあ、本来、何もないところから水を出すって普通ではないからね。
魔力球の訓練は、結局合格を頂けなかった。利き手じゃない方の手の訓練をこれからも続けなさいだって。スカーレットも不合格だったけど、形が整ったのを褒められていた。道は遠いな。
「では、いよいよ最後の訓練よ。何を具現化するか決めたかしら?」
「わたくしはみずにしようとおもいます。」
「わたくしも。ほかにおもいつきませんでした。」
スカーレットとオリヴィアは水にするそうだ。オリヴィアは他の何かを考えてくると思ったけど、思いつかなかったらしい。
「ヴィオラはどうするの?」
「わたくしは、ひにしようとおもいます。」
「火?」
「はい。もやすものはひつようですけど、ひをつけるためのばいかいではないので、きょかをいただけませんか?よういはしてきたので。」
「そうねぇ。一度やってみてから、明日披露するかどうか考えましょう。二人は同じ水だから、先にやってみましょうか。」
スカーレットとオリヴィアは水の具現化を始めた。あっさりと具現化出来たものの、水滴程度の量だ。
「しょにちのヴィオラさまのようなりょうはだせませんね。」
スカーレットは悔しそうだ。オリヴィアは顎に左手を当てて、右手のしずくを凝視して考え込んでいる。ただイメージしただけで水が出せるってだけで凄いと思うんだけどな。
「ヴィオラが水を出した時はどうだったのか、二人に教えてあげてくれないかしら?」
「あ、それはかまわないですけれど……あのときだしたみずは、おそらくくうきちゅうのすいぶんではないのです。」
「そうなの?」
「アーテルはどれくらいくうきちゅうからみずをあつめられる?」
右手を前に差し出して実演して見せてくれた。
「……スプーン一杯くらいね。」
「どういうイメージでやってる?」
「右手の周りの空気中にある水分を集めるイメージね。」
「それくらいのはんいだと、あまりしつどがたかくないおうとだと、いまくらいのりょうがげんかいだとおもう。」
「じゃあ、前回はどこから水を集めたの?」
「たぶん、からだのすいぶんがでてきたんだとおもう。」
「何それ。」
「なにといわれても。まりょくつかいたてで、あれくらいのみずをあつめられるとしたら、たいないのすいぶんかなって。にんげんのからだなんてほとんどみずじゃない?」
「そうだけど……大丈夫なの、それ。」
「あのとき、だっすいしょうじょうっぽくなったから、たぶんだいじょうぶではない。のどかわいたし、からだだるかったし、あたまもいたかったし。」
「まあ!その場で言ってくれれば良かったのに!」
「かくしんがなかったので……。さいしょはまりょくをはじめてそうさしたひろうかんかなっておもったので。」
「これからは体調が悪くなったらすぐに言うのよ。」
「はい。そういたします。」
「それでは、みずのぐげんかはやめておいたほうがよいのでしょうか。」
「無詠唱で出来るところをジョージたちに見せつけるというのが大事だから、そうね、アーテルが出した量くらいは出来るようにしましょう。」
「はんいをひろげて、ひやすイメージはいかがですか?けつろをじんこうてきにまりょくでおこすのです。」
「やってみます。」
「わたくしも、ためしてみます。」
二人が練習している間、香澄様が私の具現化を見てくれることになった。アーテルは二人の指導を担当している。
「それで、ヴィオラの火を起こすというのは、どういうイメージでやるつもりなの?」
「ええと、ファイヤーピストンってごぞんじです?くうきをいっきにあっしゅくして、かねんぶつをもやすのです。めんかをよういしてもらったので、かけらでためしてみようとおもうのですが。」
いやぁ、王宮の暖房や調理はほぼ火の魔石でやってるから、炭はすぐ用意出来ないって言われたんだよね!もっと早く言えば良かった。
綿花はクッションの詰め物とかに使うものを衣裳部から拝借して来てもらった。しっかり乾燥してるし、燃えてくれるはず。
「ファイヤーピストン?」
「キャンプようひんですね。ひおこしのひだねをつくるものです。」
「初めて聞いたわ。」
「そうですか。ただ、いっきにあっしゅくさぎょうをしないといけないので、そこがむずかしそうなんです。」
「試してみてくれる?」
「かしこまりました。」
ファイヤーピストンっていうと円筒状。だけど、球で苦労した私にそんな形の魔力の容器を作れるはずがない。右手のひらに綿花のカケラを置いて、包み込むように魔力の外殻を作った。右手で作ってるから隙間もなく、我ながら綺麗!内部は魔力で埋める必要もない。
これを、ジワジワじゃなくていきなりギュッ!と縮めなきゃなんない。イメージは出来てる。上手くいくかは、私の魔力操作次第。
「いきます!」
ギュッ!
「あれ?」
失敗した。球は縮んだけど、綿は綿のまま。
「やっぱりむりかしら。」
「そんなことはありません。発想は面白いのだから、着火するまで続けてみなさい。」
ホントに火がつくかも分からない事を繰り返しやれと!?香澄様の脳みそ筋肉ぅぅぅぅ!!!
「はぁい。」
渋々、繰り返し練習する。反射神経が悪いせいなのか、初動が遅い気がする。最初の球を小さめにすると、圧縮する空気量が足りないのか、手応えがなかった。
いっそ、最初の球を大きくしてみる?空気の圧縮量を増やしたら、初動の遅さをカバー出来ないかな?あーでも、そうするとコントロールに自信ない。
気温の問題かなぁ。今、春先だもんな〜。気密性は大丈夫だと思うんだけど。
補強のために左手も使ってみる?外殻コントロールのサブで、バトルマンガの主人公みたいに、気を出すみたいに魔力で球を作って、と。
うん。外殻だけならなんとかなるな。左手だけじゃ作れないんだけどね!でも、今回のメインは右手だから!圧縮のイメージのために両手で押し潰す感じで!
「ふんぬ!」
ボン!と音を立てて、閃光を放ちながら綿花が燃えた。すでに炭化して質量が縮んでる。反動を抑え込むように球を小さくするんだけど、綿花が着火したあとは衝撃を逃すために魔力球の大きさを素早く元に戻す。
外殻が霧散と同時におかしなことになっても困るし、そもそも東南アジアで火種の作り方だから、炭化した綿花が下に落ちて、超高級であろうお絨毯様に焦げをつけてはならぬ。ココ大事。
「できました!」
周囲の視線が集まっている。だけど、私が思ったような感情の視線じゃなかった。大人たちとアーテルは、呆れたような目で私を見ていた。なんでよ、もっと驚いてよ!
「よくやりましたね、ヴィオラ。ただ、気合いを入れるのは良いのだけど、その掛け声はアウルムの王女として品位に欠けるのでやめなさい。」
「し、しつれいいたしました。」
「気をつけなさい。」
しょぼーん。お小言いただいちゃった。ここ数日はどうしても前世に引き摺られて、猫は家出中のままだ。もう、他の餌場を見つけてるか野良化してるかもしれない。
「スカーレットもオリヴィアも、今日はこれでおしまいにしましょう。それだけ出来ればもう充分よ。ヴィオラとオリヴィアは午後に騎士団へ行くのでしょう?」
「はい。あとでダスティンがむかえにきてくれるそうです。」
今日もみんなとここで昼食と摂って解散だ。私とオリヴィアは昨日騎士団に呼び出しを受けたので、早速説明会を行うことになった。同席するのは騎士団長と副団長、第一師団〜第七師団までの師団長と副師団長。あ、第三師団は災害復興に行っちゃったから不在らしいけど。
「おばあさま。ごご、わたくしのれんしゅうをみていただけませんか?」
食事の途中、スカーレットが香澄様にそう申し出た。
「あら。今日は明日に備えてゆっくりしてもらおうと思っていたのだけど。わたくしは予定がないからよろしくてよ。」
「ありがとうぞんじます。よるははやめにやすむことにいたします。」
スカーレットも昼寝必要組だから、そうした方がいいよ。いや、ホント、体力つけたいなぁ。すみれのときも体力がなかった。運動嫌いのせいだけど。
あー、でも、いつか馬には乗ってみたいな!馬に乗れるってカッコよくない!?バイクの免許も欲しかったんだけど、前世の母親に反対されてそのままだったんだぁ。騎士団にたまに見学に行くと、障害レースみたいな訓練もしてて、人馬一体となってバッ!と飛ぶのもカッコよくて、ちょっと憧れなんだよね。
ちなみに、前世で車は何とか免許取ったんだけど……初めての車庫入れで見事失敗して……それからは自分で運転しなかったからペーパードライバーだった……空間把握能力が不足してた……人間、向き不向きがある……。
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