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悪役同盟!〜同じ事故が原因で転生した4人の悪役令嬢は同盟を組んで断罪を回避したい!〜  作者: 里和ささみ


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37 悪役王女は猫を投げ捨てる

宰相ダスティン(52)がよくしゃべります。

活躍はしておりませんが、オジサマが好きな方は是非評価をお願いします(笑)

「陛下、お約束の時間ですよ。」


「やだやだやだ!もっとヴィオと遊ぶー!」


 あの後、魔力のサラサラ感を体感してもらうため、みんなで魔力交換をした。やっぱりお父様の魔力がダントツでサラサラしているとの意見で一致。私とお父様を除く五人の中では、宰相さんが最もサラサラしていた。

 途中で執務室の前に立っていた騎士二人も呼んで、私の魔力訓練のためと誤魔化して感想を求めたんだけど、私と同じ意見だった。この二人は宰相さんよりサラサラしていた。さすが騎士。比較のためにお父様ともやってもらったんだけど、お願いしたら微妙な顔で手を繋いでいた。不敬にはならないからね!ごめんね!


 みんな、今までは流れる水のイメージで魔力を捉えていたので、粒子として判断するのは意外に難しかったらしく、水もまた分子であるという説明をして、イメージ作りをしていった。


 んで、時間もかかるからって少しお茶の時間伸ばしたんだけど、タイムリミットが来て、お父様の駄々だ。安定の流れである。


「失礼致します!南部より緊急連絡が入りました!」


 伝令役の文官が慌てた様子で駆け込んで来た。入るなり私と目があったので、固まってしまわれた。


「どうした?」


「あっ、はっ、はい!南部アークトゥルス領より、この数日の豪雨の影響で河川が氾濫したとの報告です!」


「またボオーテス川か!今年は早いな。」


「例年の比ではないそうで、穀倉地帯への被害が甚大とのことです。復旧に騎士団出動の申請が来ております。いかが致しますか?」


「すぐに騎士団に連絡して災害支援に行く部隊を編成させろ。支援物資に必要なものも管財部に予算を上げさせて揃えさせろ。メリディエス公とは連絡を取ったか?」


「すぐにご報告致しました!あちらにも既に伝わっておりましたので、これからこちらにいらっしゃるそうです!」


「分かった。大会議室を開けておけ。関係各所の長を集めろ。一時間後に緊急会議だ。」


「かしこまりました!それでは失礼致します!」


 扉が閉まると同時に、私を抱きしめていたお父様が、はぁぁぁぁぁあ!と盛大に溜息をついた。ウン。私を抱きしめながら指示を出すお父様。カッコイイとは言えない。


「ごめん、ヴィオ。遊べなくなっちゃった。」


「たいへんなことになりましたね。ボオーテスがわはよくはんらんするのですか?」


「ああ。毎年夏の前の雨季に起きるのだが、今年はかなり早い上に大規模な氾濫のようだ。」


「たいさくはされていないのですか?」


「堤防は御座いますが、十年に一度ほどの間隔で決壊することが御座います。」


「じゅうねんにいちどはおおいですね。ダムはないのかしら?」


「ダム?」


「ええと、せき、ですわ。かわがながれるじょうりゅうのさんかんぶに、かわをせきとめて、かりゅうにながすみずのりょうをちょうせいする、じんこうのみずうみをつくるのです。すいもんをつくって、うきのようなあめのおおいじきはかりゅうにながれるりょうをちょうせいし、かきのようにあめがふそくするじきはじんこうこのみずをながしてりようするのです。」


 あれ?みんなだまってこっちみてきいてる。続き求められてる感じ?


「あとはすいがいたいさくとしては、ゆうすいち、かしら。こくそうちたいなら、へいやぶですよね?ゆうすいちはふだん、からっぽのいけをつくっておき、こうずいのおきるようなおおあめのときはそこへかわのみずをのがすようにするの。あとですこしずつかわへもどせるようにできればいちばんいいとおもうわ。」


 ん?まだなの?専門じゃないからあんまり期待しないで欲しいんだけど。


「こくもつは、あきがしゅうかくだったでしょうから、ひがいのきぼによって、こくもつをこくないでまかなえないならゆにゅうして、ひさいしゃの、せいかつほしょうもかんがえねば、なりません、よね?あの……わたくしのはなしをきかずに、かいぎのじゅんびをされたほうがよろしいのでは?」


 みんなの視線がなんかどんどん奇異なモノに変わっていったので、怖くなった。災害時に知識の出し惜しみをして、後で被害を聞いて後悔するよりはいいんだけどさぁ。


「あ、ああ、そうだな。お前たち、準備を進めてくれ。」


「陛下、申し訳ありません。お任せしてもよろしいでしょうか。」


「なんだ、ダスティン。いつも自分が全て把握しなければ気が済まないのに。」


「それは陛下が詰めが甘くていらっしゃるからです。私はヴァイオレット殿下とお話がありますので、そちらの小会議室を使わせていただきますよ。」


「え、いや、わたくし、そろそろへやへもどりたいのですが……。」


「姫殿下は色々と有用な知識をお持ちのようだ。是非、ご教授願いたい。」


「そ、それなら私も同席するぞ!」


「いえ、陛下は国王なのですから、災害時は陣頭指揮を取らねば民からの求心力が下がります。このまま準備をお続け下さい。」


 そう言うと、宰相さんは私をお父様から取り上げて、左腕に抱きかかえてスタスタと昨日の小会議室へ入った。アンが追いつく前に、後ろ手で鍵まで閉める周到さだ。外に鍵穴がなかったはずなので、外から開けるには扉を壊すしかない。


 宰相さんは、私をゆっくりと降ろし、距離を取って正面から向き合った。


「あ、あの、ルーフスこうしゃく……?」


「ダスティンと。」


「あ、では、ダスティン。わたくし、くにのさいしょうをつとめるようなあなたに、おしえられることなんて、なくてよ?」


「それはこちらで判断致します。今のお話から、殿下より学ぶべきことが多くあると思いました。」


「え、でも、くにでもおこなっていることはあるわよね?わたくしはただ、それをいっただけだわ。」


「それは、どこで手に入れた知識ですかな?」


 あっ、宰相さんの目が怖い!ギラン!と光ってる!


「えっ、えっと、じぶんでかんがえたり、おとうさまとみなさまのおはなしをみみにしたり、ひとにきいたり?」


「人?思い当たりませんな。そのような者がいるなら今すぐ王宮で雇いますのでお教えください。」


「かっ、カスミさまの!おばあさまの、いかいのちしきでございます!!」


 うわぁ〜い!後で怒られるのかくてーい!!


「殿下は嘘が苦手であられる。」


 うぐぅ、バレてる!でも、前世の知識ですッ!なんて言ってどうするの!?信じてもらえると思う!?他の三人も巻き添え喰らいかねないのに、どうしろって言うの!?助けて、みんな!助けて、香澄様ぁ!


「ち、ちえはさずけます。ただ、せんさくはしないでほしいの。もし、くわしいことがおしりになりたいのなら、おばあさまにきょかをいただいて。」


「何故カスミ様に?保護者である陛下や妃殿下ではなくて、ですか?」


「それはいかいのちしきだからよ。これいじょうのことは、いまはいえません。しんじていただけるほしょうもないもの。いいようにつかわれるのも、まっぴらごめんだわ。」


「姫殿下のなさる物言いでは御座いませんな。」


「いままでおもてにださなかっただけよ。おかあさまやマーガレットにおこられてしまうからね。」


「そうですか。そちらが本性だと。」


「そうよ。なにかもんくある?」


「いえ、御座いませんね。時間がありません。流石に私も会議に出席しなくてはならないのでね。」


 ダスティンは再び私を抱き上げ、椅子に座らせた。正面ではなく、椅子を対面させて、横並びで座る。


「なにがしりたいの?」


「水害への知見を。」


「ほんとうにそれだけ?」


「真実は、カスミ様に許可を頂いてからに致します。今はまず、目の前のことからです。」


「……わかったわ。」


「治水工事については後にしましょう。すぐに取り掛かれるものでは御座いません。先程のお言葉の続きをお聞かせ願えますか?」


「えっと、なんだったかしら。」


「被災者の生活補償に関してです。」


「ああ、まずは、じたくをうしなったひとのかせつじゅうたくね。おおきなとまれるしせつがあれば、そこでもいいけれど、プライバシーのないくうかんはただでさえショックをうけているひさいしゃのせいしんをまもうさせるわ。かぞくたんいですめるかんいごやをよういします。ちなみに、よさんはどこからねんしゅつするの?」


「災害対策費が国庫に御座いますのでそこからです。」


「たりるかしら?きふはつのらないの?」


「寄付、ですか。戦時に自主的な寄付が行われたことはありましたが、災害時にはありませんね。」


「ならば、ぎえんきんをくにであつめましょう。きぞくだけでなく、へいみんからもひろくつのるのです。ちりもつもればやまとなるわ。つかいみちもひろくにんちすること。ただしくつかわれていることをしれば、こんごもしんようしてたすけてくれるかも。」


「ふむ。どれほど集まるか分かりませんが、試してみる価値はありますな。」


「あと、ひさいしゃのことしのぜいをめんじょはとうぜんのことね。ふっこうがちょうきにわたるなら、ひさいしゃにしごとをあたえなければなりません。ちすいこうじをおこなうのなら、にんそくとしてやとったり、かしら。さいがいふっこうのさぎょうも、きゅうりょうをあたえてやるのもいいとおもう。とにかく、てもとにざいさんがないのはこころもとないものよ。」


「そうですね。人足も他所から人を集めるよりは効率が良い。」


「ぜんかいのだいきぼはんらんのひがいはどれくらい?」


「あの一帯は国内の穀物生産量一、二を争う地域です。前回は小麦の価格が高騰して、食糧難に陥りました。」


「こむぎはしゅしょくですものね。ゆにゅうのあてはあるの?」


「同盟国に打診いたします。同じ時期に災害が起きやすい地域があるので、どれくらい賄えるかはまだ分かりません。」


「あとはなにかだいたいになるしょくりょうをさがすかね。いもるいはどうかしら?」


「芋、ですか。」


「ふかしてたべてもいいし、あげてもいいし。ゆでてつぶして、すこしのこむぎをつなぎにして、またゆでるのも、てまはかかるけどおいしいわ。たべたことない?」


「ありません。芋は家畜の食糧です。貧農の家庭では食べられていると聞いたことがありますが。」


「そう。ふそくがこくもつだけならやりようはいくらでもあるわ。ほかにききたいことは?」


「では、肝心の治水工事に関して。ダム……これも異界の知識ですか?」


「そうよ。おばあさまのいたくにはすいがいのおおいしまぐに。ちすいはだいじよ。むしろ、じゅうねんにいちどなんてみじかいスパンでだいはんらんがおきるのに、たいしたたいさくもしてこなかったほうがいがいだわ。」


「返す言葉も御座いません。御知恵をお貸しください。まずはダムについて詳しく。」


「ダムはきほんてきにさんかんぶにつくるの。つくるばしょのとちのせいしつによってかたちはかわるわ。そのへんのことはわたくしにもよくわからない。こうずいがおきたら、ダムのみずをほうりゅうして、かりゅうにながれるみずをちょうせいする。それしかわからないわ。モルタルがあるんだから、つくれるんじゃない?」


 前世の古代ヨーロッパにもダムはあった。この世界の力学がどれほどのものかは分からないけど、建築について私は完全に門外漢。専門家に頑張ってもらうしかない。


「洪水が起きた時に、貯めた水を流すのですか?止めて貯めるのではなく?」


「きょようりょういじょうのこうすいりょうだったらどうするのよ。ひがいがかくだいするわよ。みずが100はいって100でてこうずいがおこるところを50にするのがダムのやくめよ。ずっとまんぱいにためておくのではなくて、ていきてきにすいもんをあけてほうりゅうをおこなって、ダムのなかのあきようりょうをちょうせつするの。そのときは、かわがぞうすいするから、かりゅうにすむたみにはしらせておかないとね。」


 前世ではダムは発電なんかにも使われてるものだけど、この世界は電力の使い道がなさそうだからなぁ。人間発電機だもんな。


「なるほど。分かりました。では、次に遊水池です。」


「ゆうすいちは、かわがはんらんしたときにわざとあふれさせるためのばしょよ。へいやのひろいとちがひつようになるから、ばしょのかくほがむずかしいかも。かせんのそばはひよくなとちになるもの。こうずいによってえられるものもたくさんあるのよ。」


「はい。それは存じております。」


「こくもつをそだてるのじゃなく、うきをさけてつくれるものをうえてもいいかもね。あきにまいて、はるにしゅうかくできるような。ふだんなにもせず、ひろいとちをあそばせているだけではもったいないもの。かせんのすいいよりひくいところはつかえないけれど、ポンプがあれば……あ、ポンプってあるのかしら?」


「井戸の手押しポンプのようなものですか?」


「おなじものよ。ひくいところからたかいところへみずをながせないでしょう?だから、ポンプをつかってみずをかわにもどすの。どうかしら?」


「開発部に問い合わせます。遊水池が一番現実的なので。ダムは長期計画になりますから、土木建築部との打ち合わせが必要ですね。同席されますか?」


「こうきのめにさらされるのはいやよ。さっきだって、なによ。みんなじんがいをみるようなめをしてみてくれちゃって。」


「は。申し訳御座いません。」


「きょうはもうこれでおわりにして。あさからくんれんもしたし、わたくしとてもつかれているの。ほかにもおもいついたらおってつたえるから。」


「またご相談に乗って頂けますかな?」


「タダではうごかないわよ。」


「結構。今後は見返りをご用意致します。」


「きょうはひみつのほしゅがおだいでいいわ。」


「はっ。必ず。」


 ホントかなぁ。嘘ついたらたぬきジジイって呼んじゃうからね!

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