35 執務室でのお茶会①
今日は何話か投稿します。
お父様の側近ズの登場です。
三人に明日ホールの見学が出来ると伝えると、やっぱり知ってた。喜んでいたのでよし。
スカーレットとオリヴィアは、今日の昼食は離宮に戻って摂るそうだ。お父様は執務室に缶詰らしく、お母様と私とアーサー、香澄様とアーテルで軽く食べることになった。昼餐会ではないので、ウチの習慣に合わせて子ども同伴。
でも、聞いてみたら香澄様とアーテルはいつも一緒に食事をしているんだそうだ。オリエンス公はお忙しいのか、アーテルとは余り顔を合わせないらしい。
食事中も魔力循環が疎かになると香澄様に注意を受けた。意識して周りを見てみれば、香澄様やアーテルだけでなく、お母様も常に魔力が循環している。流れも揺らがない。
午後も二時過ぎまでみんなで過ごした。お母様とも魔力交換。アーサーも真似したがったので、手をつないでせっせっせをした。香澄様もアーサーを可愛がってくださって、大変ありがたかった。アーサーが香澄様を呼ぶとき、おばあさま、が、おばあちゃま、になっちゃうのが可愛い。
香澄様とも魔力交換をしてみたくてお願いしたけど、やっぱり御技訓練が始まるまでダメだって。ガッカリ。
今日はお茶の時間にお父様の執務室に行く約束をしたので、みんなとは途中から別行動。今日はアンが私のお世話をしてくれる日。
お母様の侍女はマーガレット、ドロシー、アン、モリー、デイジー(年齢順)の五人。ドロシーはお子さんがいるから日勤のみ。
だけど、一昨日からドロシーのお子さんが熱が出てしまってお休み中。家族の看病で休んでも給料には響かないなんて、王宮侍女ってすごいホワイト。王宮侍女はみんな貴族出身だから、仕事中は家でそれぞれの家の侍女が面倒を見ているらしい。
貴族女性の働き口といえば、侍女か家庭教師くらいしかない。女性騎士は狭き門だし。そこんとこは前時代的なんだよね。教育かぁ。この国の教育水準てどうなってんだろ?後で誰かに聞いてみよ。
「しつれいいたします。」
お父様は一応仕事をしていたけれど、書類の山は減っていない。昨日はなかった簡易的な机と椅子が置かれていて、宰相さんのダスティン・ルーフス侯爵が座っていた。仮にも現役の侯爵があんな椅子に座ってていいのかな?
セプテントリオとして王領の管理と宰相もやるなんて、お父様よりハードワークなんじゃない?椅子だけでも代わってあげればいいのに。
「ヴィオ!ヴィオが来たよ!いらっしゃい!ダスティン、休憩!休憩の時間だ!」
「そうですね。まあ、いいでしょう。三十分だけですよ。」
宰相さんは眉間を一生懸命揉んでいる。
「ルーフスこうしゃく、みなさま、ごきげんうるわしゅう。すこしだけおじゃまさせていただきます。」
お父様以外、起立して礼!2歳児に畏まりすぎだよ。それが王女ですか。そうですか。お父様も立ってるんだけどさ。駆け寄ってきて抱き上げられた。朝のこと思い出すからあんまり近寄んないで欲しい。
「みなさまもごいっしょにおちゃをいたしませんか?」
別にイケメン揃いのお父様の部下を侍らせて逆ハーレムごっこをしたいわけじゃないよ!ホントだよ!
顔は知ってても名前が分からないから、ちょっと交流してみようと思っただけさ!ウソじゃないよ!あと、お父様の暴走対策ね!
お父様が渋ったけど、お膝に座ることで何とか宥めて許可をもらった。2歳児だから!2歳児だから!それでも座るところが足りないので、数名仕事椅子を移動して簡易お茶会。
「ごめんなさい、わたくし、あなたがたのかおとなまえがいっちしていないの。あらためて、おなまえをおしえてくださる?かしこまったあいさつははぶいて、かんけつにおねがいします。」
宰相さんが目配せする。私とお父様の正面に座った、宰相さんに少し似てる人から自己紹介が始まった。
「では、私から。メルヴィン・ルーフスと申します。ドゥーベ侯爵家次男、そちらに座っているのが父です。以後、お見知り置きを。」
「ごしそくだったのね。こちらこそよろしくね。」
思わず顔を見比べる。赤い髪にサーモンピンクの瞳。瞳の色合いが少し違うけど、顔立ちはやっぱり似てる。
「私はライナス・フラーウムと申します。メラク侯爵家の長男です。夫婦共々、これからもよろしくお願い申し上げます。」
黄色髪で琥珀目。目の色はアーサーと似てる。黄色の髪って金髪ともまた違うのよね。マットな感じ。夫婦共々ってどゆこと?
「ライナスはドロシーの夫だよ。」
「そうだったの。おこさんのたいちょうはどうかしら?こうねつがでたそうだけど。」
「今は熱も下がって落ち着いておりますよ。妻は様子を見て、あと数日休ませていただく予定でおります。このような折に、ご不便をおかけして申し訳御座いません。」
「わたくしたちはもんだいないわ。こういうのはおたがいさまですもの。ドロシーじしんも、ゆっくりやすむようにつたえてちょうだい。かんびょうづかれで、ははおやがたおれることもあるのだから。」
「お気遣いありがとう御座います。殿下のそのお言葉だけでも妻は元気になると思いますよ。」
そう笑って、ライナスさんは仕事椅子に座ってる人に目配せで合図した。
「では、次は私が。デズモンド・カエルラと申します。メグレズ侯爵家分家、インディクム伯爵家の者です。そちらの侍女のアンの婚約者で御座います。お見知り置きを。」
「まあ!しらなかったわ!」
インディゴブルーの髪色に紺色の目。落ち着いた色合いの落ち着いた雰囲気の人。大人になったエドワードみたいに長い髪を後ろで一括りにするのはカエルラ家の不文律かなんかなの?
アンを見ると、静かに頷いて答えた。
えっ、コメントはなし?まあ、仕事中だから仕方ないか。
「アンにはいつもおせわになってるの。とてもたすかっているわ。すてきなこんやくしゃであなたはしあわせものね。」
「はい。私もそう思っております。これでプロポーズを受け入れて貰えれば言う事なしなのですが。」
「デズ!」
「アン、おこらないであげて。デズモンドがかわいそうよ。」
「そうだよ。人員の補充もするから、いつだって結婚してくれて大丈夫だよ?」
お父様も援護射撃をする。部下の幸せを願っているんだろう。いつも仲良さそうだもんね。
「恐れながら申し上げます。まだヴィオラ様もアーサー様もお小さく、王妃殿下付きの侍女としてモリーもデイジーも育ち切っておりません。今暫くお時間をいただきたいのです。」
「それはいつなんだ?悠長に待っていたら、私はおじいさんになってしまいそうだ!」
「だから、もう少し待ってっていつも言ってるでしょう!」
「ま、まあまあ、二人とも落ち着いて。陛下と殿下の御前だよ。」
「「失礼致しました……。」」
声が揃うところを見ると、相性はいいように思う。アンには良くしてもらってるし、お互い好き合ってるなら幸せになってもらいたいな。
「アン、わたくしたちのことをおもんぱかってくれるのはうれしいわ。けれど、ぐたいてきにきげんをきめずにただまってくれというのはデズモンドもやきもきしてしまうとおもうの。ちゃんとはなしあってあげて。」
「今ここで決めちゃえば?」
「おとうさま、さすがにそれは……」
「そうしよう!アン!私はいつまで待てばいい?もう二年も待った!あと半年か?来年か?どうなんだ!?」
「デズモンド、興奮するな。」
宰相さんにたしなめられて、デズモンドさんは小さくなった。余りの必死な様子に、ちょっと同情しちゃう。
「アン、わたくしたちがしっかりすれば、アンがぬけてもだいじょうぶかしら?けっこんしても、すぐにたいしょくするわけではないのよね?ドロシーだってそうだったはずよ。」
「それはそうですが……。」
「元々、ヴィオは手がかからないだろう?何とかなると思うんだが。」
お父様は呑気だな。まあ、でも、王妃付きの侍女の数は正直足りてない。夜勤のローテーションを考えると、アンが抜けるのが痛いのは分かる。結婚して即妊娠なんてこともあり得るから、人員補充は考えないといけない。
あっ、そうだ!私に専属侍女がいればよくない?王妃付きって考えるからハードル上がるんだよ!あの人数で、同時に三人の王族の世話なんて無理だもん。私の身の回りの世話をしてくれる人だけなら、別にお母様の侍女じゃなくたっていいじゃん!
「おとうさまはおうきゅうじじょちょうにじんいんかくほをしんせいしてください。わたくし、せんぞくのじじょがほしいのです。にんずうは、やきんのこともかんがえてさいてい3にん。ただし、じんせんはマーガレットのいけんもとりいれてくださいね。」
「専属侍女がつくのは5歳からだよ。」
この国はなんでも5歳だな。いいや。最悪、さっき聞いたアレでお父様を脅そう。お膝の上からお父様を見上げてみた。ウチのお父様はどこから見ても顔がいいぜ!普通、下から見たらちょっとマヌケに見えるものなのに!
「でもわたくし、これからもくんれんがありますから、そのたびにおかあさまのじじょをおかりするのはもうしわけないとおもっていたのです。アーサーだけならおかあさまのじじょだけでなんとかなりませんか?」
「おっ、訓練続ける気なんだ。自信満々だね。」
「あら?わたくし、オリヴィアからさきほどききましたわよ。せいじょのみわざのきょかがおりなくても、まりょくのくんれんはつづけさせる、と。わたくしたちで、せいちのせいせきにまりょくをそそぐおてつだいをするのでしょう?そうなれば、こんごおかあさまやアーサーとべつこうどうがふえるとおもうのです。やはり、わたくしのせんぞくじじょはひつようだとおもいますわ。そのときになってきゅうにみしらぬかたとたびをするのはふあんだもの。」
「そ、そうなんだけど、でもなぁ。慣例だからなぁ。」
「せいせきへのまりょくきょうきゅうはわたくしのようなこどもがしなければならないことではありませんよね?」
「そうだよ。ごめんね、ヴィオ。でも、ヴィオたちの魔力は既にとても多い。聖石への魔力供給は訓練にもなるし、王家と三公の義務だからね。協力してくれると嬉しいな。」
「かんれいをむししてでもぎむをはたさねばならないのなら、それそうおうのけんりをしゅちょうしますわ。せんぞくじじょ、つけてくださいますね?」
「うっ!そ、それは……ダ、ダスティーン!」
「かしこまりました。すぐに手配致しましょう。」
「おねがいね。」
「ああ〜!ヴィオが大人になってゆく〜!!」」
「あのう、私とアンの結婚の話は……。」
「そうね、まずせんぞくじじょがきまって、なれてもらうまでじかんがほしいから……。」
「一年後。一年後でお願い致します。」
アンが強めに主張してきた。
「そんなにおそくていいの?」
「準備もございますので、それくらいは必要かと存じます。」
「後はドレスさえあれば結婚出来る!半年……いや、三ヶ月後だって大丈夫だ!」
「ふたりでゆっくりしきのじゅんびをするのも、きずなをふかめるためにたいせつなことよ。ひとりでさきばしっては、いずれみぞがふかまるわ。りこんなんてことになったらいやでしょう?」
「それは困ります!殿下の仰る通りにします!両親に報告して、聖堂を予約して、ドレスの注文、ああ!なんて幸せなんだ!ヴァイオレット殿下、ありがとう御座います!殿下は私の恩人です!生涯の忠誠を殿下に捧げます!」
見た目に反して情熱的な人だなぁ。キラキラした目で見つめられた。アンはそれを眉根を寄せて見ている。プライベートに勝手に首突っ込んでしまったし、後で謝った方がいいかな。
「い、いえ、それはけっこうよ。これからも、おとうさまをどうぞよろしくね。」
「私も自己紹介させていただいても?」
「あ、そうよね。おねがいするわ。」
「私はブライアン・アウランティウムと申します。フェクダ侯爵家三男で御座います。ヴァイオレット殿下に名乗る機会を頂けて光栄です。今後とも、よろしくお願い致します。」
オレンジ色の髪で翠目。一見チャラ男。ウェーブヘアをポニテにしてる。カッコイイけど、苦手なタイプかも。パーリーピーポーはちょっとなぁ。いやいや、見た目で判断しちゃいけない。ここに彼の机がある時点で優秀な人のハズなんだし。
「こちらこそよろしくね。」
ブライアンさんはニコリと微笑むと、それ以上のことは言わなかった。ウン、案外普通の常識人かもしれない。
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