30 素敵なお父様
お父様回です。
はあー、今日は疲れたなぁ。あの後、オッキデンス公がやってきて、オリヴィアはコッテリ絞られてた。勝手に魔石のついた指輪を渡したらしいオリヴィアのお父様にも飛び火して、今すぐ水鏡で説教だ!と言って帰って行った。
今はアーサーとゴロゴロしながら子供部屋で遊んでる。癒しだぁー。昼間あんまり一緒にいられなかったのが寂しかったのか、ヴィオヴィオ言ってくっついてくる。たくさんヨシヨシしちゃうぞ!
もうちょいしたら、お父様がやってくる予定。魔力交換の約束したからね。いや、もう、寝たい。疲れたから寝たい。でも、明日拗ね拗ねのお父様の相手をするのがめんどい。ウチの父親はめんどいのだ。
とか思ってたら、先触れもなくお父様がやってきた。バァン!って扉の音で眠気も吹っ飛んだよ!
「さあ、ヴィオ!魔力交換の時間だよ〜!」
このテンションの高さ、どうにかして欲しい。アーサーはちちうえ〜とお父様に駆け寄って行く。
「ほーれ、アーサー!ぐるぐる〜!ぐるぐる〜!ゔっ!」
アーサーを持ち上げてぐるぐる回したら二周目で酔ったらしい。ポンコツお父様を誰か何とかして欲しい。いや、いつも身体を張った遊びをしてくれるから(アーサーに)感謝はしてるよ。私じゃ無理だもん。
「ごめんね、アーサー。今からヴィオとやることがあるから、ちょっと遊んでて。」
「もっとおー!」
「後でおうまさんになってあげるから!ゴメン、ちょっとだけ!」
「おうまさんして!おうまさん!」
「おとうさま、わたくしはあとでかまわないからアーサーとあそんであげてくださいまし。」
疲れ顔で言ったら、えーっ!と不満顔で返された。
「アーサーはきょう、ほとんどひとりですごしたのでさみしかったのです。いまはアーサーをゆうせんしてあげてほしいの。」
「分かったよ〜。アーサー、今日はひとりで遊べて偉かったね!私とおうまさんごっこをしよう!」
「あい!」
王様なのに躊躇いもなく四つ這いになる。お父様はお若い頃、今も若いんだけど、学生の頃、休みの度に護衛もつけずに実家にも帰らず、あちこちフラフラしていたらしい。
黄金の瞳を持つにも関わらず、あんまり身バレすることもなかったんだって。田舎の方に行けば見知らぬ人の家に転がり込んで泊まらせてもらったり、子どもと遊んだり、仕事を手伝ったり、楽しく過ごしていたそうだ。
次代の王となることは決まっていたのに自由過ぎると思わなくもないが、各地でそんなことをしていたので、平民に身近な王様として親しまれている。
但し、人気はあっても求心力はなく、即位して最初の地方巡行のとき、ある農村に寄った際は、アンタちゃんと王様やれてるのかいね、と昔お世話になった家のお婆さんに言われてしまったそうだ。
村の人は大慌てだったけどお父様は、いやぁ〜、それが全然やれてないんだよ!って大笑いして答えたらしい。そのお婆さんは、周りがしっかりしてりゃあ、なんとかなるさ、アンタには人を惹きつける力があるからいい人が集まってくる、絶対大丈夫だ、って言ってくれたんだって。
それをいいことに政治を人任せにするのはどうかと思う。仕事はちゃんとして欲しい。
お父様と遊んで興奮状態になっていたアーサーだけど、急に電池が切れたのかおねむになってしまった。モリーに抱っこされて、寝室へ行くことになったので、おやすみのキスをほっぺにしてあげた。うーん、役得!
「ヴィオ、そろそろ始めようか。」
「はい。おねがいいたします。」
お父様はあぐらをかいて絨毯に座り込み、私は立ったまま両手を繋ぐ。
「ヴィオの手は小さいなぁ。」
「まだ2さいですもの。」
「あんまり早く大きくならないでね。」
そう言って、お父様は私の手の甲を親指でさする。
「まずはこちらから魔力を流そうか?」
「いえ、わたくしからながします。うまくいかなかったときはおねがいしますね。」
「うん、分かった。」
黙って魔力操作に集中した。まずは魔力循環だ。日中にやった訓練の最後のスピードを思い出しながら魔力を体内で回して行く。
「おっ、来た来た!ヴィオは魔力まで可愛いなぁ!」
「まりょくにかわいいもかわいくないもありません。すこししずかにしてください。まだまりょくをうごかすことになれていないです。」
「あ、ああ、ごめん。静かにします!」
うるさい。でも、その言葉の後はちゃんと黙っていてくれた。黙っていてくれたけど、顔というか、視線がうるさい。まあ、譲歩しよう。仕方ない。
「そろそろ魔力を戻すよ。」
「おねがいします。」
お父様の魔力は最初の抵抗すらも難なく通り抜けて私の身体に戻って来た。あっという間に私の魔力に溶け込んでいく。お父様の魔力は、お父様そのものだった。
「すごい。あっというまにとけてなくなった。」
「それ、昔よく言われたなぁ。魔力交換なんて12歳までしかやってないから忘れてたよ。」
「そうなのですか?」
「そうだよ。第二次性徴期?あの年頃は身体がグングン大きくなるから余り魔力交換の効果がないんだ。身長が伸び始めるのも早かったから13歳でやめてしまったけど、成長が遅い人は15、6歳になってもやってるよ。私も13歳で身長が止まったわけではなかったけれど、周りに私より魔力が高い者もいなかったから、余り意味がなくてね。アーテルも、魔力量を増やすという意味では一生意味がないだろうね。」
そういえば、香澄様もそのようなことを言っていた。女の子は成長が早く止まるからそれまでが勝負だって。
お父様は背が高い。185cm以上はあるだろう。アーサーはお父様似なので、ゲームの頃の少年期が終わって大人になったらこんな感じになるのかなって思ってる。いや、こんな大人になって欲しくはないけど!
「まあ、魔力循環も魔力交換も魔力操作の基礎だから、量は増えなくてもやる意味はあるよ。ヴィオはまだ私より魔力が少ないから、これから一緒に増やしていこう。」
「よいのですか?おとうさまははんたいしてらしたのに。」
「本当はまだ、もっと子どもらしく楽しいことだけして遊んでいて欲しいよ。でも、娘のやりたい事は応援してやりたい気持ちもあるのさ。」
「おとうさまは、とてもすてきな、よいおとうさまですね。」
「え!今気付いたの!?」
「あらためておもったのです。おとうさまのむすめにうまれることができてしあわせです。」
「私も、ヴィオのお父様になれて幸せだよ。ヴィオが生まれた日からずっと幸せだ。」
それから私たちはとりとめのない話をしながら魔力交換を続けた。お父様の魔力の性質のお陰か、会話をしながらでも続ける余裕が出来た。そのことも、ちゃんと褒めてくれた。なんだか、本当に子どもになったみたいでこそばゆかった。
しばらくして、お父様はもう寝ようと私を抱き上げて寝室まで連れて行ってくれた。侍女には止められたけど、そのまま私が眠りにつくまでそばにいて手を握ってくれた。
いつかの時代の聖女が伝えたという子守唄は、私をそのまま前世への夢へと誘った。
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