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18 おねだりは可愛く

残りは余力があれば夜にでも。

またまた幼女のひらがな長台詞が多くて読み辛いです。

よろしくお願いします。

「ゔぃ、ゔぃ」


 お父様が奇声を発してる。ゔぃ、じゃなくて、ウィ、と言って!あ、フランス語だった。

 そうそう、この世界って実は英語なのよ。思いっきり日本語で喋ってるのに、文字は英語なのよ。異世界のくせに日本語なのよ。ご都合主義だよね。アルファベットの形が若干違うけど、筆記体はほぼ同じだった。

 口語と文語が全く違うっていう、意味の分からない世界よ。英語は割と得意だったから、苦もなく読めたけど。絵本は筆記体じゃないから、初めて見た時は目が点になったわぁ。


 そんなことよりも、お父様、長いな。二歳児が頭下げっぱなしだとそのうちバランス崩して顔から転ぶよ?


「ヴィオが大人みたいに喋ってる〜!!」


 そこかーい!!つい、大声でツッコミそうになったよ!お父様、話聞いてマジで!


「ジョージ、貴方いい加減にしなさい!」


「ですが、母上!ヴィオが、まだ二歳のヴィオがですよ!?驚きませぬか!?」


 いや、それを言ったらアーテルなんてすごいしっかり喋ってますけど。声は子どもだけど、完全に大人の話し方なんですけど。許可云々の前に、私も二人も驚いて顔を上げたわ。

 ごめん、アーテル。その目はやめたげて。一応、王様だから、この人。ホントやめたげて。


「ヴィオラは昨日も同じように話していたわよ。わたくしの孫娘は四人ともとても聡明で優秀だわ。貴方と違ってね。」


 カスミ様は深い深い、それはふか〜い溜息をおつきになった。この自由人育てるの、大変だったんだろうな。


「それでは私の出来が悪いかのような口ぶりではありませんか!あんまりです、母上!」


「いつもいつもフラフラフラフラ、あちこち出歩いて、学院時代は休みになっても帰って来やしない!王になるための教育もしょっちゅう抜け出しては城下で遊び回って、放蕩息子だったでしょう、貴方は!今でも時折執務室を抜け出してると聞きましたよ!」


 うわー、想像出来る。あの尋常じゃない山積みの書類はきっとサボりの結果なのだろう。宰相さんが腕を組んで眉間に皺を寄せて頷いてる。ウチのお父様がゴメン。


「カスミ様、子どもたちの椅子が用意出来たようですわ。座ってから落ち着いて話し合いをいたしましょう。」


 お母様がストップをかける。いつの間にか扉が開いて、子ども椅子が運び込まれて来た。見覚えのある人たちだから、お父様直属の部下で四つの机の持ち主たちだな。すみません、お手数をおかけします。


 椅子と共に入ってきた侍女に手伝ってもらって、ひとまず全員で着席。せいぜい十人くらいの入る部屋だからなんだか狭く感じる。侍女と補佐官の皆さんはまた下がっていった。お疲れさまでーす。補佐官の一人は残るみたいで、お父様の後ろにスタンバイ。


 十人掛けの楕円のテーブルの一番奥、いわゆるお誕生日席にお父様は座ってる。向かって左の壁側に奥からメリディエス公、オッキデンス公、カスミ様、お母様の順に。右の窓側に奥から宰相さん、私、アーテル、スカーレット、オリヴィアの順に座る。私たち、ゲームのスチルやアニメでも大体この並びなんだけど、意味があるのかな?


「ねえねえ、ヴィオ、お父様のお膝においでよ!」


「陛下。話が進みません。少し黙っていただいてよろしいですか。」


 よろしいですか、じゃなくて、黙れって言ってるんだよね、宰相さん。


「ご挨拶が遅れました。小さな聖女様方。私はドゥーベ侯爵家のダスティン・ルーフスと申します。この国の宰相を務めております。以後、お見知り置きを。」


 宰相さんは着座のままだけど、胸に手を当ててアーテルたちに礼をした。ドゥーベ侯爵家はセプテントリオ筆頭。スカーレットの緋色とも違う赤い髪に鴇色の眼、ダンディなアラフィフだ。整えられたお髭が自慢なんだって。でも、髪は赤いのに髭は茶色って、ホントこの世界の遺伝子どんな仕事してんの?


 セプテントリオはドゥーベ、メラク、フェクダ、メグレズ、アリオト、ミザール、アルカイドと続く。前世の北斗七星から名前を取っている。この世界の星の配置も前世と同じ。謎だね。


 筆頭と言っても、完全な上下の序列があるわけではなくて、どちらかというと宗教的な意味合いが強い。例えば、セプテントリオの次席メラク侯爵家は代々大司教を務めていて、宗教儀式の他にも、聖女の召喚を取り仕切ったり、他国に聖女を派遣したり、そんな仕事が任されている。

 それはメラクとドゥーベを繋いだ線を五倍に伸ばした先に北極星があることが由来。この世界の宗教は北極星を神格化して祀っている。これは元々この土地にあった土着宗教らしい。今はそれに建国神話を絡めている。


 ちなみに太陽は始祖たる英雄そのもの、月は初代聖女の象徴だ。世界の指針である北極星のお導きで、世界を照らして朝を(もたら)すのが英雄、癒しの夜を与えるのが聖女ってことらしい。初代聖女は北極星の化身である神々に召喚されたっていうのが建国神話の始まり。

 この世界の人が持ち得ない黒髪黒目は夜の象徴でもあるんだよね。月の満ち欠けは、聖女が独占欲の強かった英雄に隠されてるって捉えられてる。後ろを向いてるから黒髪で何も見えないんだって。神話に関してはモリーに読んでもらった絵本情報なので、私の知ってることはこれくらい。


「ヴァイオレット殿下、聖女の御技を学びたいと仰られましたが、理由をお伺いしてもよろしいですか?」


「ええ。わたくしたちはきのう、アーテルがみわざをつかうところをみたの。すばらしかったわ!わたくし、はじまりのせいじょさまのえほんでみわざにきょうみをもったのだけど、モリーにはもうすこしおおきくなってからでないとダメだといわれていたの。それなのに、おなじねんれいのアーテルはもうみわざをつかえるじゃない!ならば、わたくしたちにもできるのではないかとおもったの。もちろん、かんれいのことはきいているわ。ほんとうは5さいからなのでしょう?おばあさまにも、みわざをつかうにはまりょくのコントロールとせいしんりょくとそうぞうりょくがひつようときいたの。まりょくのことはまだわからないけれど、せいしんりょくとそうぞうりょくなら、わたくしたちもアーテルにひけをとらないはずよ。そのことについて、わたくしはじしんとかくしんをもっているの。みわざをえたらかならず、くにのため、ひとびとのために、ちからをつくすとちかうわ。だから、おとうさま。ルーフスさいしょう。メリディエスこう。オッキデンスこう。わたくしたちがおばあさまにみわざをおしえていただくことをゆるしてほしいの。おねがいいたします!」


 四人で頭を下げた。アーテルも下げてくれたのよ!ありがとー!!


「わたくしからもお願いするわ。この三人なら大丈夫。すぐにアーテルに追いつけるはずよ。」


「そう言われても……まだ二歳だぞ?みんなで遊んでた方が楽しいんじゃないか?」


 お父様は難色を示している。メリディエス公とオッキデンス公もだ。 


「スカーレット。貴女、ジョエルの気を引きたくて御技を覚えたいのではないの?」


 スカーレットのお母様!痛いところを突かれる!娘の考えはまるっとお見通しだな!


「それだけではありません!みわざでしょうきからひとびとをまもる。それはせいじょのまつえいとしてのしめいだとおかあさまはつねづねおっしゃっているではありませんか!わたくしだって、せいじょのまつえいのひとりです。わたくしにみわざをつかえるちからがあるのなら、すこしでもはやくみなさまのおやくにたちたいのです!」


 あ、ジョエルのことは認めるのね。


「オリヴィアは本当にやりたいの?貴女のことだもの。みなさまに合わせてるのではない?聖女の御技は生半(なまなか)な気持ちでやれることではないのよ。本来、5歳で訓練を始めたとしても、実際に治癒をしたり瘴気を払えるようになるのは10歳くらいなの。アーテル様のようにはいかないのよ。」


 そういうものなの?アーテルってやっぱりすごいんだね。チート級魔力と前世の頭があるから?でも、魔力は私たちも多いはずなんだよなぁ。ストーリーが始まる時点では四人とも現役の三公より上だったんだもの。アーテルはその中でも飛び抜けてるけど。


「わたくしはながされているのではございません。わたくしは、わたくしにできることをしたいのです。おうぞくのしがないまったんであるわたくしにもきょうじがございます。つかえるちからをだしおしみするのはよいこととはおもいません。わたくしたちはただしく、せいじょのまつえいとして、ぎむをおこないたいのです。もちろん、そのためのどりょくはおしみません。」


 オッキデンス公が目を瞠ってむすめを見た。オリヴィアが自己主張するのは珍しいのかもしれない。話してる限り、グイグイ行く感じの子じゃないもんね。好きなことにはどっぷりっぽいけど。


「だが、御技の訓練を始めたら、お父様と遊ぶ時間が減るだろう?ヴィオはそれでもいいの?」


 えっ。ちょっとお父様。真剣な面持ちで言うことがそれ!?


「陛下。お黙りくださいと申し上げたはずですが。」


 ほらー!宰相さんに怒られたじゃん!宰相さん、亡くなられたお祖父様の頃からの忠臣だから、お父様も頭が上がらないの。実質、この人が国を治めてるようなもんよ。過労死だけはしないでね、宰相さん。


「ええ!ひどいよ、ダスティン!」


「そもそも執務を放棄して姫殿下や王子殿下のところへ行かれるのがおかしいのです。きちんと決められた時間に仕事をしてください。そうやってちょくちょく逃げるから、まとめた休みが取れないのですよ。」


「うう……」


 お父様が泣きそうになってる。ホント大丈夫か、この国。カスミ様の方から負のオーラを感じて、怖くてそっちを向けないよ。かなり怒ってるな、コレ。横のアーテルは小さく嘆息してる。呆れたよね。呆れるよ、これは。


「では、こうするのはいかが?アーテルは一週間で魔力コントロールを覚えたとカスミ様は仰っておられましたね。みなさまがこちらに滞在する残りの間に、三人が魔力のコントロールが出来るようになれば、資格有りと見做すというのはどうかしら。」


 と、お母様が助け舟を出してくれた。優しいお母様!

 私はダメ押しに瞳を潤ませて上目遣いのお祈りポーズでお父様を見つめた。お父様は腕を組み、うーん、うーん、と頭を上下左右に捻って、わかった、と言ってくれた。


「たーだーし!もし期限までに達成出来なかったら、慣例の5歳まで訓練は我慢すること!それでヴィオは私と一日一回はここに来て遊ぶこと!いいね!?」


 余計な条件を出された。やだよ、そんなの。お父様の相手してる暇があるならアーサーと遊ぶよ。でも、横から二人の歓喜の声が聞こえるから文句が言いづらい。


「わかりましたわ。ありがとうぞんじます、おとうさま。だいすきよ!」


 分かってるから、白い目を向けないでよ、アーテル!

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