17 お父様陛下
今日はあと一話か二話投稿出来たらいいなと思ってます。
不定期で申し訳ないです。よろしくお願いします。
「カミラ、妃殿下に陛下の元へ向かうと伝えてきてちょうだい。」
カスミ様の侍女はカミラと言うのね。これからお世話になりそうだし、しっかり覚えとこ。
カミラはお母様についてきたマーガレットを介して伝言をした。アーサーはモリーに任せるみたい。
お母様がこっちに来ようとしてアーサーも着いてこようとするのをモリーが止めたので、ちょっと泣きそうになってる。いつもならこの時間は一緒に遊んでるから心苦しい。
寂しがり屋なのよ、ウチの弟。ああ、こんな時、身体が二つあればいいのに!
アーサー、ごめんね!将来に関わることだから、お姉ちゃん、ちょっと行ってくるね!あとで騎士団におうまさん見に行こうね!
「お待たせ致しました。参りましょう。」
「待って。この子たちも一緒に行きたいそうよ。聖女の御技を早く覚えたいのですって。わたくし、教えてあげようと思うの。そのためには陛下に許可をもらわねば。」
「まあ!慣例では学びを始めるのは5歳からですわ!アーテルは兼ねてよりカスミ様から特別な娘と手紙で聞いておりましたが、三人は……。」
お母様が珍しく言い淀んだ。お母様は私たちのことをちょっとしっかりしてるくらいの普通の子って思ってるんだろう。
「おかあさま。わたくしたち、きっとできますわ。おばあさまにぜひ、せいじょのみわざをおしえていただきたいんです。そして、くるしんでるかたやつらいおもいをしているかた、いろんなかたのおやくにたちたいの。ほんとうよ。だからおねがい!おとうさまのところへつれていってくださいな!」
「わたくしもですわ!」
「わたくしもです!おうひでんか、おねがいいたします!」
いかにもそれっぽく言っておねだりしてみる。決して魔法を使ってみたい、ただの好奇心とは言えない。
三人一緒に必殺!かわゆく上目遣い!まあ、二歳児なのでどうしても上目遣いにはなりがちだけども。
「ヴィオラ!とっても素晴らしい心がけね!二人もえらいわ!とにかく全員で陛下の執務室へ向かいましょう。少し歩くから、貴女たちはおうちの侍女に抱っこをしてもらってね。あんまり陛下をお待たせするわけにもいきませんから。朝も早くから朝議を放り出してこちらまで来てしまいそうな勢いでしたもの。」
「まあ、あの子ったら!幾つになっても思いつくまま気の向くままで、困ったわねぇ。本当に王様なんてやれているのかしら?」
普通の人がしたら首が吹っ飛びそうな不敬発言だけど、お父様のお母様であるカスミ様だもの。お父様の性格なんてよーくご存知よね。お父様って子どもみたいだもん。ちょっと、いや、かなりやんちゃな小学生男子って感じ。
去年の夏なんかアーサーのためにって、一体王宮のどこで捕まえたのか、カブトムシみたいな昆虫を懐に忍ばせて持ってきたからね!王様が懐に虫入れんな!
だから正直私も、ウチのお父様って本当に王様なの?って思うことがよくある。お母様のことめっちゃ溺愛してるし、アーサールートの出生の秘密とかのシリアスな部分とも噛み合わないの。
カスミ様に会ったから今度はホントにこの親から産まれたの?って疑惑も出てきたわ。どっかで拾ってきたんじゃないの?一応、王家の瞳持ちだからそれはないか。
こっちの世界の遺伝子ってどうなってんのか分かんないけど、髪の色や瞳の色が必ずしもどちらかの親と同じになるわけじゃないんだよね。不思議。
前にちらっと聞いてみたら、先祖の誰かと同じってことは多いけど、世代の近い血縁と同じになるわけじゃないんだって。隔世遺伝ってやつの隔たりがかなり大きいのね。
例えば、セプテントリオは高魔力の保持の他に、近親婚による弊害を無くすために作られた分家で、言い方悪いけど混ぜ物をしてるわけだから、英雄の色である黄金の髪も黄金の瞳も持たない人の方が多い。
それでもたまーに色を持つ子が産まれるらしく、その場合は問答無用で王家か三公に婿入り嫁入りになるらしいよ!人権はどこ!?
ちなみにお母様はストロベリーブロンドに黄金の瞳。お父様はアッシュブロンドに黄金の瞳。私は紫の髪色に黄金の瞳。アーサーはバターブロンドに琥珀色の瞳。
ね?みんなバラバラでしょ?王家と三公は確かに黄金の髪と黄金の瞳が出やすいんだけど、それも絶対じゃないの。
あとは聖女の色である黒髪黒目。これは子孫に遺伝しないと言われてきた。ちゃんとゲームでも語られていた設定。だから、黒髪金眼のアーテルは特別な娘と言われるのも仕方ないの。
この世界の人間で黒を得たのは、有史上、アーテルただ一人。ゲームやアニメのアーテルがものすごく調子に乗っちゃうのも分からないでもないくらい特別なこと。
思わず、アーテルを見た。カスミ様の侍女であろう中年の女性に抱っこされている。ウン、すっごく不服なんだね。思いっ切り無表情だわ。
そんなこと考えてる間に執務室に着いちゃった。ちゃんと行政棟に立ち入るのは何気に私も初めて。新年祝賀とかの顔見せで、それもいつも同じ控室とバルコニーしか行かないもん。
中に入ると、お父様のらしい立派な机が一番奥にあって、書類がサブのテーブルに山積みになっている。王様のお仕事って大変なんだなぁ。でも、肝心のお父様がいらっしゃらない。
その前には補佐官用の机が四つ。その手前、入ってすぐのところに簡易的な応接席。奥の左右に扉があって、左手奥の扉が開いている。すぐにそっちの部屋に通されると、小さな会議室になっていて、お父様と三公のメリディエス公、オッキデンス公が待っていた。あと、宰相さんもいる。
大人がみんな、あれ?って顔してる。まあ、呼ばれたのはアーテルだけだもんね。多分、これが終わったらみんな帰る予定だったんだろう。
「来たか。なぜヴィオたちもいるんだ?お父様に会いたくなったかな?」
お父様せっかちだな。まずみんなに挨拶させてよ。子どもたちは全員降ろされて、三公の家の侍女はカミラを残して退出して行く。ウチの侍女もマーガレットだけが残るみたい。
「おとうさま、おはようございます。」
「はい、おはよう。で、なんで来たの?」
いや、だから、挨拶まず聞いてよ。控えてるでしょうが、他の子どもたちが。みんなも困った顔してる。仕方ないなぁ。
あっ!アーテル!白い目でお父様を見ないで!これでも王様だから!スカーレットとオリヴィアも似たような目をしてる!お父様、お願いだから威厳を持って!
「ジョージ。まずは子どもたちの挨拶を受けなさい。」
「はっ、母上!」
扉が閉められてほぼ身内だけになったからか、カスミ様はお父様を名前で読んだ。私はママに怒られる父親を見る羽目になった。今の私はきっとアーテルみたいな顔をしている。
「ジョージ五世陛下にご挨拶申し上げます。わたくしはオリエンスが第一女アーテル・ステラでございます。お呼びにより参上いたしました。」
「わたくしはメリディエスがだいいちじょ、スカーレット・ルキアでございます。」
「わたくしはオッキデンスがだいいちじょ、オリヴィア・グレースでございます。」
「わたくしたちはおとうさまにおねがいがあってまいりました。」
「えっ!そうなの!?何?何!?ヴィオのお願いなら何でも聞いちゃうよ!」
「ジョージ!」
うぐぅ、というこの国最高の貴人に似つかわしくない声を出して、お父様は肩をすくめた。ホント大丈夫かな、この国。
「きのう、アーテルがせいじょのみわざをつかったことを、おとうさまもおききになったでしょう?わたくしたちも、おばあさまにみわざをさずけていただきたいのです。それには、おとうさまやふたりのおかあさまがたにきょかをいただかねばならないといわれましたの。おとうさま、おねがいいたします。わたくしたちにもみわざをまなぶきょかをくださいませ!」
「おねがいいたします!」
「おねがいいたします!」
三人で保護者に頭を下げた。お父様、お願いだからウンって言って!
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