166 ヴィオライト属性検証③
お楽しみいただければ幸いです。
よろしくお願いします。
紫の魔石はまた大騒ぎになる案件になってしまった。
そんなわけで、お父様の執務室なう。まだ議会は魔力訓練に時間を費やしているらしい。大丈夫か、この国。
理論上では何でも具現化出来ますって言ったら、お父様はさすがの想像力で、まあ、色んな物をお出しになる。
あとは御技にも使える点についてはね。魔物の討伐に向いてるなって。戦いながら浄化出来れば近接戦闘も出来るしって。
オリヴィアに至っては、中の粒子に運動を促してプラズマ発光させることに成功した。
蛍光灯やんけ!懐かしい光ですなぁ!光源石だと柔らかい白熱電球系の灯りだからね!
何で男子って光る物とか好きなんだろうね。子どもたちだけじゃなくて大人も食いついた。
ほこりがくっついてくので帯電してるのは確認出来たから、多分、収束性と指向性をイメージで付与すれば動電気も作れると思う。電気は電子が自由に動き回ってる状態だからね。
「電気とやらは何に使えるんだ?」
「色んなものに使えますけれど、石が小さいので実用的な利用法は難しいかと存じます。」
「そうか。異界の技術で再現してみたいものがたくさんあるんだがな。」
「お兄様!貴重な魔石に汚い手で触らないでくださいまし!」
「あ、ああ、分かったよ。」
ユースタスは大人がいる手前なのか、素直にゴシゴシとズボンに手を擦り付けて(それで綺麗になったのか?)帯電した魔石を触ろうとしたら……
「いてぇっ!」
当然ですが静電気が起きます。痛い目に合った方がいいって物理か!
「リヴィ!お前なんかしたろ!」
「あらいやだ。ただの静電気ですわ。言いがかりはよしてくださいな。」
「静電気ってなんだよ。」
「乾燥している時期にセーターを脱ぐとバチバチと音がする、あれですわ。ドアノブなどでも起こるでしょう?」
「わざと静電気が起きるやつを触らせたな!」
「お兄様がその石をお選びになったのでしょう?」
「こんの!」
「ユースタス、やめなよ。こんなところで。」
「くっ!」
ふふん、という顔をしてるオリヴィアを見て、アーテルとスカーレットは頭が痛いといった風情でこめかみを押さえている。それじゃあ、ダスティンになっちゃうよ?
「あのビリビリしたやつか。地味に痛いよな。」
お父様は腕を組んで頷いた。と思ったら、ハッと顔を上げた。
「剣にその効果を付与出来ないだろうか?」
「金属なので出来ると思いますが、持ち手は電気を通さないものにしなければ自分も感電してしまいますわ。」
「なるほど。研究所に相談してみよう。実現出来れば銘をつけたいな。雷は電気と同じなのだろう?」
「まあ、そうですわね。」
「雷剣……いや、そのまま過ぎるな。雷鳴剣?音は雷の轟音とは程遠いし……むう。」
「紫電!紫電ですわ!」
「シデン?」
「紫の雷という意味で紫電ですわ、陛下。異界の、伝説の宝刀です!」
「戦闘機の名前じゃないの?」
「あれは三国志に出てくる呉の皇帝孫権の刀の名前から取ってるのよ。」
アーテルは戦闘機はご存知のようでも由来はご存知なかったようだ。トコちゃんパパ、お呼ばれして三国志の映画に出てなかった?
「孫権って、あんまりいい印象ないわよね。」
「ダークヒーローっぽい感じだよね。」
「だけど、臣下を使うことには長けてたのよ。」
それはちょっとお父様っぽい。臣下を上手く使ってるって言うよりは、いい臣下に支えてもらってなんとかやってるって感じだけど。
「紫電か……いい。いいな!オリヴィアの命名はいつもながら上手い。褒めてつかわそう。」
「ありがとう存じます。光栄ですわ。」
「もう石の通称も紫電石でよくない?」
「うむ。他の通称とも釣り合いが取れている。その案で行こう。」
無事に菫石を回避出来て私は一安心。
「属性は何になるのかしら。電気?」
「一般に分かりづらいから雷?」
「だが、一番の特徴は魔力を御技に変換することだ。他は副産物だろう?」
「ええ、そうですわ。ですが、定期的に具現化を行なって、魔石に残った粒子、不純物?を取り除くことも使用上の注意として伝えなければなりません。それと可燃性物質は内包されてはいないようです。まあ、それも、具現化で作ろうと思えば作れますが。」
「水ならいくらあっても困らない。その辺りは使用者の判断に任せよう。」
「間違っても瘴気だけは想像しないでくださいませ。理論上は瘴気作成も可能でございますからね。」
「分かった。留意しよう。ということは、ジンクの瘴気の広がりは聖金ではなく、紫電石の方が原因としては大きかったのかな?」
「その可能性はございますね。相乗効果でしょうか。」
「余り広めるようなものではないな。ジンクにもその旨、伝えておこう。」
「お願いいたします。それではわたくしたちは下がらせていただきますわ。」
「ああ、そうだ。ヴィオ、コレ、聖金の用途リスト。確認しておいてくれる?」
「……ほとんどわたくしの手に残りませんけれど。」
「ごめんね。こればっかりはお父様にもどうにも出来ないんだ。今回作る宝飾の分は確保してあるからね。形のいいところを残しておくから、部屋に飾っておきなさい。アルテミスお母さんもその方が喜ぶだろう。」
アレクが喜ぶだろう、じゃないんですね。アルテミスお母さんは喜びはしないと思います、お父様。
後日報告を聞いたところ、あんまり採れる物でもないので、ジンクとウチの秘密にしようということになった。
属性は無。何でもアリということで、無属性とするようだ。意味的には有属性の方が近いけど、どっちにしろ矛盾するか。
あ、やば。アレクの誕生日プレゼントの分はどうしたらいいか聞くの忘れた。他の魔石に変えてもらった方がいいかな。
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