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148 土地探し

お楽しみいただければ幸いです。

よろしくお願いします。

 例の身元調査から数日後、弟子五人の調査を行った。御技を体験させてやると言って連れ出して来てもらった。五人のうち二人が難色を示したそうだが、拒否権はないと暗に言えば素直に従ったらしい。

 結局、その二人はティターン本国との繋がりがあった。司法府と財部、民部の官僚との関係が露見し、その官僚数名は処分、新たにダミーの官僚を用意して、ティターン側に疑われぬようにダブルスパイをすることで処刑を免ぜられた。


 アウルムの官僚がどのような処分を受けたのかは教えてもらえなかった。ただ、炯眼でどこまで教えたのかとか他に裏切り者がいないのかとかの取り調べの手伝いはさせられたけど。

 容疑者は頭に袋を被せられて顔が見えないようにしてくれたのは、私たちへの、特にアーテルへの配慮だったのだろう。裁判員でPTSD訴える人もいるから。ダスティンは(すみれ)の職業知ってるから、私だけならあそこまでしてくれなかったと思う。


 魔力新理論の話はティターンに伝わっている。それなりの衝撃だった。


 けれど、下級文官だけで済んでよかった。増幅器を使えば効率よく魔力を使えるようになることはまだ一部の人間しか知らない。タンタルに同行した者の他にはお父様とダスティン、お父様の補佐官、私の補佐官、他数名。

 騎士団でも、正式発表があるまでは第一師団に緘口令を敷いている。知ってるのは師団長と副師団長クラス。なんか訓練する順番でずっとモメているらしい。じゃんけんかアミダで決めれば?


 まあ、そんなこんなで、あっという間に夏が終わり。


 といってもまだ暑いけど!九月!聖女学校第二期!

 ()()()()使()()()使い手対象の聖女学校第二期が始まりました!


 真夏は避けての開校です。来月は地方在住者向けの第三期があります。


 どちらも講師は香澄様とアーテル、そしてお母様とドロシー。私は忙しいんだからやんなくていいって言われちった。そのための秘書ですよって。なんか違う気もするけど。

 お母様もご自分ではまだまだ修行中とは言ってるけど初級に関してはバッチリなので、初級の全コース。ドロシーもとっくの昔に初級はマスターしてるのでお母様の補佐。人数の多い中級を香澄様とアーテル。

 正直、香澄様は講師に向いてないと思うんだけど……ブートキャンプだし……説明係のアーテルとセットだから……。


 とりあえず、言い出しっぺなので初日に挨拶だけはすることになった。国家の肝入り事業だからね!お母様と香澄様で事足りることだけど!


 そして、今日は来年度の幼年学校移転先の物件巡り。


 ダスティン、コーデリア先生、レナードの四人で土地探しです。


 今使ってるところは普通の託児所にすることになったの。

 でもさー、今から土地探して建物建てるのなんて間に合うの?って言ったら、秋の収穫祭でまたオリエンス三兄弟とレナードと選抜した騎士で基礎工事から躯体工事まで済ませるから大丈夫と言われた。


 あれ?オリエンス三兄弟って王様と貴族だよね?大工だっけ?アウルム王国って名前の工務店じゃないよね?レナードは騎士団長だよね?でも、この面子、大工というより重機かもしれない。


 ダスティンとチャールズは予算が削減出来るとウハウハだよ。今後も公共工事はコレでいこう、だって。自分たちの王様なんだと思ってんのかな。


 王都貴族街の西の森に近い空き地。一応、王家所有の土地。王家主催の狩りの催しとかに使うらしいけど、最近は年に一度の春にしか使わない。

 王立学院も東の森の似たようなところに建ててある。そっちは領主科の狩りの授業(接待で主催したりお呼ばれしたりするからその練習)で使ってる。

 年度末の三月に社交界シーズンで王都に来ている保護者を集めて研究発表会があるんだけど、第五学年男子はそこで狩りを主催して保護者のおもてなしをしなければならないらしい。ちなみに女子はお茶会の主催。文化祭兼授業参観だね。


 王立学院の一学年は案外少ない。一クラス30〜40人で2〜3クラスくらい。子どもの少ない年は1クラスで済むこともあるらしい。多い時は5クラス。

 ゲームやアニメだと5クラスだったなと思ったら、王族に子どもが生まれる年はベビーラッシュが起きるそうだ。お近付きになりたいんだね、みんな。


 地方貴族の跡継ぎ以外の子は他所の家に婿入り嫁入りするか、王都に来て文官になったり騎士になったり、貴族籍を返上して平民になったりと様々だ。

 王都の貴族は一代貴族の爵位を貰って王宮勤めを選ぶ人が多いけど。まあ、大体そのまま親と似たような仕事を選ぶから、王都の貴族の数は土地の広さの割に結構多い気がする。


 幼年学校は根回しの結果、低年齢預かりを元老院に渋られて、来年度から、日本の小学校と同じ七歳〜十二歳を義務化することになった。秋の収穫祭の時期の議会で承認されるらしい。専制君主政治は決まるのも早けりゃやるのも早いね。ココだけは感謝だわ。

 その下の年齢は普通に託児所として、今使ってる建物を使用する。それなら運動場もいらないし。


 託児所の預かり年齢は基本的に二歳からになった。預けられるのは働く人のみ。じゃないと、例の噂(私とアーサーも通うんじゃないかって話ね)も相まって、このままじゃ申し込みが殺到しそうらしい。

 それと、王都の貴族は年子や二学年差で産む人が多いらしいから、0歳から預かって復職してもどうせすぐに産休になるだろうと言われた。

 兄弟児のみ二歳未満も可にするかは、実際にやってみないと分からないって。私も保育の知識はさっぱりだから何も言えない。

 あ、ちなみに、今預かってる子の中で共働きじゃない子もいるけど、それはそのまま継続。


 そんなわけで、ここ、いい立地じゃない?もう、ここでよくない?


「どうしてぜんかいここがこうほちにならなかったの?」


「あの時は建物付きで考えておりましたので、考慮外でした。急いで用意しなければならなかったので。」


 そういえばそうだった。息子を通わせてるドロシー曰く、とても楽しいと言っているらしい。でも、たまに友だちと喧嘩したとか言うからビックリするって。


「もうここでいいわよ。ほかはやっぱりうんどうじょうがよういできないのでしょ?」


「はい。では、早速手配致しましょう。工部に急ぎで図面を上げさせます。」


「おねがいね。」


 どっかの研究室の方々の要望を聞くのはほどほどに頼みます。

 教員も増やさなきゃならなくなって、大体夏明け〜収穫祭が終わった頃にお役御免になる家庭教師が多いらしいので、そこを狙っていく。

 冬〜春は、地方貴族は入寮前に家族の時間を大切にして、ウインターレジャーに興じたり、社交界シーズンに入ればお茶会なんかで同級生の家と交流して先に一緒に行動出来る相手を見繕ったりとするんだそう。

 出来が悪いと三月ギリギリまで家庭教師がつくって。がんばれ。


 王都の家庭教師同士の伝手を辿って教員募集かけたら人が殺到してる。家庭教師の需要が減るから当然だけどさ。

 子どもが大きくなって時間が出来た奥様、研究室に入った事で家から半ば勘当状態で食い扶持を稼がなければならない御令嬢、研究で食べて行くことをあきらめ家庭教師一本でやっていくつもりだった青年、王立学院の研究室を弟子に任せて新しい教育事業に乗っかりたい元教授、騎士団を退役して第二の人生を選ぶベテラン騎士、年齢も性別もそれなりにバランス良く集まっている。


 マリオン先生みたいな御令嬢が他にもいることに驚いた。担任は持たない非常勤講師だけど、安定収入は有難いらしい。王立学院の働き口はいつも奪い合いで、大変らしいから。

 研究室に寝泊まりしてる強者もいるので、独身用の教員宿舎も考えてる。ここなら広いから敷地内に建てられそうだしね。


「校舎、第一体育館、第二体育館、室内プール、教員宿舎、運動場、馬場、厩舎。これら全て敷地に用意出来ます。厩番、用務員、送迎馬車の馭者など平民の募集もかけております。」


「ありがとう。ほんとうにいいところね、ここ。もりはあまりこわさないでほしいわ。」


「休み時間に森へ入って遊ぶ子どももおりますでしょう。安全の確保が大事ですな。」


「少し入ったところに池がごさいますものね。大人なら足もつきますけれど、低学年の児童には気をつけなければ。」


「じゅぎょうまえのてんこはあたりまえにしてもらうとして、もりへはいることをとめられるさくみたいなものをつけられないかしら?しんちょうよりたかいもの。」


「その程度の柵では高学年になれば男子なら身体強化で越えられましょう。」


「そうですね。研究室の者に相談してみましょう。」


「わるいわね。けんきゅうしつのかたたちにはいつもぎょうむがいのめんどうなたのみごとをしてるきがするわ。いちどおれいにいったほうがいいかしら?」


「必要御座いません。あの者たちからの面会依頼をこちらから断ってるくらいなので。」


「そうだったの?いくらなんでもあんまりでは?」


 確かに猫や雛のことで避けてはいたけどさぁ。最近、アレコレ頼む事も増えてきたから、一回くらい挨拶した方がいいかなって思ってたんだよ。


「実験台にされたいですか?」


「されたくありません。」


 レナードの補足によると、研究室の人たちは王族への畏敬みたいなものはないらしい。隙あらばお父様のことも研究しようとする、本当のマッドサイエンティストの集まりだそうだ。

 ハワード先生やマリオン先生みたいなのの集まりなのか。恐ろしい。


 王都東側の方に住んでる子は通学が大変かもしれないけど、こちらから送迎馬車を出すことになったので、がんばって早起きして欲しい。


 あとはねー、夏休みと冬休みね。王立学院に準拠してるから長期休みは作る予定なんだけど、共働きのご家庭のことも考えて、事前申し込みしてくれれば子どもの預かりもすることになった。授業はしないけど。


 学校が完全に休みになるのは年末年始の一週間と、春の大人が一番忙しい社交界シーズンの最初の一週間と、秋の収穫祭の一週間。先生たちには夏休みに交代で二週間の長期休暇を取ってもらう。


 あとねー、修学旅行!やりたいね!


 転移陣の魔力くらいは私が出してあげるよ!体験は何物にも変え難い学びだもん!是非、やって欲しい。

 引率の先生がいるにしても、貴族の子どもが集団で他国へ行くのは危ないから、国内旅行かなぁ。どこがいいかな?私も国内のことよく分かってないからなぁ。


 気分良く執務室に帰って来て、ダスティンに会議室に連行され、衝撃的な事実を伝えられる。


「アーサー殿下とアーテル様には幼年学校に通って頂きます。」


「はい?」


「幼年学校は王立学院に準拠しているので当然では御座いませんか?」


「え、お、おとうさまとおかあさまはなんて?」


「とても喜んでおられますが?陛下は同性の友人とも遊べた方が宜しかろうとアーサー様には託児所もご検討されていたくらいですよ。警備の都合であきらめて頂きましたが。」


「ええー、しらなかった……。えっ!?ていうか、それならわたしもようねんがっこうにかよわないとマズイんじゃないの!?」


「一応肩書きが名誉理事長になっておりますが、通われたいのですか?」


「通いたいような、通いたくないような……。意味がないとは思うけど。」


「でしょうな。王立学院ですら殆ど意味がないというのに。早く全科目合格して頂きたいくらいです。」


「いくらなんでもはやすぎない?」


「基礎知識をいちいち調べたり補佐官に聞く方が面倒ではありませんか?」


「うぐぅ、それはそうなんだけど。」


「魔法関連は後回しで結構です。まずは執務に必要なことから身につけて下さい。」


「わお、ごうりしゅぎ。ちりとこくしは、たぶん、いまならごうかくできるわよ。」


「ほう。素晴らしいですな。」


「おかげさまではちがつはべんきょうづけだったからね!」


「大変結構なことです。」


 ん?ていうか、アーテルも行くの?メンタル大丈夫かなぁ。


「アーテルはなんて?」


「深いため息をおつきになられておりましたな。」


 それで済んでよかったね!私なら罵詈雑言の嵐だったわ!

お読みいただきありがとうございました!

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