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12 悪役令嬢の晩餐

アーサー王子と円卓の悪役令嬢回。

よろしくお願いします。

 解散して、自室へ戻る途中。お母様に言われてしまった。


「ヴィオラ、あなた、あんなに大人びた話し方が出来たのね。」


 正直、マズったなと思った。やっちまったなって。どうやって誤魔化そうかな。あんなんやった後で子どもっぽく振る舞うのも馬鹿らしい気もするし。でも、いきなり切り替えても疑われそうだしなぁ。


 今はマーガレットに抱き上げられての移動中なんだけど、そのせいで少し後ろを歩くお母様と視線の高さがバッチリ合っちゃって目を逸らせない。ちなみにアーサーはモリーの腕の中で爆睡中です。天使の寝顔!


「怒っているわけではないのよ。ただ、驚いたの。あなたは年の割に賢い子だとは思っていたけれど、挨拶のようなあんな風に……長く話すところを今まで見たことがなかったから。」


 私が眉間に皺を寄せたものだから、お母様は私が怒られたと思って泣きそうになったんだと思ったみたい。すみません、誤魔化し方を考えていただけです。普段あんな長文で話さないから疑問に思ったのね。完全に調整ミスだわ。


「おかあさまのまねなの。じょうずにできましたか?」


「ええ、とっても。」


「えへへ。」


 えへへ。前世では絶対にしなかった笑い方。あー、ゴリゴリガリガリ心が削れる音がするよう!


 部屋に戻るとアーサーと同じベッドに寝かされた。子供部屋は寝室以外にもプレイルームや応接間があって、どんだけ場所使うんじゃい!って最初は思ったけど、王宮にはそんなちょっとしか使わないような部屋があちこちにあるので、そんなモンみたいです。

 ちなみにこの寝室はお昼寝用の寝室で、他にも夜寝るための寝室があります。私たちが大きくなって昼寝しなくなると使われなくなるんだって。弟妹が出来ればその子たちが使うのかもしれないけど、ゲームでもアニメでもそんなのいなかったから、次に使われるのはいつになることやら。


「さあ、夜はお楽しみが待っているのでしょう?少しお休みなさい。」


「はい。おやすみなさい、おかあさま。」


 さすがに疲れていたのか、私はすぐに眠りについた。推し(アーサー)の温もりを感じながら……。


 ハイ、ふっかぁーつ!!現在、午後5時!いつもよりゆっくり昼寝してしまったわ。起きたらお母様の晩餐会のお支度が始まっていた。モリーが起こしてくれたんだけど、どうやら気を遣ってもらったようだ。いやはや、申し訳ない。

 夜、寝られるかな?でも、今夜はお泊まり会だから、寝るのが少し遅くなっても文句は言われない……はず?


 マーガレットはお母様の、つまり王妃付き筆頭侍女で、モリーも一応お母様の侍女だけど、主に私たちの子守りをしてくれてる。子守りと言っても私が手がかからないもんだから、ほとんどがアーサーの世話。

 乳母はルーシーという名でモリーの姉なんだけど(モリーは愛称だから本当はメアリーなのに、王宮には他にもメアリーさんが何人かいるのでモリーって呼ばれてる)、離乳食から幼児食に移った頃に二人目が欲しい!と旦那さんに言われて、見事妊娠。それで今産休中なの。ルーシー、子どもが離乳したらすぐに戻りますからね!って言ってたけど、自分の子どものことも大事にして欲しいな。

 まあ、そんな関係で、よく似た姉妹のモリーにアーサーが懐いてるからって理由でお世話係に任命された。この姉妹にはとてもお世話になっています。私に絵本で文字を教えてくれたのもモリーだしね。ありがたいよ、本当。


 今日の不寝番もモリーのはず。そんなシフトで大丈夫なの?と思わざるを得ない。私たちの入浴から夕食中に仮眠を取るらしいけど。

 というわけで、現在お風呂におります。身体、洗われてます。正直、自分でやりたい。でも、前世でもまだこの年代なら大人に洗ってもらう年頃だよね。いや、身分的に大人になっても続くのかもしれないけど。

 お風呂はさすがにアーサーと別々に入るので、そこだけは安心している。裸、おむつの頃に見たことはあるけど、だからと言って、ねえ?いや、変な嗜好は持ってないですけどね。なんか悪いじゃん、アーサーに。


 さて、綺麗に身支度を整えてもらって、お夕飯の時間。貴族や王族の子どもは大人とは別に食べるんだけど、ウチは割とゆるくて、たまに家族団欒しながらいただく日もある。

 お父様が朝ご飯を抜いて執務してると知って、ちゃんと食べなきゃダメ!と私が怒ったら、じゃあ、ヴィオが一緒に食べてくれるなら食べる!じゃなきゃ食べない!と我儘(ウチの家族で一番我儘なのはお父様だと思う)を言い出して、なし崩し的に他の時間の食事も共にするようになった。

 侍従さんには、普段、碌に食事を摂られない陛下が……と感謝されたわ。苦労をかけてごめんなさい。今度、最高級の胃薬をプレゼントしよう。


 子供部屋の食事室に着いたら、アーサーと、何故かアーテルもいた。お話していたのかな?アーサーは知らない子に興味津々で、一生懸命おしゃべりしている。かわいっ!

 アーテルも作り笑顔だろうけど微笑みながらアーサーの話を聞いている。どうやら馬の話をしているらしい。アーサーは馬が大好きなのよ。確かにかわいいよね、馬。頭いいし。


「あっ、ゔぃお!」


 アーサーが私に気付いて満面の笑みを向けた!108のダメージ!あ、HPが0になるとメロメロでヘロヘロになります。


「ご機嫌よう、ヴィオラ様。着座のまま失礼致します。」


 アーテルも笑みを向ける。昼間のお散歩より周りに大人がいるからな。猫被ってんな、コリャ。


「ごきげんよう。アーテルもいっしょにおしょくじするのかしら?」


「はい。陛下が、ひとりの食事は寂しいだろうからと気を遣ってくださって。ヴィオラ様がお嫌でしたらすぐに退室致します。」


「かまわなくてよ。だけど、りきゅうにかえっておやすみできた?とんぼがえりだったのではなくて?」


「帰りがけにカスミ様が陛下に引き止められたので、そのまま王宮で休ませていただいておりました。他の二人は共にメリディエス公の離宮に戻ったようなので、食事を済ませたらこちらにいらっしゃると聞いております。」


 仲良いなぁ、あの二人。私も混ぜて欲しい。大人たちの晩餐会まではあと一時間くらい時間があるから、その時に一緒に馬車で来るんだろうな。三公の離宮は王宮の敷地内とはいえ、メインパレスからはそこそこ距離がある。丘と言うべきか小山と言うべきか、王宮はその一帯全てが敷地。各家の離宮からメインパレスの最奥にあるプライベートな空間までは結構な距離あるから、敷地内は馬車移動なのよ。建物の中が複雑で真っ直ぐな道がないし。


「ゔぃお、たべよ!」


 おっと、待たせすぎたかな?この腹ペコさんめ!


「そうね。とりあえず、しょくじをはじめましょう。アーテル、くわしいはなしはあとにしましょう。」


「承知致しました。」


 まだまだアーテルは堅苦しい。転生仲間なんだから、もっと砕けた感じに接して欲しいのにな。


 私たちは四人がけの円卓に座って、配膳台の食事が取り分けられるところを見た。初代聖女が、食事方法が手づかみだったのを見て衝撃を受けたらしい。それじゃあ非衛生的で野蛮だってことで、カトラリーの普及とか食事前の手洗いとか、色々この世界の人に教えたんだって。

 コース料理も割と新しい文化で、子どもの食事は昔ながらの取り分けスタイル。コース料理は数代前の聖女が取り入れたらしい。

 狩猟民族だからか、昔は野菜もあんまり食べられてなかったみたいで、貧しい人が食べるものだと思われていた時代が長かったらしい。それも初代聖女が栄養バランスの重要性を説いて食べさせるようにしたってモリーが言ってた。


 王宮の中しか知らないけど、今は近世くらいの文化レベルがあると思う。初代聖女は中世くらいの時期に来たから、それはそれは大変だっただろう。病気にならなくてよかったね!

 聖女は病気しないんだってさ。自分の怪我は治せないけど、自然治癒力がすごいんだって!……って、あれ?じゃあ、なんでカスミ様は車椅子でいらしたのかしら?多少の怪我ならアーテルが治せるし、なんか理由があるの?


「ねえ、アーテル。あなた、みわざがつかえるのに、どうしておばあさまをなおしてさしあげないの?」


 アーテルは顔をしかめた。あ、やっぱり何か原因があるのか。


「申し訳ありません、わたくしの力の及ばない限りのものでして。それについては心苦しく思っております。」


「そんなにひどいおけがをされたの?」


「……そうですね。」


 なぁーんか含みがあるなぁ。怪しい。アーテルは何かと秘密が多いな。

 ま、いっか。後で聞こっと。

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