1 二次元と二.五次元と三次元の狭間で
初めて一人称で書いてみました。
ドタバタコメディ、たまにシリアスの予定です。
よろしくお願いします。
―幕が降りる。
全力の拍手で美々しい男女を見送る。目からは滂沱の涙。
はー、2.5次元の舞台って初めて見たけど、すごいね!キャラクターが目の前で動いて喋ってるってホントにすごい!役者さんたちのエネルギーに圧倒されたわ!感動で涙が止まらない!観劇で感激!なんちゃって!
ワタクシ、高橋すみれと申します。しがない公務員でございます。アラフォーに片足つっこみつつある喪女であります。公的にはニッコリ笑ってアラサーで通しております。本日はお休みを利用して、最近ハマってる乙女ゲームの舞台に初参戦しておりました。
深夜アニメから入ったクチですけど、それまで乙女ゲームなんてやったことなかったのに今ではどっぷり沼に浸かってます。無印は学生の頃に出たシリーズなんですけどね。その頃はそういうものに縁がなくて。大人になってからハマると際限ないですね!色んな意味で!
いやー、ホンッッッットーに、すんばらしかった!二次元の壁は超えられないと思ってたけど、そんなことなかった!!
何より推しが!そこに!いる!
歌って踊って喋って笑って口説いて嫉妬して苦悩して努力して世界を救って幸せになっている!そして、それを観ている私も救われる!!もう少し余韻に浸っていたい!席から動けない!
周りの人もそう思ってるようで、隣に座ってるお嬢さんもティッシュじゃ足りなくなったのか、ハンカチ取り出して鼻をかんでいる。ああー、分かるよ!うんうん!横向いて頷いてたら目があった。苦笑いだったけど、あちらも頷いてくれた。
きっと君は私と親子ほど年が違うんだろうけど、そんな子と感動を共有できるなんて、舞台ってホントーにホントーに…!(以下省略)
反対側のお嬢さんは、持参したぬいぐるみを片手で抱きしめて、反対の手でスマホにすごい勢いで何やら書き込んでいる。感想かな?この感動、色んな人に伝えたいよね!カバンにたくさんの缶バッヂをつけてる〜。私とは推しが違うみたい。
前の席の人もスマホ見てるけど、なんだか様子が違う?感動しなかったの?こんなに素晴らしかったのに?向こうが立ち上がったので思わず見てしまった。バッグを席に置いて、スマホをしまって何かを取り出した。
あ、首からなんか提げた。もしかして関係者!?どこかで見覚えあるような……あ!昔好きだった歌手の人!そうだ、今は現役引退して楽曲提供してるんだよね!この舞台の歌も、この人が作ったんだった!!サインもらいたいけど、場違いだよね……?
ってなことを考えていたら、下からドン!と突き上げる衝撃が来た。何、地震!?
「きゃあああ!」
とあちこちで悲鳴が起きる。歌手の人も立っていられないようで、背もたれに掴まって頭を伏せた。私も膝の上の鞄を抱きしめ、背を丸くする。
長い。まだ揺れるの!?
ガン!バキバキ!ガコン!と頭上で大きな音がした。
後ろから悲鳴が聞こえた瞬間、丸めた背中に衝撃を受けた。
私、高橋すみれ。34歳。もうすぐ35歳。
推しよ、幸せをありがとう。
そうして私は、異世界へと旅立ったのであった。
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