キンセンカ
なぜ、なぜ、私はあなたを……
急所を短刀で刺されて地面にたおれこみ、一面を赤に染める。
近くにあったキンセンカの花の色をより鮮やかな赤に染まる。
「私は、あなたを……」
横たわる身体を冷たい雨が滴り落ちる
もう動かす力が残っていない
愛しい、愛しい彼が私を……
霞む景色
映る、愛しい彼と女の姿
彼のためにどれだけ時間を捧げたのか……
私の何がいけなかったのか
でも、彼に愛人がいたのは知っていた
それを直したところで元には……
目をそっと閉じようとした時
タッタッ
愛しい彼が私に近づいた
ドクン ドクン
彼に命を奪われるというのに、心臓は高まる
ドサッ
彼の手から私の側に“何か“が落とされた
霞む目でそれを見つめる
!
「……っ」
何も感じなくなった身体に震えるような感覚が襲った
“何か“を触れようと身体を動かそうとするが身体は動かない
目から赤い血が流れる
その血をそっと近くのキンセンカが吸い上げその瞬間きれいに咲き誇った。
「今日からここは、私たちの家ね!あの人と本当にわかれてくれるなんて嬉しいわ」
女は笑った
「君の願いだからね、さすがに幼子を手にかけるのは良心が痛んだが、君との新しい命を授かればいいからね」
女のお腹を男が触れる
「もう、エッチなんだから。でも、その子もお母さんといけてよかったんじゃないの?」
クスクス
「そうだな」
男女は、何事もなかったかのように床についた
深夜2時
ヒュルーヒュルー
「さむっ」
冷たい風に目が覚めた
「どこか、閉め忘れか?」
男は、女を起こさないように部屋からでて扉を一つ一つ確認する。
「どこも、空いてないな……急に冷えたのか?」
床に戻ってくる
女の布団の中に入る
ヌルリ ヒンヤリ
「うっ、気持ち悪い。なんだ?」
思わず布団を蹴り飛ばした
ゴロゴロ ピカリ
「!」
辺りが一瞬雷で明るくなる
ドスン
男が尻餅をついた
「おっ、おい!」
震えた声で女に呼び掛ける
女の身体から血が溢れていく
よく見ると、女の身体には見覚えのある短刀が刺さっていた
ゾクリ
「……」
ムクリ
女の身体が突然起き上がった
ゴロゴロ
ギィー
男へと女の身体は向きをかえた
「ドウシテ、ユルサナい」
片言で男にそういうと、男に襲いかかった
「くっ、くるなー化け物!」
男はとっさに枕元の刀をとりそれで女を切った
それと同時に男に女の血しぶきが飛ぶ
「うっ、うわぁー」
男は、もたつきながら部屋からでた
ガッ、ドサッ
男は、何かにつまずき倒れた。
「うっ、」
つまずいたものを見る
それと同時に血の気が引いていく
「すっ、すまなかった」
ズルズル
「オギャーオギャー」
赤子が血まみれで泣き叫ぶ
赤子には生気が感じられない
ズルズル
「コノコがナニをシタノ?」
血まみれの女が身体を引きずりながら男に近づいた
男は立ち上がれずに後ろへと後ずさる
ズルズル
「うっ、」
ズルズル
女との距離が徐々に近づき、そして、
「ツカマエタ」
女はニヤリと笑った
「おい、聞いたか?キンセンカ屋敷の話」
刀を携えた男が近くにいる同僚に声をかけた
「キンセンカ屋敷の話か?確かその屋敷を知っているものの話じゃあ元々そこにキンセンカなんて咲いてなかったとか……」
「そうそう、俺も見に行ったが見事なキンセンカに覆われた屋敷だった。話はそれだけじゃないが……」
「そこの奥さんと子どもが殺されていたんだろ?その遺体の周りにもこの花が咲いてたとかってきいたが」
「あぁ、だから、あの屋敷で見つかった男女の遺体は、奥さんの呪いとかいわれてる。お前はどう思う?」
「先に奥さんと子どもを殺してたんだろ。確かさ……そこで、のうのうと浮気相手と暮らそうとしてたならその可能性もあるだろ」
「そうだよなー、それに男女の死に顔は恐怖で歪んでたみたいだし……男に至っては髪は、真っ白だったそうだしなー」
「まぁ、自業自得だよ。それより、お前他人事じゃないだろ」
「ん?」
「お前今浮気してるだろ、奥さん妊娠してるのに……もうひとつの噂知らないのか?」
「なになあったか?」
「愛する人を裏切ったら、あの屋敷で願掛けすると変わりに復讐してくれるっていう噂だよ!」
「嘘だろ、そんなの。俺なんともないし」
「ならいいけど、それより雨降りそうだから俺はそろそろ帰るわ」
「じゃあな、俺もそろそろ帰るか」
ガサ
足に何かぶつかった
「ん?」
視線を足元に向ける
「キンセンカ?こんなところに生えてたっけ?」
男は首をかしげた。
「まぁいいか、うわっ雨が降り始めやがった!」
男は家に向けて走り出す。
ザーザー
ヒタヒタ
ポタポタ
男は気づかない
いつの間にか雨音に混じって聞こえる異音に
ザーザー
ヒタヒタ
ポタポタ
ピタリ
「ミーツケタ」
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(*´∀`*)