表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Rise in Labyricia  作者: 爽風
第1章 ダンジョン始動
7/10

迫る仇討ちの刃



ビ───!ビ───!


「っ!?」



 俺が昼寝を始めてしばらくたった頃、突然警報がなり響いた。

 侵入者だ。あらかじめ、誰か来た時に鳴るように設定しておいたのだ。



「来たか!!」


「はい!ステータス確認します!……えっ、嘘」


「久しぶりの客だな。どんなやつが来たんだ…………って、どうした?アスナ……なっ」



 そいつのステータスを見て、俺達は絶句した。




───────────────────────

ユスフ

 LV:28

 種族:人間

 状態:憤怒

 HP(体力):312/312

 MP(魔力量):187/187

 STM(スタミナ):119(134)

 ATK(攻撃力):133(183)

 DEF(防御力):96(121)

 MGI(魔力):54(79)

 AGI(素早さ):81(96)

 TEC(器用さ):67(82)

 LUC(幸運):88


スキル

飛剣閃(スラッシュ)SLV(スキルレベル):10/10〉

・パワー〈SLV:3/5〉

・クイック〈SLV:3/5〉

・ヒール〈SLV:4/10〉

魔法付与(エンチャント):(ファイア)〈SLV:2/5〉

・魔法付与:(アイス)〈SLV:1/5〉


装備

 武器:ミスリルソード(ATK+50,MGI+25)

 頭:なし

 体:鋼の胸当て(DEF+25)

 手:鋼の篭手(TEC+15)

 足:走蜥蜴(アジャイルリザード)の革靴(STM+15,AGI+15)

───────────────────────

【パワー】

 〔ATKを上昇させる技能(アーツ)。SLVが上がると効果と持続時間が増大し、消費MPが減少する〕

【クイック】

 〔AGIを上昇させる技能。SLVが上がると効果と持続時間が増大し、消費MPが減少する〕

【ヒール】

 〔HPを回復する補助魔法。SLVが上がると回復量が上がる。〕

【魔法付与:炎】

 〔武器に炎の魔力を纏わせる付与魔法。SLVが上がると威力と持続時間が増大する。追加でMPを消費することで、持続時間を伸ばすことも可能〕

【魔法付与:氷】

 〔武器に氷の魔力を纏わせる付与魔法。SLVが上がると威力と持続時間が増大する。追加でMPを消費することで、持続時間を伸ばすことも可能〕

───────────────────────



「………なんだこいつは、化け物じゃないか」



 それが俺の第一印象だった。

 こんな奴が来るなんて、完全に想定の範囲外だ。



「まずいですね、これは……さすがにここまでの冒険者は想定していませんでした」


「それよりも気になるのはあいつの状態だ。『憤怒』ってなんだ?」


「私が知りたいですよ!なんでそんな落ち着いてるんですか!?」



 俺、あいつに何もしてないぞ?

 そう思ってしばらく考え込んでから、俺は1つの答えに辿り着いた。



「………あぁ、もしかして、アルトってやつの友人かなにかか?」


「あっ」



 だとすると、かなりまずい。

 やつの狙いは間違いなく俺だ。普通の冒険者のように、ある程度探索したからと言って帰ることはなさそうだ。

 俺が生き残るためには、ユスフという『強敵』を殺すしかない。



「どどどどどどうしましょう!?やばいですよ!このままじゃ本当に死んじゃいます!!!」


「落ち着け、アスナ」


「どっ、どうすればっ、どうすればいいんですか!?助けて下さい!せんせ──」


「──落ち着け!」


「ひうっ」


「焦って泣き叫んでも何も始まらないだろう。まずは対策を練るんだ」


「対策って言ったってぇ……ぐすっ。あんな化け物に、対抗のしようがあるんですか?」



 今までのアスナからは考えられないほどに落ち着きを失っており、俺は少し面食らった。

 ………しかし、そうか。いくらしっかりしているとは言え、アスナはまだ()()なんだ。俺がしっかりしないと。俺がアスナを導いてやらなければ。それが()()としての役目だ。



「大丈夫だ、アスナ。俺を信じろ」


「あっ……」



 そう思うと、反射的にアスナの頭を撫でていた。


 落ち着け。落ち着くんだ。冷静に物事を見ろ。どうすればいい?どうすれば勝てる?まずは──


 かなりまずい状況だということを理解してからの俺の行動は、自分でも驚くほど速かった。

 まず、第2階層の魔物のほとんどを第3階層に退避させ、第1階層のスケルトン達も階段付近まで後退させた。

 圧倒的に質で劣っている奴には、数で勝負するしかない。おそらくスケルトンでは足止めにもならないだろうが、何もしないよりはマシだろう。少しでも時間を稼ぐんだ。その間に、有効な手段を……!



「………とりあえずはこんなところか?」



 今のところ、勝てるビジョンが全く浮かばない。

 それくらい、俺のダンジョンの戦力とユスフの強さには、差があった。

 質より量と言ったりもするが、やはり圧倒的な力の下には、数は意味が無い。蹴散らされるだけだ。

 だから魔物達を固まって行動させているのは、正直なところ全く意味がない。よくて少し疲れさせられるだけだろう。

 だが、それでいい。少しでもあいつを弱らせられれば御の字。目的は時間稼ぎだ。本命は最終階層。そこで決着をつけられさえすれば、それでいい。残りの階層は捨てる。

 ただ、その決め手がない。



「……そういえば」



 あいつが引っ掛かりそうな……と言うより、間違いなく引っ掛かるであろう手が一つだけある。

 これで決めるしかない。倒しきれなかった時点で、俺の負けが確定するだろう。






 ついにあの因縁のダンジョンに着いた。軽く探索してみたが、魔物が1匹もいやがらねぇ。

 アルトがやったのだろうか。生まれたばかりのダンジョンは魔物の補填も遅いからな。どんな魔物が出るのかは知らねえが、初めてダンジョンに来て、ここまでできるとは。

 だが、おそらくアルトはもうこの世にいない。本当に惜しいやつを亡くした。


 そう物思いに耽りながら歩いていると、いつの間にか階段に着いていた。

 まさか1階層を全滅させたのか?と驚いていると、



───ヒュッ


「っ!?」



 どこからともなく矢が飛んできた。


 ……なるほどな。どうやらここのダンジョンマスターは相当用心深いらしい。魔物を1箇所に固めて俺を叩くつもりだったのか。本当にアルトが倒したんじゃないかと少しばかり思っていたが、やはりそれは違ったようだな。アルトがやられたのも頷ける。



「……にしてもよお。こいつぁ新人どころか、ベテランでもちょいとばかしきついんじゃねぇのか?」



 生まれたてにしては、あまりにも異質すぎるこのダンジョンに恐れを感じながら、剣を構える。


 しばらく様子を窺っていると、何十もの何かが一斉に飛び出してきた。

 全部スケルトンだ。だが、戦略もなにも無い。ただ特攻するだけのやつらに俺が苦戦するはずもなく、あっさりと全滅させた。

 所詮はできたばかりのダンジョン。いくら指揮官の頭が回っても、駒が雑魚だけじゃあ意味がねえ。そんなに強いやつがいるわけもないかと少し()()()()()()()()、さっさと第2階層へと降りた。




◆◆



「………やはり全滅か」


「どうしましょう、ベルグレッド様、本当に大丈夫なんですか?」



 ただ全滅した訳ではない。

 ()()だ。一瞬にして、全滅したのだ。普通に全滅したのとは、やはりワケが違う。

 分かってはいたことだが、やはり数で押しても意味は無さそうだ。



「大丈夫だ。安心しろ」


「あぅ」



 相当メンタルがやられているらしい。今までの凛とした姿は見る影もなく、歳相応の姿を見せている。



「よしよし」


「えへへ……」



 ……いや待て、年相応どころか退行していないかこれ………?いや、今気にするべきところはそこじゃない。

 アスナの頭を撫でつつ思案するが、やはり何も良い策は出てこない。



「……あの手しかないか」



 あいつは、まず間違いなく引っ掛かる。

 この手はあいつの()()を利用した手だからだ。

 だが、引っ掛かったところで倒せなかったら意味がない。

 仮にダメージを与えられたとしても、生還されてしまえばまた来るだろう。その時には、もうこの手は使えない。だから、確実に仕留める。

 決行は第3階層。あいつが()()()()()の第2階層を抜けて降りてきたら、自然と進行する。後は、俺が一斉攻撃の命令を出すだけだ。

『憤怒』

STMとATKが上がり、TECが下がる。他にも思考力にデバフがかかる。



諦止(ていし)モード

 自身で処理することが不可能な壁にぶつかり、精神的負荷がかかりすぎると陥るアスナの暴走モードその2。

 どうすればいいのか分からなくなってしまい、思考が諦めの方向に向く。

 普段大人顔負けの立ち居振る舞いをしている反動か、この状態になると軽度の幼児退行を起こす。

 精神的負荷がかかる状況から脱却するか、他人からの叱咤激励によって脱却する場合あり。子供同然(実際子供だが)のため、頭を撫でられると不安が和らぐ。このモードから抜け出すまでは、頭を優しく撫でていてあげましょう。


 それはいつも背伸びをし、弱みを見せず、心配をかけまいと1人で何でも抱え込もうとする彼女の優しさ故。そして彼女の過去に起因するもの。しかしそれは現実からの逃避とも取れるもので。

 彼女が唯一見せた弱みに、貴方はどう向き合うのか。



 ちなみに壁はなくてもなります。鍵は精神的負荷なので。



────────────────────────

 生まれて1週間程度のやつが「大人」っていうのも変な感じですが、ダンジョンマスターの精神は生まれた時から成熟しているので。「大人」として設定(デザイン)されてるやつは誰がなんと言おうと「大人」なんです。



 余談ですが、ベルグレッドは20代半ば辺りに設定されています。親と子ほどではありませんが、それなりに歳は離れています。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ