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Rise in Labyricia  作者: 爽風
第1章 ダンジョン始動
3/10

ダンジョン制作検定



 まずは現状確認。

 現在の俺のダンジョンは1階層のみだ。もちろん魔物はいない。

 そしてDPは10200Pある。アスナ曰く、新たなダンジョンマスターには、初期資金として10000DPが付与されるそうなので、過剰分の200Pが地脈から得られたDP………ということになるらしい。

 確かに、これだけでは少しばかり心許ないな。

 そんなことより。



「……なあアスナ」


「はい、なんでしょう?」


「俺ってここで生活するのか?」



 俺たちが今いる所は、ダンジョンの最奥部だが、見た目はただの洞窟と変わりない。もちろん濃密な魔素が漂っているから、普通の生物が寄り付いたりするわけではないが、裏を返せば人間にあっさりとダンジョンだとばれるというわけである。人間の街に近いようなので、見つかるのも時間の問題だと思われる。

 できたばかりで手も加えていないから、障害もないし、狭い。すぐにでも突破されるだろう。そしてそこに俺がいれば……。

 そんな、冒険者が来たらすぐに見つかるようなところにいたくない──という不安から出てきた問いであった。



「あはは、そんなわけないじゃないですか。今から案内しますね。【転移(テレポート)】」


「え…うわああっ」



 アスナが魔法を唱えると同時に、視界が暗転し、俺の意識も途絶えた。



……


…………


………………



 意識が戻り、辺りを見回してみると、そこは館の一室だった。



「…………ここ、は…うっ」



 理由は分からないが、意識がはっきりとしない。気分も悪い。一体何が起こったのだろうか。



「あっ、ベルグレッド様!お気づきになられましたか!?」



 俺が目を覚ましたことに気がついたのか、アスナが駆け寄ってきた。



「も、申し訳ありません!初めての転移は負担が大きいって言われてたのに、説明もせず、いきなり………」


「大丈夫、ちょっとびっくりしただけだ」


「ほ、ほんとですか?それなら良かったです……」


「ただ、なにかするのなら一言言ってくれ」


「はい、申し訳ありませんでした…………」



 しゅんとするアスナ。

 ……さっきから思っていたが、この子は天然(あほ)なのかもしれない。



「で?ここはどこなんだ?」


「あっ、はい。ここは迷宮主ノ館(パレス)管制室(マスタールーム)でございます。パレスは、ベルグレッド様のようなダンジョンマスターや、私のような迷宮主秘書(アシスタント)、配下の魔物達が暮らす場所です」


「え、魔物もここで暮らすのか?防衛はどうするんだ?」


「でも休憩は要りますよね?そのときに安らげる場所は必要ですよ。それがここです」


「あー、なるほど。確かにそうだな」


「では、早速パレスの案内……といきたいところですが、先程も言ったようにここは街に近く、いつ冒険者がやってくるか分かりません。この何も無い状態で冒険者に来られるとかなりまずいので、先に防衛を固めた方が良いと思います。なので先に実技も兼ねて、ダンジョン運営についてもう一度おさらいしましょうか」


「ああ、分かった」



 俺のダンジョンは、さっきも言った通り洞窟だけで、他は何もない。しかも1階層だけなので、すぐにコアまで到達されてしまう。



「確か、まずは階層を増やすんだったな」


「正解です。どれだけ難しくても、短ければすぐに踏破されちゃうので、長さは大事ですね。もちろんいくら長くても優しすぎたらダメですが」



 コアから表示されるウィンドウを操作し、メニューから【階層】を選択。階層のカタログが表示された。



「……階層にも色々あるんだな」


「そうですね。私も全ては把握できていません……あっ、これが私たちが持っているフロアですね」



 アスナが指差したところを見る。【岩窟層】。(いかめ)しい名前をしているが、ただの洞窟である。1番オーソドックスな階層だ。新規のダンジョンの階層は、これがデフォルトだそうだ。



「……まあ今の俺達にはこれが良さそうだよな」


「そうですね、最初から内装に拘るのは馬鹿のすることですし」



 色々気になるものはあるが、今はDPに余裕がないので断念した。

 ということで、岩窟層を3つ購入する。



「よし、これで階層はOKだ」



 ちなみに1番安い階層は【通路】。名前の通り通路タイプの階層だ。直線1本だけなのでかなり安いが、単純すぎるためできる限り時間を稼ぎたい今の俺には向いてない。

 ただ、アスナ曰く単純な分拡張性が高く、やりようによっては化けるのだとか。



「次は魔物だな」


「はい。魔物達は、ダンジョン防衛の要ですから」


「えっと……DPで購入(召喚)するんだったよな」


「そうです。一応DPでの召喚以外にも、ダンジョン外部に生息する魔物を引き込むこともできます。しかしそういった魔物達は、私たちに絶対服従ではありませんので、裏切りの可能性もあって危険です」


「なるほど」


「……でもまあ、今のところこの近くには野生の魔物は生息していないようなので、気にする必要はありません」


「ならいいや、続けよう。まず安価なスケルトンとゴブリンは確定として、他には………スライムとかいいんじゃないか?」


「お、いいところに目をつけましたね。お目が高いです♪核を潰されちゃうと死んじゃうんですけど、その核が流体ボディの中で動き回るのでなかなか捉えにくいんです。……まあ、魔法耐性が恐ろしく低いので、魔法を使われると1発なんですが……そこは置いておきましょう。それ以外にも──」



 長くなりそうなので要約する。

 スライムは単為生殖する魔物だ。だから養分(魔素)があれば、()()()無限に増えることができるのだそうだ。しかし、どういう原理なのかは分からないが、スライム達はある一定の数まで増えると、ぱったりと分裂を止めるらしい。冒険者に殺されたりして数が減ると、また分裂するようになるそうだ。

 まあ体数制限の話は置いておいて、要するにコストパフォーマンス抜群の魔物というわけだ。



「もう、こんなに素晴らしいのに、他の方たちはどうしてスライムを使わないのでしょうね?1体生み出すだけで上限まで無限に増やせるというのに、そうは思いませんか?やろうと思えばスライムだけでダンジョンを作れるんですよ。それくらいスライムには種類があって──」



 まずい、これはしばらく終わらないやつだ。



「──で!俺が考えた作戦なんだけど、スライムを壁にして、手こずっている所をゴブリンやスケルトンで袋叩きって感じなんだけど、どう思う?」


「いいと思います……というか、素晴らしいです!最初からこんなに頭の回るダンジョンマスター、かなり珍しいですよ!こんな姑息なこと、私じゃ思いつきません!」


「おい、それは褒めてるのか?貶してるのか?」


「褒めてるに決まってるじゃないですか!姑息上等、勝てばいいんです!負けたら死んじゃうんですから!!!」


「それは相手も一緒だけどな」


「いや、それはそうですけど……」



 とりあえずゴブリンとスケルトンとスライムを召喚。さっき買った(増やした)階層を含む4つの階層に分配、配置していく。



「よし、これで終わりか──」


「──あら?何かお忘れではありませんか?」



 ギクッ。



「え?そうだったか?これで全部だったと思うんだが──」


「──そんなわけないですよね???」


「アッハイ、スミマセン」



 これはまずい。これは知らんふりをしたら泣くかキレるやつだ。聞いたときは全く必要性を感じなかったのでさらっと流そうとしたのだが、やはりやらなければならないのだろうか。



「あと何が残ってますか?私ちゃんと言いましたよね?物覚えのよろしいベルグレッド様なら、もちろん覚えていらっしゃいますよね?ねっ?さあ、言ってみてください」


「……宝ノ設置デス」



 ゴゴゴゴ……とでも効果音がなっていそうなアスナの圧に負け、俺は折れた。



「はい、よくできましたっ。覚えてくださっていたようでよかったです!」



 ……こいつ、少しずつ本性を出してきたな。出会って1日どころか半日も経ってないというのに。まあそれだけ気を許してくれたということなのだろうか。

 というか少しどころかかなり早い気がするぞ。こんな緩々の警戒心で大丈夫なのだろうか?



「しかし、なんで宝を設置するんだ?やはり俺には意義があるとは思えない」


「むむ……まあそうですよね。財宝狙い(トレジャーハンター)という種類の冒険者がいるという話はしましたよね?誰が言い出したのか知りませんが、『ダンジョンには素晴らしいお宝が眠っている』という法螺話を信じ込んで侵入してくる馬鹿な冒険者達、それがトレジャーハンターです。彼等はかなりの軽装で、おおよそ交戦を想定した装備ではありません。実際、魔物に出会うと逃げる腰抜けが大半なので。ただ、その異常なまでに交戦を避ける性格のせいで、生存能力が非常に高く、珍しい事例ではいつの間にかコアに到達していた、みたいな事例もあるそうです」


「それを言えよ。生存能力特化型とか今初めて聞いたぞ」


「あれ?そうでしたか?それはすみません」


「大事なことを忘れるのは何回目なんだ……」


「でも逆に考えれば、冒険者を誘い出す餌にもなるということです」


「なるほど、捉え方の問題か。要するに上手く嵌めればいいわけだ……出来ればの話だけどな」


「そ、そこは大丈夫ですよ!私がサポートしますから!」



 そんな感じでダンジョン造りは着々と進んでいった。



……


…………


………………



「よし、完成だ」


「お疲れ様です!」



 ようやくダンジョンが完成した。

 どんなものになったのか、簡単に説明しよう。


 まずは1階層。ここはスケルトンを放っている。

 ここで小手調べをして相手の実力を測るつもりだ。


 次に2階層。スケルトンとゴブリンを2:3で小隊を組ませて行動させている。

 連携させることで倒されにくくなるからだ。


 3階層はゴブリンとスライム。


 そして最後は4階層。今までの魔物を全て投入している。総力戦だ。

 ここで負けたら、俺は死ぬ。武器も少しいい物を与え、何体かはDPを使って強化し、上位個体に進化させた。



「どう思う?アスナ」


「いいと思いますよ、余程のことがない限りは落とされることはないように思います」


「そう言ってくれるなら安心だな」



 アスナも太鼓判を押してくれ、準備は万端。あとは強い冒険者が現れないことを祈るだけだ。

饒舌モード

 好きなものについて語り出すと止まらなくなるアスナの暴走モードその1(命名:ベルグレッド)。オタクモードとも言う((命名:來須)なので作中には出てきません)。

 マシンガンの連射速度より速く打ち出される言葉の奔流に、聞き手は為す術もなくただ飲み込まれるのみ。

 尚、本人は語り続けている間ほとんど呼吸をしていないため、酸素不足でぶっ倒れるまで、もしくは誰かに遮られるまでその口は回り続ける。

 ベルグレッドはその冷静さで即座に対応した。


 その2,3は用意していませんが、気づいたら出てきそうな気がする……なんでだろうね。



 最奥とマスタールームの違いは、生活環境と死に方。

 最奥にいると、コアを破壊されるついでというか守護者(ガーディアン)と勘違いされて狙われるので殺されますが(もちろん痛みを伴う)、マスタールームにいると、コアが破壊された瞬間にダンジョンマスターは消滅します(痛みを伴わない)。

 好戦的なダンジョンマスターもいますが、戦いが苦手なダンジョンマスターももちろんいるので、そのためです。今のところベルグレッドは後者です。(変わる可能性はあります。ぶっちゃけ書きたいシーンはあっても展開ははっきりとは考えていないので……。)


 ちなみに、アシスタントは死にません。が、大抵一緒に死ぬか、しばらくするとひっそりと死んでいたりします。なぜなら長い間苦楽を共にしたパートナーを忘れてその後を生きることができないからです。喪失感とかに潰されるわけですね。

 ですが、それを乗り越えられる強い心を持ったアシスタントは、その経験を活かして2人目のダンジョンマスターを担当したり、迷宮主連盟の幹部として取り立てられたりします。



魔物

 人間にとっては例外なく外敵である彼らは、ダンジョンにとっては命であるコアを護る盾であり、外敵を打ち払う剣となる大事な存在。時には道具であり、時には友である彼らは、ダンジョンマスター達にとってもかけがえのない存在である。



──基本的に知恵というものを持たず、本能に従って行動する奴らだが、ごく稀に知恵を持つ高位の魔物が発生する。それらは極めて危険な個体であり、見つけたらすぐに情報を持ち帰るべし。決してその場で倒そうなどと考えるな。一瞬でも奴らを侮ったなら、その時は死を意味するだろう──

──【アベル・モンステラ著、魔物解剖】より抜粋



 魔物について補足すると、1階層のスケルトンは骨の槍を装備していますが、2階層以降は弓矢を装備しています。

 上位個体はそれぞれホブゴブリン(ガタイが良くなった)、スケルトンソルジャー(骨太になって剣盾鎧装備)、ジャンボスライム(デカくなっただけ)に進化しています。

 ゴブリンは石の剣だけど、ホブゴブリンは鉄の剣とか、装備の質も変わっています。

 ご参考までにどうぞ。



 アスナさんはダンジョンオタクのスライムスキー。

 アスナさんの思う「将来有望なダンジョンマスター」の定義は、最初からスライムの有用性に気づけるか。

 本当はかなり有用なのに、なぜか弱いと思われがちなスライムですが、それは1人のダンジョンマスター(故)が関係しています。それが教訓のようなものとして迷宮主連盟にも伝わっているので、スライムを使うことを良く思わないようになりました。

 スライムを使っているダンジョンがいないのは……つまりそういうことですね。


 ……私他のダンジョンのこと一切書いたことないのに、そういうことっていったいどういうことなんでしょうね(白目)

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