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7話 スライム製の家具家電

 

「部屋の中身、全部スライムにするか……」


 思い立ったが吉日。

 部屋の中をスライムで包み込み、全て捕食し消化する。

 そして、スライムで複製した物に置き換えていく。


「……」


 心なしか生気を失ったように見える家具達へ、意識を集中し一つの命令を発する。


「動け!」


 すると、冷蔵庫は稼働し、テレビは待機ランプが光った。

 いつも通りの光景に戻り、俺は満足気な表情で静かに部屋を出ると、街を目指して歩き始める。


 ※ ※ ※


 足の裏をスライム化させて街のゴミを捕食しつつ、まずは|狩い(買い)出しをしようと考えた。

 夜と違い、朝は行き交う人々の人種が違う。

 皆慌ただしく歩き、隙を突く余裕が無い。


 そのまま歩き続けていると、街外れのホテル街に行き着く。

 ふと足を止めると、ホテルから1組の男女が手を繋ぎながら出てきた。

 どうやら楽しんだ後のようだ。

 クソッ! 俺も真実と楽しみたいっつーのに。

 今日の朝食はコイツらに決めた。


 二人は楽しそうに駐車場へと歩いて行く。

 そして、黒い乗用車へ乗り込んだ。

 俺は車から5m程離れた位置に立つと、足からスライムを伸ばしスライムへ視点を変えて車内の様子を伺う。

 車内の二人は向き合い顔を近づける。


(続きを始めるのか? おおん? させねぇよ?)


 頭に来たのですぐさま捕食を開始する。

 足から大量のスライムを放ち、静かに車全体を包み込む。

 車外を包み終えると、窓や扉の隙間、エアコン等からスライムを侵入させ、一気に車内をスライムで満たしていく。

 やがて二人の体に、スライムとなった俺の体が触れた。


「うおっ! なんだこれ! 気持ちわりぃ……」

「ちょっと何よこれ! 雰囲気台無しじゃないの……」


 二人が気付いた頃には後部座席は全てスライムで満たされ、残るは運転席と助手席のみとなっていた。


「おい、取り敢えず外に出るぞ!」

「そ、そうね!」


 二人は車外へ出ようと試みるが、濃厚な俺の体が扉を固めている為、扉が開くことはない。


「マジかよ! 扉が開かねえぞ!」

「こっちもよ! どうなってるのよ……」


 そうしている間にもスライムの侵入が続く。

 遂に頭程の空間を除き、車内はスライムで満たされた。


「くっ、もう、息が……」

「あっ、あたしもよ……」


「なぁ、俺達来世でも一緒になろうな……」

「えぇ、あなたと出逢えて良かったわ……」


 二人は最期の言葉を交わしたようだ。

 その潔さに、この二人へ少し好感を持った。


(良い覚悟だ。苦しませずに捕食してやる……)


 そして意識を集中させ、男女の首だけを同時に一瞬で消化した。


「ぐっ!……」

「うっ!……」


 まるで水の中へ落ちる硬貨のように、二人の頭はスライムのプールとなった車内へゆっくりと沈んでいく。

 そして、車内は完全にスライムで満たされた。

 静寂に支配された車内で、まずは二人の体を堪能する。

 ワインの飲み比べの如く、二人を交互にゆっくりと消化し、体内に快感が駆け巡る。


(食べ比べも悪くねぇ。どちらの味も互いに尊重し合い、嫌味が一切無い。生前も死後も、二人は仲が良いな……)


 そんな事を思いながら1時間程、二人の味を堪能した。

 残るは頭部と車だが、頭部はおやつにするとして、車は是非とも手に入れておきたい。

 真実の為に車を売ってしまったからな。

 このままでは徒歩で2000万人を捕食する羽目になるだろう。

 それはちょっと面倒くさい。

 だからこの車は有難く捕食させて貰う事にした。


 車には何も思う事が無い為、素早く消化させる。

 意識を集中させ、最大限の食欲を注ぎ込む。


(食べたい食べたい食べたい食べたい!!!!)


「ジュッ……」


 車は一瞬で消化され、駐車場にはスライムの塊となった俺の体が顕現する。


(まずいまずい! 誰かに見られたら事だ!)


 慌てて人型に戻り、二人の頭は腹の中へ縦に並べた。

 暫くすると頭の中に車が浮かぶ。

 捕食が完了したようだ。

 無事に朝食を済ませ、今日も例の廃墟の探索を行う事にする。

 腕時計を見ると、時刻は11時を過ぎていた。


 ※ ※ ※


 廃墟に到着すると、1階の嘗てテレビや怪しい薬が捨てられていた場所へ向かう。


(ここなら広さも十分だろう……)


 1階の部屋は車1台を余裕で置ける程度の広さがあった。

 人目につかないこの場所は、まさに先程捕食した車の乗り心地を試すのに丁度いい。

 部屋の隅に立つと手を前へ翳し、頭の中の車を掴む。


「ブシャァァァァァァァァァ……」

「ジュグジュグジュグジュグ……」


 左手から物凄い勢いでスライムが吹き出し、車を形作っていく。


「ドン!!」


 そして、重い音を立てて車が複製された。

 表面を叩くと、やはり鉄のような硬さがある。

 扉を開けて乗り込むと、フカフカのシートの感触が伝わる。

 文句無く乗り心地が良い車だった。


 さて、エンジンを掛けようと思うが鍵はない。

 勿論やる事はひとつだ。

 意識を集中させ、命令を発する。


「動け!」

「ブオォン!!」


 普通にエンジンが掛かった。

 改めて便利な能力だと実感する。

 車には当然アクセルやブレーキが付いているが、正直言うと操作が面倒くさい。

 試しに命令を発してみた。


「ゆっくり進め!」

「ブオォン!」


 歩く程の速度で車が前進する。


「止まれ!」

「……」


 車がピタリと停止する。


「バックしろ!」

「ピーッピーッピーッ!」


 車がゆっくりと後退する。

 どうやら俺は車に触れる事なく運転出来るようだ。

 思わぬ副産物に胸を踊らせる。

 再び意識を集中させ、命令を行う。


「戻れ!」

「ドロッ……」


 車は半透明な液体となって溶け、一瞬で体内へ吸収された。

 この車は駐車場が要らない……かも知れない。

 そんな悠長な事を考えながら、腹の中のおやつを消化し、3階へと目指す。

 2階の大麻が茂る草原を横目に、3階に辿り着いた。

 だが、矢張りというか、流石というか。

 2階に勝るとも劣らない光景が、3階にも広がっていた……

拙作をお読みくださりありがとうございます。

お気に召しましたらブックマークや、評価を頂けると嬉しいです。


ハツカスライムでは、読み易さを意識し一行の文章を短くする試みを行っております。

読み易さは如何でしょうか?

よろしければ感想欄でご意見をお聞かせください。


【100ブックマーク達成】

早くも100ブックマークを頂くことが出来ました!

まさかここまで多くの読者様に恵まれるとは……

皆様の期待を裏切らぬよう精進して参りますので、今後とも拙作をどうかよろしくお願い致します。


次回の更新は20日の予定です。

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