表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/31

3話 はじめての食人

【2019.09.14 秋の桜子様からファンアートを戴きました!】

挿絵(By みてみん)




 俺は部屋を出ると何食わぬ顔で街を歩いていた。


 これから人を殺さなければならない。

 頭ではわかっているが、どうすればいい?

 もしここで手当たり次第に人を殺そうものなら、すぐさま警察が駆けつけるだろう。

 ならば最初はひっそりと、一人に絞って殺すべきだ。


 そんな事を考えながら、宛もなく歩き続ける。

 暫く歩くと小汚い雑居ビルが目に入った。

 辺りをざっと見回すが、監視カメラは無さそうだ。

 ビル内には居酒屋などのテナントが入っている。


 ふと腕時計を見ると、時刻は22時となっていた。

 もしかしたら、ここで待ち伏せしていれば酔っ払いの一人くらい捕食出来るかもしれない。

 そう思い、エレベーターの前で待機する事にした。


 暫くすると、鼻歌がエレベーター内に響く。

 俺は咄嗟に身構えた。

 そしてエレベーターの扉が静かに開く。


「今君ぃ〜にぃ〜恋してるっ! うえ〜っぷ……」


 絵に描いたような酔っ払いがエレベーターから現れた。

 正直言うとこんな奴を食いたいとは思わない。

 だが、今こいつを食わなければ20日間で2000万人を食う事など出来ないだろう。

 俺は覚悟を決め、背後から酔っ払いの頭に左手を乗せた。

 そして、スライム化し頭から垂らしていく。


「ぬおおぅ? なんだなんだ? ねちょ〜としてるぞ? ねちょ〜っと……」


 酔っ払いが騒ぎ始めた。

 ここで人目についたらまずい。

 俺は素早く酔っ払いの頭を包み込む。


「い、いぎが、でぎ……」


 暫くすると、窒息により酔っ払いは倒れ込んだ。

 すかさず体全体をスライム化させ、酔っ払いの体を包み込む。

 そして、梅干しを想像し消化を開始する。


「いでぇぇぇぇ!! いでぇよぉ!!」


 酔っ払いの体から煙が上がり、うめき始める。

 そりゃあ痛いだろうな、体の表面からじわじわと溶かされていくんだから。

 息ができないにも関わらず、威勢の良い悲鳴が響く。

 だが、俺の体で包み込んでいる為、外部に声が漏れる事はない。

 ゆっくりと確実に、酔っ払いの体を溶かし捕食していく。

 ここで俺の体に快感が走る。


(な、なんだこれ……凄い美味い!)


 時計を消化した時には感じられなかった快感が体内を駆け抜ける。

 まるで甘く柔らかい桃を口の中で舐めているような感覚だ。

 それが体全体で感じ取ることが出来る。

 俺はこの瞬間、人を捕食する事に欲が芽生えた。


 数分後、酔っ払いの体は綺麗に消化され、俺は人型に戻った。

 まさか捕食がこんなに快感だとは……

 見た目は下手物だが、食べて見ると意外と美味い、そんな感覚だった。


 気を良くした俺は、もっと効率よく捕食出来る方法がないか模索を始める。

 街を見回しながら歩いていると、裏路地を発見した。

 これは使えるかもしれない。

 そう思い、ひっそりと裏路地へと入っていく。

 すると、立ち小便をしているおっさんを発見した。


「ふぇ〜ぇ。……あん? おい、何見てんだよ? あー、手にかかっちまったじゃねぇか!」


 おっさんはモノが掛かった手で俺の胸倉を掴みかかってきた。

 汚い。人だった頃の俺ならそう思うだろう。

 だが今の俺は、果物の果汁のように、汚れたおっさんの手を美味そうだと感じていた。

 そして、掴まれた胸倉をスライム化させ、掴んでいるおっさんの両手へスライムを纏わせていく。


「おぉん? なんだこりゃ! 気持ち悪いなぁ!!」


 おっさんは俺の体を振り払おうとするが、上手くいかないようだ。

 そうしているうちに、おっさんの胴体は俺に包まれた。

 ここで消化を開始してもいいが、下手に叫ばれても困る。

 なので、おっさんの胸元から触手状に伸ばしたスライムをおっさんの口の中へ突っ込んだ。


「んー! んんー! んー!!」


 何か言っているが、知ったこっちゃない。

 殴ろうとしてきたんだから、殴られても文句言えないだろ?

 まぁ、俺は殺すんだけどね。

 そんな事を考えながら、消化を開始する。


 梅干しなんてヌルい。

 今の俺は人の味を覚えてしまった。

 あの芳醇な血の香り、ぶよっとした肉の食感。

 あぁ食べたい。


(食べたい食べたい食べたい食べたい!!!!)


 そう思うと、おっさんが苦しみ始めた。


「ウグォォォォ!!」


 痛そうだね、知らんけど。

 今回は胴体に纏うスライムへ意識を集中させてみた。

 すると、首から上は消化されず、意識を向けた部分からじわじわと肌が爛れていく。


(へぇ、こんな事もできるんだな)


 そんな事を思いながら消化を進める。

 おっさんの意識は無くなっていた。

 やがて内臓が剥き出しになり、遂には腹部の消化を終え、おっさんは茹で始めたパスタの如くグニャリと二分割に折れた。

 俺は満足気な表情でおっさんの残りを消化し、人型に戻ると時計を眺める。


「もう23時か。そろそろ帰ろう」


 ふと呟くと、部屋を目指し歩き始める。


 部屋へ入ると、猛烈な睡魔に襲われた。

 そして今日もまた、着替える事もなくベッドに倒れ込み、泥の様に眠るのだった。


 ※ ※ ※


 ――2日目


 俺は朝起きると、体に違和感を覚える。

 痛みのない筋肉痛のような感覚だ。

 不快に思い、全身をスライム化させてみた。


「うおぉ! なんだこりゃ!!」


 なんと、スライム化した俺の体はみるみるうちに広がり、部屋に水溜りを作る程になっていた。

 さらに……


 ・スライム化させた場合、視界はどこのスライムからでも見ることが可能だ。

 音も同様にスライム化すると、どのスライムからでも感じ取れる。


 ということに気付いた。

 目を動かすように様々視点から室内を眺め、壁にスライムを這わせると俺を見下ろした。


(体積が……増えたのか?)


 どうやら昨日の捕食と関係がありそうだ。

 思い起こすと昨日は家の中の雑貨を数点と酔っ払いとおっさんの二人を捕食した。

 増えた体積もおおよそ捕食した量だった。

 つまり……


 ・捕食する程スライム化の時の体積が増える。

 ただし、増やす為には眠る必要がある。


 ということだろう。

 この事実を知れたことは大きい。

 何故なら2000万人という膨大な人数たべものを一人ずつ捕食していては追いつかないからだ。

 この能力があれば、おそらく目標の達成も可能だろう。

 僅かな希望が見えた。

 人型に戻ると、溢れていたスライムが嘘のように体内へ収まっていく。

 今度は縮こまった身体をイメージし、スライム化した。

 すると、以前と同様な量のスライムとなる。

 どうやら……


 ・スライム化させた場合、余剰分は任意で質量を変えられる。

 人型に戻ると余剰分は体内に圧縮され、体重の変化はない。


 という事のようだ。

 また一つ、この体について知ることが出来た。

 いろいろと試したら腹が減ってきたような気がする。

 まるで近所のコンビニへ買い出しへ行くように、捕食の為に俺は嬉々として部屋から出ていくのだった。

拙作をお読みくださりありがとうございます。

お気に召しましたら、ブックマークを頂けると嬉しいです。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ