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#3

 私は小さい頃からお兄ぃのことを異性としてしか見てこなかった。異性というのは、もちろん、恋愛対象としてということだ。他の男なんて目じゃないくらい、カッコいいし、かわいいし、めちゃめちゃにしたいし、めちゃめちゃにされたい。私にとってのお兄ぃはそういう相手。

 そんなお兄ぃが今年、男子中から共学の男子校に進学することになった。私は猛反対した。だって、まだ誘惑作戦が成功してないし――誘惑作戦とは、男子中という環境で溜まっているお兄ぃに襲ってもらうため、家では年中、薄着をして自分的にはかなり自信がある体を見せつける作戦である――、それに、共学校なんて盛りのついた雌豚だらけで、お兄ぃみたいな子羊はあっという間に食われてしまう。

 もういっそのこと、既成事実を作ってしまいたくて、深夜にお兄ぃの部屋に忍び込んでみる。寸前のところで思いとどまる。やっぱり、初めてはお兄ぃの方から求めてほしい。それまではどれだけでも待ってみせる。まあ、お兄ぃがどこぞの雌豚と結婚前提に付き合うとか言い出さない限り。そんなことになったら、躊躇なくお兄ぃの腰にまたがる自信がある。

 さておき、お兄ぃの高校生活はというと、私が想定していた通り、お兄ぃが雌豚と付き合うことになった。ここで雌豚を脅して強引に別れさせるのは簡単だけど、これからもお兄ぃが雌豚に言い寄られるのかと思うとウザったくて仕方ない。でも、なかなかいいアイデアも出ず時間だけが過ぎていく。お兄ぃに雌豚とのノロケ話を聞かされるごとに私の中にどす黒いものが溜まっていく。デートもまだだし、出来ればお兄ぃの童貞が食われる前になんとかしないと。

 そんな折、私はクラスのある噂話を耳にした。この近くにどんな願い事でも叶えてくれる魔女がいるらしい。普段なら小馬鹿にするが、この時ばかりは、藁にもすがる思いで訪ねてみることにした。そして、古民家風の家で、魔女?と首を傾げたくなる着物姿の老婆と会う。

 老婆は私の話を聞くと、私に媚薬を勧めてきた。がっかりした。私が求めるのはそんな安っぽい一時的な愛ではない。私のお兄ぃへの思いが侮辱された気がしたし、わざわざ来たのにという思いもあったし、それに、最近はあの雌豚のことでイライラしていたから、老婆のことを思いっきり罵ってやった。

 すると、ムキになった老婆が霊魂水というものを出してきた。霊魂水の詳細を聞いた私はこれだ!と思った。老婆はお兄ぃをここに連れてきてお兄ぃの霊魂水を作りそれを私が持つことでお兄ぃの心を縛るという単純な作戦を得意げに語ったけど、バカみたい。そんなの私が悪者になってしまう。お兄ぃが自分から私のことを頼る状況を作らないといけない。私は老婆に作戦を話した。最初、老婆は乗り気じゃなかったが、私が対価を多く支払うという条件で協力してもらえることになった。

 そして――。

 今、お兄ぃが家に帰ってきた。私はお兄ぃの手から「偽」の霊魂水を奪い取る。ここで奪えなかった時のプランも色々と考えていたけど、どうやら無駄になったみたい。お兄ぃが来ないうちに「偽」の霊魂水を飲み干す。お兄ぃがやって来て、空っぽのペットボトルを見てものすごく慌てる。その顔がかわいすぎて脳内メモリに保存。

 私がトイレに行こうとしたので、どうやらお兄ぃもそのことに気づく。お兄ぃの口から「妹のおしっこを俺にください」という破壊力満点の言葉。ヤバイヤバイ。私は身悶えしたくなるのを必死に抑えて気を引き締める。押しに弱いお兄ぃにはここぞという場面で高圧的な態度が効果的だ。最後の仕上げに取りかかる。

 私はお兄ぃのスマホから雌豚の番号にかけて、お兄ぃにさっきの言葉を繰り返させる。「アハハハハハハ、さいっこー、お兄ぃ」雌豚の方もついさっきまで完璧なデートをした相手からこんなヘンタイ的な電話が来るとは思いもしなかっただろう。これで雌豚退治は完了。あとはこのことが拡散すれば、もうお兄ぃに近づく雌豚はいなくなるはず。拡散しなくても、お兄ぃはこれから先、ずーっと、妹のおしっこを学校に持っていかないといけない――とお兄ぃは信じている――。私が噂を流せば現行犯で一発アウト。ヘンタイのお兄ぃに残されるのは、私だけ。

 作戦が思った以上にうまくいったので、調子に乗ってもう少し攻めてみることにした。おしっこを足に垂らして舐めるように要求する。お兄ぃの舌が這いずりまわる。な、何これ、ゾクゾクする。私が人生初の快感に浸っていたら、お兄は膝のところで舌を離してしまった。残念。もっと太ももの奥の方から垂らせばよかった。でも、足を舐められただけでこれとか、本番になったらどうなっちゃうんだろ、私。


 翌朝、 私はお兄ぃと老婆の家を訪ねていた。老婆の話を聞き終わって肩を落とすお兄ぃを外に待たせて中に引き返す。老婆はもう用意して待っていてくれたみたいで、ちゃぶ台の上には、2つの瓶が並んでいる。中身は無色透明の水に見えるけど、霊魂水だ。500mlのペットボトルと同じくらいの分量だが、入れ物が違う。重厚な瓶で、ガラス細工のようにカットしてある。


「こっちのがおぬしの。こっちがおぬしの兄のだ。おぬしの方からは取り決め通り、今回の対価として一割もらっておるぞ」


 確かに見比べると私の方が少ない。私は魂を魔女に売ったのだ……そんなことより。私はお兄ぃの霊魂水を手に取り持ち上げる。これがお兄ぃのなんだ。私は口づけして頬ずりする。


「ねえ、魔女さん。もっと大きい瓶ってない?」

「あるが……」

「もしかして、対価がいるの?」

「いや、いらん。おぬしからはもう十分もらいすぎておる。瓶くらいタダでくれてやる」


 老婆がパチリと指を鳴らすと、どこからか、ひとまわり大きな瓶が宙を飛んできてちゃぶ台の上に着地する。私はその瓶の蓋を開けて、それから、私の霊魂水の瓶の蓋を開ける。私のを大きな瓶にそそいでいく。そうやって全て移し替えてしまったら、今度はお兄ぃの霊魂水の瓶を開ける。そして、それを傾けていき――どぷんどぷんと生々しい音がなる。


「はぁぅ〜、お兄ぃのが入ってくるぅ〜」

「おぬし、何をやっておるのじゃ!そのようなことをすれば、おぬしらの身に今後何が起きるか――」

「いっぱい、い〜っぱい、中にぃいい、入ってくるぅ〜」

「儂は知らんぞ」

「はぁはぁはぁはぁ……」


 先に魂がつながっちゃったね、お兄ぃ♡

次は姉を書く(願望)

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