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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

ウルトラ!スーパー!アルティメット!ザ・餅

作者: 優勝者

餅。

 餅太郎は平成21年、世間ではキラキラネームが流行る中、容赦なく昔話のような名前をつけられた哀れな男だ。

 彼の哀れさは名前だけに終わらない。入った大学は(かたくな)な親と周囲からのしつこい勧めで、餅について研究している安土餅山大学。

 誕生日プレゼントは毎年餅だ。苦手で食べることができないというのに餅だ。しかも年一回のプレゼントが餅なのではない。クリスマスというものがある。

 餅太郎がクリスマスにサンタクロースからもらう物が自分の欲しいものだということを知ったのは幼稚園の年長さんになってからだった。毎年のクリスマスに彼が何をもらっているのかは言うまでもない。餅ろん餅だ。

 餅太郎の父、餅彦はどうして息子にこんな名前をつけたのか。餅太郎は気になって聞いたことがある。いや、気にならないはずがない。だが、彼は聞いたことを嘆いた。なぜこんな名前をつけたのか。それは、餅彦は息子と苦しみを分かち合いたかったからだそうなのだ。

 餅彦は餅人生を、息子と一緒に歩みたかったらしい。今年20歳を迎える餅太郎は、今思えば案外そのお陰で父との絆が深くなっている気がしてきていた。しかし、餅太郎の餅人生はそう長くは続かない。

 20歳を迎えた餅太郎はその日、サプライズと称して寝ている間に親戚中から送られてきた大量の餅を山のように腹の上に積まれて圧死した。

 餅太郎は、けれど目を開ける。そこはもうもといた人間界ではなかった。一目で分かった。


「あなたは新米の死神の手違いで命を落としました——」


 目の前にいたのは、黒い不吉なローブをまとった死神。馬鹿にしているのか、斧の刃の先にたくさんの餅が貫かれてぶら下がっている。


「くくっ、も、餅で、つ、潰されて、死にました」

「おい、今笑っただろオマエ!?」

「おほん、いいえ、言いがかりです。とにもかくにも、手違いで死なせてしまったのです。お詫びをいたさねばなりません。さあ……、早く行って来いコノ餅野郎!! 開け! ザ・餅ワールドォォォォ!!」


 哀れ餅太郎。問答無用で餅しかない世界へ誘われてしまった。しかも、もう人間ではない。

 餅だった。

〜餅に始まり、餅に終わる〜

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