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偽界説  作者: ひうか
もう一つの世界
19/20

ソレラはやはり怪しい説

投稿不定期にもかかわらず読んでもらってありがとうございます。とても励みになります。

 だって……殺されるかもしれないのだから。


「……あっあぁぁぁ」


 俺の悲鳴が狭い洞窟の中に響き渡る。ソレラにとってはいきなり俺が叫び出したようにしか見えないだろう。それに、他の人から見れば俺は酷く恐ろしい顔をしているだろう。ソレラはなんのことやら分からぬ顔をしている。当然の反応だろうがそれは演技だろう?と俺は疑う。


 俺は唸る心臓と荒ぶる呼吸を抑えて、やっぱりな……って思う。ソレラのことを少しでも信用した自分が馬鹿だった。人は信じられない、信じたらダメだった。


 特異な性格、はっきり言って面倒くさくて、滑稽で、捻くれた……そんな性格を持った自分のことを気にかけて、相手するそんな人に裏が無いわけがない。きっと、ここまでは奴らの計画通りなのだろう。今まで俺の為に色々してくれたが所詮は人の為と書いて偽りなんだろう?クッ今は悔やんでいる場合ではない、とっとにかく逃げなければ……俺はもだつく足を懸命に動かして扉へ向かう。


 絶対に捕まらない、ギリギリで気づいて良かった。後ろを見やると、三人は戸惑っていたようだが我に返ったようで追いかけて来る。


 俺が何に気づいたのか、結論を言おう。ソレラは夢で見たあの少女なのかもしれないということだ。もし、この考えが正しければ夢の通りに俺はソレラに魔法の矢で貫かれて、殺されるはずだ。幸いにも、今は周囲の景色は違って弓は持っていないから殺されることはないはずだ。だから今の内に逃げておこう。だいたい俺が世界で一人の調律者なわけがない、そこからおかしい。


 そうして、俺はさっきアレラに案内された扉の前に到着する。ここを通れば地球に戻れる。後方から三人の足音が近づいてきた。やはり、着いて来たのか……俺は振り返って確認する。


「お兄ちゃん! どうかしたの?」


「君、大丈夫か?」


「レン、大丈夫?」


 三人とも慌てて理解のできない困惑した声音で心配する。三人共の顔は素直に困惑しているように見える、俺の考えが間違っているのではないかというぐらいに。落ち着いて考えてみればソレラは人を殺す性格ではないと思うし、どんな理由で殺されるのか思いつかない。しかし、俺は騙されないぞ。あの夢は一度見た偶然でなく何度も見た、だから必然のはず。俺はそう信じるぞ。


「レンどうした?」


 ソレラは一歩前に進み手を差し伸べようとする。優しそうな顔をして…………うっ、一瞬自分の考えが間違っているのかと思ってしまった、俺はかぶりを振って迷いも振り払う。


「もう騙されないぞ!」


 俺は詰まるのも忘れてそう答えた。ソレラは手をゆっくりと下げて、ますます分からない顔をする。


「……レン?」


「……」


 俺はその問いかけに答えず扉の方を向く。俺はなんて答えれば良いのか分からない、確証の持てないことに対して怯え、拒絶しているのだから。相手は本気で心配しているように感じられる。もし違っていたら迷惑でしかなくて、また人に嫌われるだろうな。


 虚しいなぁ、俺は何もない手の平を胸の前まで持ってきてギュッと空気を握る。でも、この疑心暗鬼な性格がのちに良かったってなるのかもしれないなぁ。ここで逃げ出しても後悔する、逃げなくても後悔する、それならやりたい方を選ぼう。そして一歩前に進む、ドアノブが手に取れる位置まで。


「君が何を感じ思ったか知らないが、何も騙したつもりはないぞ。何か不満でもあるのか?」


「不満はあるけど、そうじゃない……」


 アレラの声からも心配を感じ取れる。普通の人ならここで引き下がるのかな?そんなこと分からないが、忘れて欲しくないが、俺はコミュ障で女子が苦手で基本信用しない。だから俺は決めた通りに逃げる。ドアノブに手をかける。確かこの扉鍵がかけられるはずだ。こっちに鍵穴があるな、ってことは地球から鍵をかけられるはずだ。


「じゃあなんなんだ?」


 アレラはそう聞くが、俺は無言で扉を開けた。


「おっお兄ちゃん?」


 俺はその場から逃げ出すように扉の中に入った。レノの声が最後まで聞こえた頃には俺はもうこの世界にはいなかった……



 ーーーーー



 無事、地球に戻って来た俺は扉に鍵をかけてから辺りを見渡す。俺は無事に逃げ出せてホッとして胸をなで下ろす。しかし、ほぼ同時に、これで良かったのか?と悩む、悩んだ末に決めたことなんだけど……レノのことも見捨てたようなもんだし……まあ、それは後でじっくり考えるか……一人なんて慣れてるし……


 自分のいる場所はどこかの家の狭い部屋のようだ。部屋の中は、三分の一程を支配するベット、大量の書物、物の散乱した床、少しボロい壁、がある。なんだか見覚えのある場所だ…………


 そう思って、茶色い棚の上に飾られている今にも紙で隠れそうな写真立てを発見した。そこには、三人の人物が中学校の前に並び立っており。俺とレノと母さんが映っている。そういやこんなの撮ったな……

 てことは、


 ここは、母の部屋じゃないか!?


 母が行方不明になった今、当然だがそこに姿はない。担任の中川先生が会社に来ていないという連絡があって、その異変をレノに伝えて聞いた。すると、レノいわくあの世界で何かの手がかりが見つかると言った……あれは嘘だったのか?俺が勝手に帰らずに最後までウェールスに残っていれば分かったのかな?


 分からんこと、悩ましいこと、を自問自答しても何も変わらないな。今はただ自分の命とレノの命を優先して、そこから派生して真相の解明と親の行方について行っていこう。


 窓を見やると外は暗くなっているようで、ウェールスにての洞窟探索やドラゴン退治に時間を使ったからな……とりあえず眠かったら何もできないし、日記を書いて眠りにつこう。


 机の上は色々と書類とかが散らかってるので母のベットに座って書くことにしよう。階段上る気力ないわ……ということで、書き始める。



 一月十八日 天気、分からない

 今日は、メガネ探しという意味の分からん事の為にわざわざ命を危険に晒して洞窟に行った。あれやこれやして、ドラゴンを倒せた。リンクというのがどういったものなのかははっきりさせておきたかった。しかし、今日は本当に危なかったドラゴンのこともそうだが、少し、ほんの少し、極めて少し信じていた少女に裏切られることが判明したのだ。あれは予知夢だ、だが、夢一つに簡単に惑わされるのもあれなので慎重に対応することにしておこう。にしても、いきなり走り出すのは下策だったかもしれない。あと、わざわざ書くこともないと思うが疲れた、いい加減ゆっくりしたぃ……


 最後まで書き切る力はなくベットで四肢をなげうって寝た。



 ―――――



 朝が目が覚めると、昨日や一昨日のように賑やかに起こしてくれる者はいなくて少し虚しくなった。せめて、レノがいればなー。レノの明るさに俺は救われていたな、ウェールスにて見捨ててきてしまったけど大丈夫かな?ソレラたちがいるけど……魔物もいるわだし……


 あっそうだ、今日は十九日だから木曜日じゃないか!学校の用意しないと……あの無駄な授業を受けてこないといけない。ついでに、校長に会おう、そうすればレノのこと何か分かるかもしれないし聞いてみるか。することも決まったことだし用意するか。











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