助かる?説
…………ピカッ……ゴロゴロ、ドンッ!!
目を瞑っていても分かるぐらいの光が広がって息つく間もなく音が響いた。とんでもない地響きを感じる、ここに落ちたのだろうか。それにしても、先程からドラゴンが襲ってこない。なぜだ?リンクが無事成功したのか?……ソレラは無事だろうか?少し前まで手と手が触れていたのに、衝撃で離れてしまったので心配だ。背中にもたれてくるヒンヤリしたものがソレラなのか?その全てを確かめるため俺は恐る恐る目を開ける。
青い髪……青い目……
「おわっと……ソレラか」
目の前はソレラがこちらを覗き込むように見ていた。どうやら、俺は地面に倒れていたようで背中は人間ですらなくただの岩だった。これなら、ヒンヤリしていたことに合点がいく。なんの勘違いをしていたかは言わないでおく。言いたくないし。
俺もソレラも傷が少しあるがなんとか大丈夫そうだな。俺は起き上がりながら自分の身を確かめる。まあ、俺が羽織っていた黒いコートが破れてしまったけど。制服までは傷はいっていない、泥々だけど。
「うしろ」
うしろ……?俺は言われた通りの方向を見る。ドラゴンがピクリとも動かず倒れていた。ドラゴンの目も明らかに生気を失っている。
「しっ死んで……いるのか?」
「そう……」
ソレラは歯切れの悪い返事でそう答える。ソレラ自身も理解していないのだろうか。とりあえず、ドラゴンは死んでるし、俺ら生きてるしラッキーってことで喜んでおこう。
「……でっでも、なぜなんだろうね? りっリンクが上手くいったのかな?」
ソレラは軽く首を捻ってどうだろうという表情をする。うーん、しかしそれしか説明のしようがないのは事実ではあるが……
「お〜い! 大丈夫だった〜?」
レノは手を振りながらそう言ってアレラと共に駆け寄る。援護していた二人も元気そうで、全員無事なのか。良かった、良かった……
「はい」
「妹よ、大丈夫だったぞ」
「お兄ちゃん良かったね〜」
そう言って抱きしめてくる。うっ苦しい、せっかく助かったのだから殺さないでね。隣を見ろ!アレラとソレラの関係性を真似してくれ!ほろ、あの健全な心配をし合った態度を。アレラは涙を流しながらソレラの手を握り、ソレラはその手を握り返してアレラに感謝を述べている。うわー、ああいう関係になりたい。うん、なろうよ。だが、いつも通りにずっと締め続けることはなくレノはすぐに離してくれた。おっ、ようやく俺が日頃から離せと言っていたことが分かってくれたのか。離した瞬間レノはソレラの方に向かう。
「ソレランも無事で良かった〜」
レノはソレラに対しても抱きしめて無事を喜ぶ。元気がいいなレノは、ムードメーカー的な役割レノはソレラに頭を撫でられて、少し喜んでいる。なんかそんなにすぐに離れられたらそれはそれで悲しいな。離れろなんて言ってたけど……多少の寂しさを感じながらも本題に戻り質問する。
「レノ何があったか分かるか?」
レノはソレラの体に埋めていた顔を出して答える。
「えっとね〜ピカッとドンッだったよ〜」
「あっ、しまった……」
人選間違えた。ハーこいつに聞いても何も分からないのだった。幸いにももう一人遠くから見ていたアレラがいるのでそちらにでも聞こう。
「何がしまったの〜?」
クエスチョンマークが顔の横にでも出そうなぐらいよく分からないという顔をしているが、俺はテキトーに、いや適当に答える。
「なんでもねぇ」
ソレラへのレノの抱きしめにより横に弾き出された所にアレラがいた。よし、聞いてみよう。俺はそばまで歩いて近寄る。イテテ、衝撃の痛みがまだあるようだ。
「なっなあ、アレラ、なんでドラゴンは死んだんだ?」
「分からん、ものすごい光で見えなかったのだ。雷が落ちたのだろうと思うが……」
「たっ確かに雷っぽかったな」
アレラもはっきりとしたことは分からないのか……
「それなら、なんで感電しないんだ? 直接俺らに落ちなくても間接的感電はあり得るだろう?」
「君の言う通りだ、今の所二つの可能性があると思う。一つ目は、君らがリンクに成功して雷属性の魔法を放ったという可能性。これなら、魔法であるからある程度流れていく方向がコントロールできる」
雷といえど、それは自分達が放った魔法であるかもしれないな。割とその可能性が高そうだ。
「で、二つ目は、雷がドラゴンに落ちたという可能性。感電しない理由は物体のてっぺん、つまりはドラゴンの頭を45度以上の角度で見上げる範囲で、その物体から4m以上離れたところに君達はいた。だから、保護範囲ということで免れたということだ。それに、強化魔法もかかっているので感電もしにくい」
そんな法則があったとは知らなかったな。なるほど、それもまた、充分な可能性だな。
「どっどちらもあり得ますね」
「ただ、後者に関してはわざわざ洞窟内のドラゴンに落ちてきたのは謎だ。雷が通る隙間はあるとはいえ、雷というのは高い所に落ちる性質があるからな。だから、自分としては前者の可能性が高いとは思う。もちろん、ドラゴンが雷を呼びやすい体質だという可能性も捨てきれんが……」
アレラはそう結論付けて話してくれた。まさか、ここまで推測して考えていたとは予想外で驚きだ。レノも見習って欲しいものだ。
「そっそうか、そう言われると、自分も前者な気がしてきたな。にしても、あっアレラは詳しいんだな」
「まあ……知識は豊富だからな」
「アレラさんスゴイ! レノも前者だと思ってました!」
レノとソレラも俺らの会話を聞いていたようで、隣に立っていた。レノは、自分もそう思ってました〜って胸を張って自慢げにアピールするが分かってなかっただろう。ピカッとドンッとか言ってたやつが……
「まっまあ、前者の可能性を重視していこう」
俺はそう皆に言って話をまとめる。アレラは更にそこから指示を出してまとめあげる。
「妹よ、ドラゴンを解体しておいてくれ……それから、ここらの岩の壁は衝撃でヒビが入ってしまった、君らは早くメガネを取って退散するぞ、あたしについて来い」
「分かった」
と俺ら三人は受け答えて作業を始めた。ソレラはドラゴンの解体へ、俺らは急いでメガネを取りに行く。
少し狭くなった洞窟の中を更に進んでいく。アレラいわく奥にメガネがあるらしい、もう敵が出てこないといいのだが……そんな心配通りに出てくることはなく、水滴のポチャンとした音が響くだけだ。少し開けたところでアレラは止まった。
「着いたぞ」
指差す先にはキラッと輝くメガネがあった。ただのメガネのはずなのに、ここまでして苦労して取りに来たのだから不思議とそんなエフェクトがかかる。まるで、伝説の剣を取るかのようにメガネを取った。待つのも邪魔だしかけておくか、
「やったね〜」
「あぁ、やっと帰れる……」
少しの間だったがウェールスも楽しかったな。ソレラ、アレラ以外の人はあまり見なかったから、正直どんな風な人がいるのか分からなかったけど。空は紫、空気もところによれば瘴気めいており過ごしやすい場所ではなさそうだ。敵とかいるし……
「では、このドアから帰れるからな」
壁にはドアがかかっている。周りの景色に合わせたように代赭色の岩のようだった。ボケーとしてると気づかないぐらい同化している。
「えっ、こっちにもドアが……」
「行きしなのドアまで戻るのは大変だからな、ここを通る前に一度ソレラの方に戻っておくぞ」
あっそうだった、置いていっちゃダメだな、戻ろう。
……俺ら三人は来た道を戻りソレラに会いに行く。ソレラの作業ももうすぐで終わりそうだな。ソレラは、具体的には、ドラゴンを死んでいるか確認して使える部位を取り出しているようだ。魔法を使いながら手際がいいな……ん?、前から思っていたが何かに似ている気がする。あの遅刻した時よりももっと前に見たことがある気もする。
「レン……」
ソレラは何か用があるのか手をこまねく。あっ呼ばれたから行かないと……そう俺は立ち上がる。ドラゴンの解体もほぼ終わっているようだ。
俺は数歩進んで、立ち止まった。意識的にというよりかは無意識的に反射的に立ち止まった。
「あっ…………」
先程からの謎が解けた。謎っていうのはソレラが誰かに似てるということだ。前の時はまともに顔を見られなかったけど、少し慣れたからか今は少し見れた。気づいて良かったのか?良かったか、だって……