俺がまさかの……説
と言って、学校に到着したのはいいのだけれど……どうやって入るつもりなんだ?この学校の警備は結構厳重だから、見つかるぞ。もし見つかったら終わりだし。それに、夜の学校とかちょっと怖くないか?そう思い恐る恐るゆっくりと歩く。でも、きっとバレない秘策がソレラにはあるんだと思う。
「どっどうするつもりだ?」
も俺は声を潜めて訊く。周りは静か過ぎて僅かな物音でさえ響く。現に潜めて話した声も軽く響いている。
「堂々と」
ソレラは振り返って何の迷いもなくそう答えた。街灯に照らされて髪留めがキラリと光る。
「本気で言ってるのか?」
コクリと頷く。
「なっ何をする気だ、それだけは」
「大丈夫」
何をもって大丈夫なんだ?堂々と正門入場するのは流石に危険過ぎると服を引っ張り止めるが、ズルズルと進んでいく。力強すぎるだろ。
「ところをだな。もし分からないなら友達に聞いてみろ一瞬で答えてくれるはずだ。
ということで、俺は下を見ながら登るという難易度が追加されて、単に高さに少し怯えるだけではなかった。無事に地に足をつけて辺りを見渡すもバレている様子はなく正門突破、ファーストステージの突破に成功したようだ。割とガバガバなのか、この学校のシステム。
油断はしない俺はできる限り姿勢を低くして静かに移動してみる。ただ、対照的に目の前の人は……
「そっソレラもしっ姿勢を低く」
そう言ってみても、全く聞かずにズンズンと進んでいく。せめて俺だけでもバレないように移動する。が、これはバレるって、絶対バレるってーー!
「君達!」
あっ、ほらバレたじゃないかー。しっかりフラグ回収とかいう場合じゃないよー。どうするつもりなんだ!
怒った目でソレラを見るが、いったい何にキレているのか分かっていないようだ。ハーと深いため息を出して、説明するのも怠いのでもういいやと諦めた。その人は俺たちの元に近づいてきた。妙に聞き覚えがある。学校関係者だろうか、絶対怒られるやつだー。
「早く来てくれ」
「えっ?」
何を言ってるんだこの人は?頭がおかしいのか?
「そこは怒るとっ……て、押すなよ……」
さあさあと背中を押されて急かされる。怒られるタイミングで推奨されるのは怪しいと思いその場に踏ん張ろうとする。
「うぬぬ、俺は抵抗するぞぉ」
「いいから早く行かんか」
「そうはいっても……っと、っと……」
が、後ろからの圧に負けておっとっと、となりながら押されていく。はぁ、変な生物に襲われたと思えば学校に侵入からの謎の人物の登場、なにがなんだかよく分からない。
「そっソレラ、こっこのひとは?」
帽子を被ったこの男の人は誰なんだ?この学校の関係者なのだろうとは思うが……
「校長」
「えーー!」
俺は驚きの声をあげる。確かにプルンとしたお腹で、メガネで、ちょっとハゲてるところも似ているな。大きな声を出してしまいソレラに睨まれた。
「ごっごめん」
ソレラに注意されてしまうとは……他の人に見つからなくて良かった、迂闊だった。にしても、帽子一つで気づかないとは、自分の目は大丈夫なのか?人との関わりがないせいで観察力まで低下したのか……
「なに、ジロジロ見ている、早く歩け!」
俺が少し落ち込みつつ、校長を見ていると急かされてしまった。
いや、別に校長の顔見ても誰得なんですけどね。どうやって行くのか分からないので校長の命令通りついていく。どうするんだ?と考えていると、校長は下駄箱の前で左に曲がった。これは、朝ソレラが向かっていった方向じゃないか!何か左にあるのか?
左に曲がり進んでいくが別に変わった様子はなく、普通に学校の壁が続いているだけである。更に少し隠れた道を通っていく。俺はそんな道があるのかと驚いて立ち止まっていると早く歩けと急かされるを繰り返し進んでいった。前を進んでいた二人は立ち止まった。おっと、止まるなよいきなり……立ち止まった先を見ると、何もないただの壁がある。
「あっあのーなっ何してるんでしょうか?」
「扉ある」
「とっ扉?」
確かによく見れば同化している扉を見つけた。こんな扉があったとは……
「開けるよ」
ソレラは俺の心の準備なしにドアノブに手を掛けてゆっくりと開けた。あっ、せめて訊いてくれよ。とりあえず扉は開いたのだから中に入るか。よいしょっと靴を脱いで前を見ると、
そこは……高そうなソファーがあって壁には肖像…………って、校長室じゃないか!校長が行く場所といえばそこしかないって気づけよ、俺。ソファーにはよく見たことのある赤い髪ののレノが居た。俺ら三人はそれぞれ自由に座る。校長は自分の椅子に座って、俺はレノとソレラに対面するように座った。
小休憩といきたい所だが、訊きたいことは山ほどあるし、言いたいこともある。だけど、向き合ってみるとなかなか第一声を切り出せない。言葉に詰まっていると、気まずい雰囲気が部屋に広がってなんだか息苦しい。こんなことでは駄目だと、俺がレノにやはり謝らないといけないと悟す。決意して、俺は立ち上がろうとすると、
「ごめんね……お兄ちゃん」
レノは恥ずかしながらも謝って頭を下げる。先に言うべきはずの言葉を取られた、いや言えなかった。その瞬間俺はとてつもなく恥ずかしくなった。いったい俺は何を恥ずかっていたのだろうか?
「いや、俺こそ……ごめん。それに母さんが何かの用事で研究室に行ってないことなんて過去にあったというのに……」
俺も同じく頭を下げる。知りたいがためにこうなるって分かっててやってしまったことは悪かった。それに、浅はかで短絡的だった。
「うんうん、私が悪かったと思う……ずっと秘密にしてたら気になるよね」
「いや、でも……」
俺が否定して悪いのは俺だと言おうとすると、それをさえぎって、
「この秘密はレンに関係することだから、いずれかは知らないといけない……」
「レノ」
やっぱり俺に関係することなのか、どんな秘密なんだろうか?その秘密を聞いてしまったら、もう引き戻れない気がする。だけど、知りたい……関係するのだし、知らないといけない気もする。
「ただ今は全ては言えるか分からないけど……言うね」
「あぁ」
俺は覚悟を決めて腹をくくる。俺は身を乗り出して、ゴクリと唾を呑み次の言葉を待った。こんなに緊張するのは久しぶりだ。
「世界って一つだと思う?」
「あっ、えっ……と」
いきなりそんな質問ってどういうことだ?……全く分からない。てっきり、秘密の内容について言うのだと思っていた。よく分からんが、世界ってことは地球のことか?地球みたいな惑星が他にもあるかってことか?うーん、とりあえず答えないと、
「そりゃ、地球以外にも、生命物体はいてもおかしくないんじゃないの?」
「そういうことじゃなくて……」
「えっ?」
そういうことじゃないってどういうことだ?
「だから世界だって」
「意味が分からないのだが……」
「世界だよ〜?」
「は?」
一生懸命伝えようとしてくれているのは分かるのだが、何が言いたいのか分からない。地球以外のことなんて誰も分からないだろ?だいたい質問の意図も分からないし、
「ソレラン説明してよ〜」
さっきから黙って話を聞いていたソレラにレノは助けを求める。仕方ないとでも言いたげな顔をする。
「分かった、私たち話してるの宇宙規模ではなく世界規模の話」
「どっどういうことだ?」
「例えば火星生物いると違って、別の世界から人来る、分かりやすく言えば異世界ってこと」
「異世界……か」
なんとなく言いたいことが分かった気がする。異世界、この世界とは異なる世界ってことか。例えばこの地球を第一宇宙としたら、もう一つの世界は第二宇宙という感じかな?
「別に何も驚く必要ない」
「いっいや、しっ信じられないんだが……」
「この地球にも宇宙一つでない考える人いる」
「そっそうかもしれないけど……」
そんなこと言ったって、それはあって欲しいという願望だろうし、明確な根拠なんてないはずだと思うけどな。妖精がいるとかそういうもんだろ?
「多元宇宙論よるもので説明できる。それに私たち来ているの何よりの証拠」
「そっそうだけど…………」
俯き考え込んでいるとあることに気づいた。ん?じゃあなぜ日本語喋れるんだ?なぜ俺を知ってるんだ?そんな高等な技術というか魔法があるのか?
「なっなぜ日本語喋れるんだ?」
「それは、私達知っていたから」
「えっ? なっなんで?」
「本あった。それに、言語の習得難しいこと違う」
平然と当たり前の事を言っているかのような顔をされてもなー。本?何だそれ聞いてないぞ。それに……の後も理解できないのだが…………あー駄目だ俺の情報処理能力が追いつかない。どういうことだ?そもそも多元宇宙論というのは確かにあるし、いくつかのそれを裏付ける証拠はあるが……信じて良いか?というところから考えるべきだな。
と、少し考えてみたが俺には分かりそうにないので諦めた。
「で、そっその異世界みたいなのはなっなんて呼べばいいんだ?」
「決まってない、けどある文献には本物と書いてあった」
「本物……?」
うーん、分かった、けど……あっちの世界は本物なんだな。なるほど、しかし本物をホンモノの意味として考えていいのだろうか全く分からないし、そもそも何が本物偽物なんだ?全く違う世界でたまたま言語が同じとは、考えにくいよな。それは、後で考えるとして話を戻そう。
「だっだけど、それがどっどうかしたのか?」
「うん、これは無関係な話でないの。色々あなたたちも関係ある」
「かっ関係?」
関係って、特になんの関わりもないと思うのだけど、何かあるのか?
「その世界滅ぶとこの世界も滅ぶの」
「ほっ滅ぶ!」
俺とレノは驚き叫ぶ。滅ぶってことは死ぬんだよな。俺が死ぬだけじゃなくてレノも死ぬことになるのか……
「レノ知らなかったのか?」
「今初めて聞いたよ〜もう一つの世界があることとかソレラがそこから来たのは知ってたけど」
「それは知ってたのかよ!」
俺なんかもう一つの世界があることすら知らなかったのに……なんでレノは知ってんだ。このことを秘密にしてたのか。コホンッ、ソレラは軽く咳払いをして俺らの注目を集めさせる。俺らはソレラを見て言葉を待つ。
「あなたならそれを止められる」
「へっ?……なんで?」
どうやったら俺ならできるっていうんだ?言っとくが平凡な非力な男子中学三年生なんだぞ?まさか、俺が伝説の……とか言うんじゃないだろな?そんなわけないよな、いや、さっきみたいにフラグ回収とかいらないよ。うん。ソレラは一呼吸してこう言った。
「レンは世界で一人の調律者なのだから」
「……は?」
さっきからなんなんだ……