第三話
そして来たる、受験日。
流石にラストスパートである一月前からは受験生らしく毎日数時間みっちり勉強した。
担任からも、なんの心配もないと太鼓判を押してもらい、お母さんも、気楽にね。あんたなら大丈夫だから。と言ってくれた。
待ち合わせの五分前、駅について待っていた。
ふと周りを見渡す。
其処には、いるはずの無い人物が駅のホームに向かって歩いていた。
悠太だ。
何で?何がどうなってるの?
彼奴、地元の高校じゃ無かったの?
茜もついて、その事を話す。
「ええっ!それはびっくりだね。でも他の高校かもよ?遠くにはべつに隣町の所よりもレベル低めな学校なんていくらでもあるし。」
「あぁ!そういうことか・・。驚いて損した。」
「はは・・。」
そして駅のホームを過ぎて、電車を待つ。
悠太も同じ方面の電車の様だ。
うわ、毎日電車で顔見ることになるじゃん。
いや、遠い所であれば、少し早い時間に電車にのるか。
電車にのり三駅目、私と茜は降車する。
同時に、悠太も降車した。
「「えっ。まじ?」」
私と茜の声がハモる。
ここの駅には高校は一つしか無い。
そして公立高校の受験日は一斉であるから、もう、悠太は同じ高校を受けるという事がほぼ確定した。
なんてことだ。
唖然とする私に、茜も苦笑する。
「ま、まぁ気を取り直して、春、受験はちゃんとしなきゃね。落ちたりなんかしたら許さないから。」
「そ、そだね、はは、う、うん。」
私の気持ちは複雑だ。
悠太から離れることが出来ると思っていたのに同じ高校で、何で、と。
でも不思議と嫌な気はしなかった。
そんな事を思っていた私に、悠太が近寄ってきて、
「よ、久しぶり、頑張ろうな。」
「え、あぁ、うん。」
突然声をかけられてびっくりした。
心臓が跳ねる。
なんだって言うんだ。
高校に行ったって彼女作って私の想いなんてどうせ届かないって分かってるのに。
まだ、私の心はあいつに反応する。
受験する教室は奴とは違って、茜とは一緒だった。
心底ホッとした。
寒かったけど、茜が、
「頑張ろうね。」
と言って、ギュって手を握られて、落ち着いた。
「うん。頑張ろう。」
試験は絶好調だった。
茜も良い感じだったと言っていた。
チラッと見えた悠太は青い顔をしていて、あぁ、と悟った。
家に帰ってから自己採点をするも、間違えた所は思い当たらない。
満足しながら合格発表の日。
もう一度高校に赴き、自分の受験番号を照らし合わせながら探す。
あった!何度か交互に見て、間違いは無いか、大丈夫か、と確認する。
合格だ。
隣の茜も受かった様で、両手の平を上げてハイタッチを求めてくる。
「やったね!」
「うん!!」
喜びを踏みしめながら、上機嫌で帰路に着いた。