温泉物語
「サスケ様、それでご相談と言うのは、
どんな事なんでしょうか?」
「ああ、ピロンの街から東に2日程行った所に、
ケモイヤー村って村があるんだけど知ってるか?」
「ええ、行った事はありませんが、
サン様たちのご出身地ですよね。」
「ああ、そうだ、
それで、そのケモーイヤー村に縁あって、
訪れる事になったんだが、
そこの村長さんから、
観光客が泊まれる様な宿泊施設を作れないか相談されたんだよ。」
「え~と、私は行った事が無いので良く分からないのですが、
その村は、その様な施設を建てた場合に、
ちゃんと観光客が呼べる様な売りがあるのでしょうか?」
「モモヨさんの心配は尤もだけど、
その辺は心配いらないぜ、
温泉って言って、体に良い大きな風呂と、
名物料理も幾つかあるからな。」
「温泉と言うのは、昔、勇者イチローが作ろうとした事があると、
歴史書で呼んだ事がありますね。」
「へ~、そうだったんだ、
その温泉は、どうなったんだ?」
「はい、当時は一般的に風呂に入るという文化が無かった事と、
勇者イチローが戦闘に特化した能力ばかりだったので、
温泉の調査や、土木の造成に行き詰って、
断念したとの事でしたわ。」
「へ~、勇者イチローも挑戦していたんだ。」
「はい、でも、現在は昔ほど風呂に対する関心が、
低く無くなったとは言え、
それだけで観光客が呼べるとは思えないのですが?
料理にしても、遠くの村に行くなら、
近くの街の名物料理を食べに行くのでは、ないでしょうか?」
「ああ、その辺は大丈夫だぜ、
何たってケモイヤー村の温泉大露天岩風呂は、
勇者ライのお気に入りだからな、
勇者御用達の村って聞けば、行きたがる人は多いだろ?」
「ええ、そのお話が本当なら、
冒険者に限っても大勢が訪れると思いますわ。」
「信憑性に関しては保証するぜ、
何しろ本人に会って、
『これからも時々来る。』って聞いたんだからな。」
「まあ!?サスケ様、勇者ライにお会いしたんですか?」
「ああ、一国の王なのに気取って無くて、良い人だったぜ。」
「それなら十分に客が呼べそうですね、
宿泊施設の建設と同時に、勇者様が良く行くらしいって噂を流せば、
採算は採れる事でしょう。」
「ああ、温泉も料理も良かったから、
一度行けば、また行きたくなると思うぜ。」
「そう言う事でしたら、
冒険者ギルドと懇意にしている大工さん達を、
ご紹介しても大丈夫そうですね。」
「ああ、代金に関しては観光業が軌道に乗るまでは、
俺が立て替え払いする事になってるし、
大工さん達の、村までの送り迎えはサン達にやらせるからな。」
「それでしたら、ギルドで保障すれば、
行って頂ける大工さんが居られると思います。」
「そうか、じゃあ頼めるか?」
「ええ、ギルドとしては大丈夫です。
それで、大工さんに依頼を出すとなると、
建築材の購入費として、
通常は半金を前払いとなりますが宜しいでしょうか?」
「ああ、構わんぜ。」
「では、私の方で大工さんと連絡を取りますから、
サスケさんは、棟梁の方と施設の規模やグレードなどを、
お決めになって契約金額を話し合って頂けますか?」
「ああ、分かった。
モモヨさん、色々と面倒を掛けるけど、
お願いするぜ。」
「ええ、サスケ様が、
またアクセサリーをプレゼントして頂けるとの事ですから、
ご協力を惜しみませんわ。」
「またやるなんて一言も行ってねぇ!」




