星下(せいか)の語らい
「は~、ホントいいお湯だな。」
夕食を食べ終えて、
ミルクやリーナ、エルザたちを交えての、
楽しい歓談の一時を過ごしたサスケとライは、
寝る前に、もう一度温泉に入りに来ていた。
「ライさんは、本当に温泉が好きなんですね。」
「おう!温泉に来た時は、
着いたら一度、寝る前に一度、早起きして一度入るのが基本だからな。」
「ハハハ、温泉の方も、
それだけ楽しんで貰えたら本望だと思いますよ。」
「そうだな、それにしても夜の露天風呂も良いもんだな。」
足元だけを、申し訳程度に魔導ランプで照らしているだけなので、
立木が伐採されている、
露天風呂の上には、降って来る様な星空が覗いていた。
ライと同じ様に、湯船から星空を見上げたサスケは、
「そうですね、何か吸い込まれそうな星空ですね。」
「ああ、排気ガスで空が汚れた日本じゃ、
もう見る事が出来ない星空さ・・・
なあ、サスケ、ここの生活は楽しいか?」
「はい!すんげ~楽しいですね、
何て言うか・・・そう!生きてるって感じがします。」
「ほう、じゃあ日本でのサスケは死んでいたのか?」
「ええ、生きながら、生きて無いって言うか・・・
毎朝、同じ時間に起きて、飯食って、学校行って、
帰ったらテレビ見て、また飯食って、
パソコンいじってから寝ての繰り返しで、
社会っていう機械の、部品として存在していた様な感じですね、
でも、こっちに来てからは、
一日として同じ日が無いんですよ、
1か月前や、半年前の事でも、
『ああ、こんな事があったなぁ。』って思い出せるんです。
ハハッ、日本に居た頃は2~3日前の事も忘れてたんですけどね・・・」
「ああ、それは、俺も同じだな、
それだけ、充実した毎日を送ってるって事だろ。」
「そうですね。」
2人は星空を見上げながら遅くまで語り明かした。
「ライさんには、もっと温泉を堪能して頂きたかったんで、
これで、帰られるというのが残念です。」
翌朝、マッスル王国へと引き上げるライたちを見送りに来た、
サスケが言った。
「俺も、もっと居たかったんだが、
こう見えても国王だからな、
余り、国を空けっぱなしって訳には行かんのさ。」
ライは、本当に残念そうに言った。
「また来れば良いのよ。」
「そうさ、今度はルクアやパサラたちを連れてね。」
リーナとエルザがライに告げた。
「リーナさんもエルザさんも、お元気で、
ルクアさんに、よろしくお伝えください。」
「ああ、分かったよ、ミルクも元気でね。」
「結婚式の案内、楽しみにしてるからな。」
「はい、分かりました。」
「サスケ、この温泉は、きっと人気が出ると思うから、
観光客が宿泊出来る場所を作っといた方が良いぞ。」
昨夜は、村に宿屋が無い為、ライたちは村長の家に泊めて貰ったのだ。
「ええ、そうですね、
ピロンの街に帰ったら、大工さんを手配して建てて貰おうと思います。」
「そうか、それと、魔導通信機の充電をするから出してくれるか。」
「あっ、そうでした!
ライさんにお会いしたら、お願いしようと思っていたのに忘れてました。」
サスケは、懐から魔導通信機を取り出しながら言った。
サスケから、魔導通信機を受け取ったライは、
裏蓋を外して、中から魔石を取り出すと、
掌に乗せて魔力を込め始めた。
「へ~、そうやって充電するんですか。」
サスケが覗くと、魔石が僅かに発光しているのが見て取れた。
「ああ、今の所、俺しか充電出来ないからな、
もっと簡単に充電出来る様になれば、
この通信機を量産出来る様になるんだけどな。」
「俺が、太陽光発電みたいのを考えましょうか?」
「おお!日本から来たサスケなら造れるかもな、
もし出来上がったらアイデア料の分も色を付けて、
高値で、その技術を買うから頼めるか?」
「ええ、分かりました。
ライさんには、今後もお世話になるから、
アイデア料はサービスしておきますよ、
元々、俺が考えたもんでも、ありませんからね。」
「そうか、じゃあ魔導通信機が量産出来る様になったら、
ルクシア共和国での販売はサスケに委託する様にするぞ。」
「知り合いに道具屋を経営している人が居るので、
それは嬉しいですね。」
こうして、サスケに発電システムの開発依頼をしてから、
ライたちはマッスル王国へと帰って行った。
「さて、俺たちは、もう少し村に残って、
村の人たちに温泉の温度の調整の仕方や、
塩釜焼きの作り方、宿泊施設の建築打ち合わせなんかを、
してかなきゃならないな。」
「分かりましたサスケさん。」
「「「「分かりました。お頭。」」」」
「キキキ~。」
せっかくの石窯なので、
サスケは、村の人たちに塩釜焼きだけじゃ無く、
ピザの焼き方や、ナンの焼き方なども指導したのだが、
ジュリーのリクエストで、
ナンでカレーを食べて見たいとの事だったので、
『ケモイヤー村第1回カレー祭り』が開催されたのだが、
後から、その話を聞いたライが、
「何で、一日早く開催してくれなかったんだ!!」と嘆いたのは、
また別の話である。




