次は十条~
「サスケさん、村の方にお客さんが見得てますよ。」
ケモイヤー村の人が来客を知らせてくれた。
「えっ!?もう来たのか?
昨日、連絡したばかりなのに、
もう来るとか、どんだけ温泉好きなんだよ。」
サスケは、ミルクたちと一緒に村の方に行ってみると、
想像した通りらしき人達が見えた。
「昨日の今日で、もう、いらしたんですか、
初めまして、僕がサスケです。」
「おう、連絡ありがとうな、
見た感じ、同い年ぐらいだろ?
数少ない同郷の士なんだからタメ口で良いぜ。」
「そうですか?じゃあ、そうさせて貰いますね、
俺も、敬語とか苦手だから助かりますよ。」
「おう、それで良いぞ、
それに、実はサスケとは初めましてじゃ無いんだよ、
前にフェルナリア皇国に行った時に、
街の食堂で一度会ってるんだ。」
「へ~、そうだったんですか、
社会勉強の一環で城下の街に行ってた時かな?」
「まあ、記憶に残らないのも当たり前だがな、
その頃の俺は、只の冒険者だったからな。」
「それが、今じゃ勇者になって、一国の国王様ですもんね、
俺が、勇者候補から冒険者になったから、
まるで逆の立場になりましたね。」
そう、サスケはミルクから、
勇者ライが地球の、しかも日本から転生してきたと聞いて、
もしかすると温泉好きかもと思い、
エルザから借り受けていた魔導通信機で連絡を取ったのである。
「国王ったって、
まだまだ小さな国だから、大した事無いんだけどな。」
「いや~、それでも大したもんですよ、
それにしても、やたら到着が早かったですけど、
どうやって来たんですか?」
「サスケから魔導通信で、温泉の大露天岩風呂を造ってるって聞いたら、
居ても立っても居られなくなって、
龍籠をチャーターして、文字通り飛んで来たんだよ。」
「龍籠って、もしかして龍に乗れるんですか!?」
「いや、多分、サスケが想像してるもんとは違うと思うぞ、
俺も、昔、それでガッカリした思い出があるからな、
まあ、目的地に、とんでもなく早く着けるのは確かなんだが・・・」
「はあ、そうなんですか。」
「ライさん、その節はお世話になりました。
今日は、エルザさんと、リーナさんが一緒に来られたんですか?」
「ああ、マッスル王国にも、やっと学校が出来たから、
ルクアとフローラは暫く先生役をしなきゃならないんだ、
パサラはポラリちゃんと学校に入学したから、
暫くは学業に専念だな、
まあ、夏休みとか冬休みを作る予定だから、
その時にでも、ここに連れて来てやろうかと考えてるんだ。」
「ミルクさん、あれから少しは落ち着いたかい?」
「ミルクさん、元気だった?」
「そうなんですか、ライさん、学校の完成おめでとうございます。
エルザさん、先日はお世話になりました。
リーナさん、元気にやらせて頂いてます。」
「おう、サンキュー!
それでサスケ、さっそくなんだが、
温泉の大露天岩風呂は、もう出来上がってるのか?」
「ええ、もう8分目ぐらいまでお湯が入ってるんで、
入る事も出来ると思いますよ。」
「そうか!じゃあ、そろそろ俺も、
我慢の限界だから入らせて貰おうかな。」
サスケたちは、男女に別れて、
さっそく温泉に入ってみる事にした。
「おお~!結構でかい岩風呂だな、
源泉掛け流しなのか?」
「ええ、ここから2キロ程離れた源泉からお湯を引いているんですが、
お湯の温度も高いので加温とかもせずに済みました。」
「そうか、そんじゃ入ってみるかな。」
ライは、掛け湯をしてから岩風呂に体を沈めた。
「ちょっと熱いですかね?」
同じく、掛け湯をしてから入ったサスケが問いかけた。
「俺は、熱めの方が好きだから、
このぐらいで、ちょうど良いな。」
「そうですか、それは良かったです。
実際に営業を始める時には、
獣人の人たちは温めの方が好きらしいので、
もう少し温度を下げる予定なんですよ。」
「そうか、まあ、
こっちの世界じゃ、温泉は一般的じゃ無いから、
その方が万人受けするかもな。」
「ええ、それに泉質を弱塩泉にしましたから、
温くても、長くゆったりと浸かっていれば湯冷めしにくいんですよ。」
「弱塩泉って事は、飲泉も出来るのか。」
「ええ、ちゃんと飲めますよ、
ライさん、温泉に詳しいんですね。」
「おう、あっちの世界に居た頃は、
秘境マニアで秘湯マニアだったからな、
暇を見つけては、あちこち行ってたもんさ。」
「おお!気が合いますね、
俺も、そう言うのが好きだったんですよ。」
「日本に居た頃の俺はボッチだったから、
山奥の秘湯とかに一人で行った時は、
『俺、ここで遭難したら、誰にも気付かれないんだろうな。』とか、
考えて温泉に浸かっていたな。」
「ライさん、俺もまったく一緒ですよ。」
「サスケ、お前もか!」
2人はガッシリと握手を交わした。
「あっちでは、何やら寂しい会話を交わしてるわね。」
「何か、お互いに心が通ずるもんが、あったのよ、
きっと。」
「あんなに、楽しそうにしてる、お頭も珍しいですよね。」
「共通の話題が話せる人が、少な過ぎるんじゃないのかしら。」
「なら、ライ様との出会いは貴重ですね。」
「ええ、ライさんに、サスケさんと仲良くして頂けたらなと思います。」
「ミルクさんも、しっかり旦那さん思いの奥さんになってるね。」
「い、いえ、リーナさん、私たち結婚の約束はしましたが、
まだ、式は挙げて無いんですよ、
その時は、きっとお声掛け致しますから、
是非、皆さんでご参加下さい。」
「アイヨ!ルクアの親友なら、
アタイたちの親友も一緒だからね、みんなでお邪魔するよ。」
「その時は私たちも、
お頭と、ミルクさんの為にも、精一杯のお持て成しをさせて頂きますね。」
女湯が結婚式話で盛り上がっている頃、
男湯では、お互いの地元の話をしていた。
「そう言えば、ライさんて日本に居た頃は、
どこに住んでたんですか?」
「俺か?
俺は、東京の赤羽だよ。」
「マジですか!?
俺、埼玉の川口ですよ!」
「お~、めちゃくちゃ近いじゃん、
結構、どっかで、すれ違ったりとかしてたかもな。」
「ええ、ちょ~ありえますね。」




