ケンちゃん
「こんにちは~。」
「いらっしゃいませ!
色っぽい奥さんの味方『何でも屋ケンちゃん』へようこそ!」
「いやいやいや、いらっしゃいませの後いらないでしょ!」
「ケンさん、俺ですよ。」
「何だ、レトリバーか、
連れは誰なんだ?」
「こんにちは、
俺は、ルクシアに行って冒険者になる予定のギロッポンと言います。
実はレトリバーさんの紹介で魔獣の毛皮や肉、
それと治療薬を買い取って貰いたくて伺いました。」
「そうか、よろしくな!
じゃあ、まず毛皮と肉を見せてみな。」
「はい、これなんですけど・・・」
俺は『魔倉』から毛皮と肉を取り出した。
「何だ、まだ冒険者じゃないのにアイテムボックスが使えるのか、
見掛けは若いのに優秀なんだな。」
「ええ、良い師匠に教えを受けましたから。」
「そうか、そりゃお前はついていたな、
教えを乞うって事には当たり外れがあるから、
とんでもない師匠に教わったら一生もんの問題だぜ。」
「やっぱり、外れもあるんですか?」
「俺は、外れの方が多いんじゃないかと思うぜ、
自称先生が、この世界にはゴマンと居るからな、
ほう、ビックラビットとシモフーリボアか、
こりゃ、お前さんが解体したのか?」
「ええ、そうですけど・・・」
「お前は、本当に新人離れしているな、
解体の技術から言えばベテラン冒険者クラスだぜ。」
「ありがとうございます。」
「そうだな・・・
両方とも人気が高い素材だから60万ギルでどうだ?」
「ええ、相場とか知らないので、
それでお願いします。」
「ギロッポン、ケンさんの提示した金額は、
中々の良い値段だから大丈夫だぜ、
俺が保証してやるよ。」
「ありがとうございます。
レトリバーさん。」
「じゃあ、治療薬を見せてくれや。」
「はい、こちらです。」
俺は、同じく『魔倉』から取り出して、
カウンターの上に置いた。
「お前、こりゃ・・・
この治療薬は、どこで手に入れたんだ?」
「俺が作ったんですけど。」
「お前が作った!?」
「ええ、そうです。」
「ちょっと、鑑定してみても良いか?」
「ええ、どうぞ。」
ケンさんは、金庫みたいな箱の中から、
メガネっぽい物を取り出して、目に付けた。
「それは、魔導具ですか?」
「ああ、そうだ、
上級鑑定魔導具『スケスケに見えてるよサオリちゃん』だ。」
「そのネーミングは誰が・・・」
「俺の師匠だが。」
「成る程、師匠には色んなタイプの人が居るんですね・・・」
「お前、この治療薬は本当に自家製なのか?
鑑定によると上級治療薬って結果が表示されてるぞ。」
「ケンさん、上級治療薬って凄いんですか?」
「ああ、レトリバーは余り扱う機会が無いから知らないかも知れんが、
上級ともなると一流冒険者が、もしもの時の為に一つ携帯するもんで、
心臓さえ止まってなければ、一命を取り留めるってクラスだぜ。」
「へ~っ、ギロッポンて凄いんだな。」
「凄いなんてもんじゃねえぞ、
ここ最近、フェルナリア皇国の錬金術ギルドで、
上級治療薬が作れたなんて話を聞いた事ないからな、
ギロッポンとやら、お前の師匠って人は何て人なんだ?」
「はい、ヴィンセント・オナルダスって名前ですが、
ご存じでしょうか?」
「何か、大賢者様の名前に似てるな・・・」
「ああ、昔、大賢者って呼ばれていたって言ってました。」
「マジでか!?」
「マジです。」
「成る程な、大賢者の弟子って言うのなら、
この規格外の才能にも納得できるぜ、
レトリバー、お前には感謝してもしきれない出会いを貰っちまったな。」
「いえ、ケンさんにも、ギロッポンにも得になるなら良かったですよ。」
「そう言ってくれると嬉しいぜ、
ギロッポン、それで大賢者様は今どうしてるんだ?」
「師匠は、先日亡くなりました。
もう、かなりの高齢だったので、寿命と言ってました。」
「そうか、そりゃ惜しい事をしたな。」
「ええ、もっと、色々教わりたかったです。」
「そうだな・・・
ギロッポン、この治療薬は1本50万ギルで、
5本あるから250万ギルで引き取らせて貰うぜ、
どうだ?」
「はい、ケンさんを信用していますから、
その金額でお願いします。」
「それにしても、ルクシアに行くって言ってたが、
フェルナリアで冒険者になる訳にはいかないのか?」
「ええ、師匠がフェルナリアを余り好きでは無い様でしたので、
他の国に行って修行を積もうかと思います。」
「そうか、もっと品物を売って欲しかったから残念だぜ。」
「それなら、ルクシアでレトリバーさんの店に売りに行くので、
ケンさんの店まで運んで貰えば良いんじゃないですか?」
「おう、そうして貰えると俺も助かるが、
レトリバーも、それで良いか?」
「ええ、商売になるなら俺も大歓迎ですよ。」
「なら、商談成立ですね。」
「おう!これからも良い付き合いで行きたいもんだな。」
「はい、こちらこそ、宜しくお願いします。」