秘湯にGO!
「おんせんて何ですか?お頭。」
「温かい泉と書いて、温泉って言うんだが、
読んで字の如く、
泉の様に大きな浴槽にお湯を溜めて、
大勢で風呂に入るんだよ。」
「そんな物で人が集まるんですか?」
「まあ、風呂に入る習慣が無かったジュリーたち獣人には、
ピンと来ないかも知れないけど、
温泉には、ヤミツキになる魅力がタップリと詰まってるんだ、
特に、ケモイヤー村は人里離れているから、
地蒸し料理が食べられる、秘湯として売り出せば観光客を呼べるぜ、
実際、ジュリーだって、
俺の屋敷に来てから風呂に入る様になったけど、
それ程、嫌いじゃないだろ?」
「ええ、獣人は基本、水浴びしかしないので、
最初はお湯に入るなんて抵抗がありましたが、
慣れて来たら、入らないと何かスッキリしなく感じる様になりました。」
「だろ?体を清潔にしておくのは良い事だし、
お湯に適度に入ると、血液の流れが良くなるから、
体の調子を整えてくれる作用があるんだよ。」
「確かに、風呂に入ってから眠った方が、
疲れが良く取れる様な気がしますよね。」
「ああ、そんな風に、
実際に風呂に入って経験して貰うのが一番なんだよ、
言葉で、いくら良いと聞いてもピンと来ないだろうしな。」
「ああ、ロン毛の焼香ってヤツですね。」
「いや、それを言うなら、論より証拠だ。」
サスケは魔石を使ったダウジングで、
温泉を探しながら森の中を歩いて行く、
その後ろから、ミルクたちもゾロゾロと着いて行っていた。
「おっ!さっそく見つけたぞ、どれどれ『分析』っと、
あ~残念、単純泉だった・・・」
「サスケさん、温泉に種類があるんですか?」
「ああ、お湯に含まれている成分の種類によって、
中に入った時の効果が変わるんだよ、
今回、ケモイヤー村に作る温泉は、
熱いお湯が嫌いな、村の人達にも入って貰う為に、
温めのお湯にしようかと思うんだ、
そうすると、温めのお湯でも体温が冷めにくい塩泉が良いんだ。」
「確かに、温いお湯なら、みんなも入り易いと思います。」
「それで、今回、俺が探し出したいのは、
塩泉の中でも塩分が弱い、弱塩泉を探したいんだ。」
「弱塩泉だと何が良いんですか?」
「飲むことが出来るんだよ、効果としては胃腸の調子を整えてくれるんだ。
ケモイヤー村の人達は肉を良く食べるから、
胃の消化を促進する為にも、胃腸は健康にしておいた方が良いからな。」
「温泉に入るだけじゃなくて、飲んで体内からも健康にするんですね。」
「そう言う事さ。」
その後、いくつかの単純泉を見つけた後に、
ついにサスケが探し求めた弱塩泉を探し出す事が出来た。
「やっと見つけたけど、
ちょっと、お湯の温度が高すぎるな、
村までパイプで引いて行けば、いくらか温度が下がるだろうけど、
もう、少し下げた方が良さそうだな。」
「お頭、どうやって下げるんですか?」
「ここに、小さめの湯溜りを作って、
自然に下げれば良いだろう。
じゃあ、これから村までパイプを引っ張るから、
ジュリーは村に戻ってサンたちを呼んで来てくれるか。」
「分かりました。お頭。
みんなを呼んで来ます。」
ジュリーは村に戻って行った。
「よし、先に湯溜りを造っておくかな、
『掘削』×20してから、
『硬化』×20っと、こんなもんかな。」
「サスケさん、パイプは、ここで造るんですか?」
「いや、ピロンの街で、
ジュリーに地蒸し料理の話しを聞いた時から、
温泉を造る計画を立てていたんで、
パイプは造って『魔倉』に入れてあるんだ。」
「村で、温泉をいらないと言われたら、
どうするつもりだったんですか?」
「その時は、内緒で隠れ湯を造って、
偶に入りに来ればいいかと思ってたよ。」
「それ程、温泉がお好きなんですね。」
「ああ、俺が居た国では、あちこちの山奥に秘湯があって、
それに入る為に、沢山の人達が何時間も掛けて訪れていたんだ。」
「ずいぶん温泉好きの国民性なんですね。」
「ああ、最早、遺伝子に組み込まれているとしか考えられん程の、
温泉好きだな。」
しばらくして、サンたちを連れたジュリーが戻って来た。
「お頭、手伝いって何ですか?」
「おお、俺が村まで魔法で溝を掘って行くから、
サンたちは鍛冶スキルを使って、
パイプを繋ぎながら埋めてってくれるか。」
「分かりました。」
それからサスケは、湯溜りから村へ向かって魔法で溝を掘っては、
『魔倉』からパイプを取り出して置いて行き、
サンたちはパイプを繋ぎながら、溝の中へ埋めて行った。
「お頭、このパイプは鋼みたいですけど錆びないんですか?」
「ああ、外側は魔法でシールドしてあるし、内側は温度や塩害も考えて、
アダマンタイトでメッキしてあるから大丈夫だ。」
「アダマンタイトって、どんだけお金を掛けてるんですか。」
「俺は、温泉の為には、金と労力を惜しまない男なんだ。」
「お頭は、変な所に拘りがありますよね。」
「そうそう、私たちが初めて、お頭のお屋敷に行った時も、
お風呂の入り方が決まっているからって言って、
私たちを丹念に洗っていたものね。」
「ば、馬鹿!ロリー、
それを言うな「サスケさん、後で詳しく聞かせて下さいね。」はい・・・」




